まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第6回中国四十九薬師めぐり~第8番「恩徳寺」(宇野バスで行く神仏習合のスポット)

2022年01月19日 | 中国四十九薬師

まずは中国四十九薬師めぐり。岡山からまずは第8番・恩徳寺を目指す。岡山駅前から路線バスで行くのだが、地図で調べたところ、駅から東方向に行った原尾島住宅前が最寄りのようだ。岡山駅前は多くのバス会社が乗り入れており、どの会社、どの路線に乗ればよいか迷う。結局スマホで始発と目的地を入れて検索すると、宇野バスの国道250号線・2号線系統の瀬戸駅行きというのが出てきた。

宇野バスは岡山駅から東側ということで、岡山市東区や赤磐市、備前市、瀬戸内市、美作市などに路線が出ている。宇野バスといいながら、宇野線の終点である宇野方面に行かないのも不思議だなと思う。何かわけがあるのかなと検索すると、そもそも宇野バスの社名(宇野自動車)は、創業者である宇野家から取られたもので、玉野市の宇野とは無関係とある。思わず「へぇ~」となる。「宇野バスは宇野に行かない」というのは岡山ではよく知られたトリビアなのかな。

岡山・倉敷近郊の路線バスは中鉄、両備、岡電、下電、井笠などあるが、いずれも鉄道をルーツとした会社である(それぞれ中国鉄道、西大寺鉄道、岡山電気軌道、下津井電鉄、井笠鉄道・・・岡電を除くといずれも鉄道は廃止されたが)。それぞれ地域をイメージした名前がある中、個人名がつけられた路線、全国見渡しても他に事例があるのかな。

その宇野バスだが、他社とは何かと一線を引きたがるようだ。ICカードも他社がICOCA、Pitapa対応のところ、同社専用のものしか使えない。また市内中心部のターミナルも他社が天満屋に乗り入れるのに対して、宇野バスは自社の営業所・車庫がある表町に設けている。一方、ある程度長距離運転があるためか、座席はすべて2人掛けで前方を向いている。さらには一部の座席横にはコンセントが設けられ、Wi-Fiもつながる。他とのしがらみがない一族経営のなせる技かな。

岡山県庁や、現在大改修中の岡山城の南などを通り、20分ほどで原尾島住宅前に到着。同じバス停には両備バス、岡電バスも乗り入れており、途中の経由地はそれぞれ異なるものの利便性はよさそうだ。

バス停の横には百間川が流れる。旭川のバイパスとして江戸時代に築造された人工河川で、途中の幅が堤防を含めて百間(180メートル)あったことからその名がつけられた。岡山出身で「阿房列車」で知られる内田百閒の号も、この百間川から取られた。

河川敷にはジョギングコースやサッカーグラウンドなどが整備されていて、体を動かす人の姿も見える。恩徳寺へはしばらくこの河川敷を歩く。ちょうど天候も穏やかで気持ち良い。

その河川敷の南側、里山センターに続く道には住宅地も広がるが、田畑や昔造りの家屋も並ぶ。なかなかのどかなところである。

バス停から歩いて15分くらいで鳥居に出る。その脇の看板には中国四十九薬師霊場のほかに備前八薬師霊場、さらには備前最上稲荷霊場という文字が見える。鳥居が残されていて、そのまま進むと山門に出るあたり、かつての神仏習合の名残を感じさせる。

恩徳寺が開かれたのは奈良時代、行基が薬師如来を祀ったのが始めとされる。後に報恩大師により最盛期にはさまざまな支院も開かれていたが、岡山藩による寺院淘汰や明治の神仏分離などの影響で多くが廃され、現在残るのは当時の西方院のみだという。

本堂に上がる。上り口にあるのは鰐口ではなく鈴である。そのためか、たまたま居合わせた散歩の地元の人らしいのも鈴を鳴らした後で柏手を打つ。それでも違和感ない。

本堂は幕末に焼失したのを受けて明治初めに再建されたもので、家紋や切り抜きなどの彩色が施されている。

境内にはさまざまなお堂がある。本堂の隣にあるのは大師堂だが、さらに周りを見渡すと本堂を囲むように様々な祠が並ぶ。それぞれどの神が祀られているかはよくわからなったが、なかなかのものだ。祠と宝篋印塔が自然に並んでいるところも。

本堂の後ろにも立派な祠がある。竪巌(たていし)稲荷大明神を祀る。何だかこの稲荷が恩徳寺の奥の院というか、一帯の守護神のように見える。この竪巌宮は明治の神仏分離の際に恩徳寺の中に移されたそうで、別名が最上稲荷。最上稲荷といえば備中高松にある神社で、「日本三大稲荷」の一つと言われているところ。ただ、先ほど「神社」と書いたが、最上稲荷の正式名称は「最上稲荷山妙教寺」という日蓮宗の寺院である。

ここまで来て思い出すのが、「日本三大稲荷」の一つである愛知の豊川稲荷。あちらも鳥居を構えていてどう見ても神社だと思うが、正しくは妙巌寺という曹洞宗の寺院である。では稲荷というのは寺なのかと思いきや、「日本三大稲荷」で全国の稲荷の総元締めである伏見稲荷は神社だし、「日本三大」を最上と争っている佐賀の祐徳稲荷も神社である。稲荷神が神仏習合の中では十一面観音や荼枳尼天などと同一視されていたことから、神社にも仏教寺院にも祀られるようになり、明治の神仏分離後もその名残があるということだ。

そうした歴史が共存するなかなか面白い寺院であった。

本堂と渡り廊下でつながる本坊に納経所があるが、あいにく扉と鍵がかかっている。庭を通って本坊の玄関まで行ってインターフォンを鳴らすと、納経所を開けるので回るように言われる。「住職がいないので・・」と恐縮されるが、もとよりバインダー式の書置きでいただいているので構わない(今や、「ローカル札所」はそういうシステムがほとんどで、私もそういうものだと思っている)。「お接待です」と、しょうが湯のパックもいただいた。

ここで引き返し、百間川沿いに歩いて原尾島住宅のバス停に着く。ちょうどやって来たのは岡電バス。そのまま岡山駅に到着する。

ここからは第9番の久昌寺に向かう。最寄り駅は宇野みなと線の常山。まずは乗り換えとなる茶屋町まで行くことにする。乗ったのは12時16分発の快速茶屋町行き。すぐ前に快速マリンライナーの高松行きが出ており、立て続けに快速を走らせるのはどういうことかなと思うが、この時間は普通列車が走らない代わりに、この快速が大元、備前西市に停まるから、この両駅の本数を確保するためかと思う。

茶屋町に到着。そこでホームの向かいで遭遇したのが、同じ213系をベースとした観光列車「ラ・マル・ド・ボァ」である。正月明けのこの時季、定期運行はお休みのはずだが、何かの団体貸切列車として運転されたのかな。宇野に行ったか、四国に渡っていたか。

茶屋町でいったん改札を出て、駅併設のコンビニで昼食を買い求めて、列車待ちの間にホームで済ませる。ここからは折り返しとなる宇野行きに乗り換え・・・。

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