まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第7回九州西国霊場めぐり~「某鉄道」経由で久留米入り

2022年01月04日 | 九州西国霊場

九州西国霊場めぐりの前泊のために、さらにその前夜(12月29日)から出発するという何とも暇人な行程を続ける中、福岡県内の乗り鉄シリーズとなった。前の記事で小倉から日田彦山線~後藤寺線~福北ゆたか線~原田線とたどって原田まで来た。

原田から14時02分発の荒木行き区間快速に乗る。そのまま乗れば15分で宿泊地の久留米に着くのだが、快速の次の停車駅である基山で下車する。福岡県からいったん佐賀県に入った基山町にある駅であるが、私は下車して改めて基山が佐賀県だということに気づいた。

駅の通路には漫画「キングダム」を記念した顔抜きパネルが置かれている。作者の原泰久さんが基山町の出身だという。漫画は読んだことがないのでそうなんや・・というくらいの感想だったが、時間待ちの間に基山町出身の有名人を検索すると、カープの長野、ベイスターズの濵口両選手や、お笑いコンビのどぶろっくといったところが出てくる。うーん、この中で町のPRに誰を起用するかとなると・・・下ネタのどぶろっくは論外として(お笑い番組で彼らが出たら私はチャンネルを変える)、「キングダム」が妥当なところだろうな。

基山で下車したのは、ここから分岐する甘木鉄道に乗るためである。かつての国鉄甘木線を引き継いだ第三セクター線だが、そういえばこの線に乗ったことがなかったなと、今回組み入れることにした。次の発車は14時18分の甘木行き。ホームは国鉄時代から引き続き鹿児島線と隣接しているが、そこは別会社である。なお甘木鉄道の乗車券はJRの自動券売機では発売しておらず、車内で精算する仕組みである。

1両の気動車は中央部にクロスシートを備える。第三セクターにありがちな車体の気動車に見えるが、同社では開業当時からの名残か、車内案内では「この『レールバス』は・・」との言い回しがあった。

甘木鉄道の前身である国鉄甘木線は、終点の甘木を含む現在の朝倉市で鉄道開通の機運が高まったこともあるが、途中の太刀洗に開設された陸軍の飛行場への物資輸送を目的として建設された路線である。戦後、飛行場の跡地にキリンビールの工場が建ち、その輸送の一端も担ったがトラック輸送への転換により経営は厳しくなった。近くに西鉄甘木線があり、また並行するバス路線もあったことから廃止の方向だったが、沿線自治体の尽力により第三セクターとして存続した。ちなみに主要株主にはキリンビールも名を連ねているそうだ。

なぜかこれまで甘木鉄道には乗ったことがなかったが、ともかく乗ってみよう。

まずは大手メーカーの工場や物流センターが並ぶ中を走る。甘木鉄道になってから新たに信号場を設けたこともあり、現在は朝夕に15~20分おきの運転も可能になったそうだ。また、国鉄甘木線にあった筑後小郡を西鉄との交差地点に移設して、西鉄との連絡を改善した。元々沿線人口もそれなりにあった中でそうした取り組みもプラスとなり、全国の第三セクター路線の中では比較的安定した成績を残しているそうだ。

その小郡で乗客の乗降があり、淡々と走る。基山駅のホームにも広告看板があったキリンビール福岡工場最寄りの太刀洗も過ぎる。そのキリンビール工場はコロナ禍の影響で見学は中止とのこと。また機会があればと思う。

14時44分、終点の甘木に到着。駅としては終着駅なのだろうが、鉄道としてはここが本拠地である。車庫も設けられていて、さまざまな塗装のバリエーションを持つ車両が並ぶ。かつての国鉄型気動車をイメージしたデザインの車両もある。こういうのも鉄道のPRになりそうだ。

駅舎も戦前の建物だという。かつては町の玄関口として大きな役割を担っていたことがうかがえる。

その前に建つのが「日本発祥之地 卑弥呼の里 あまぎ」の石碑。前回の九州西国霊場めぐりで訪ねたみやま市(山門郡)も邪馬台国があったとされる地の一つだったが、こちら朝倉市、甘木もその候補の一つだという。次回に向かう予定の佐賀には吉野ヶ里遺跡もあり、こちらも邪馬台国の地として有力である。

なお、どうでもいいことだが、「甘木」という文字を見ると、かつての内田百閒「阿房列車」を思い出す。別に百閒が甘木に来たわけではないのだが、作品の中に「甘木君」というのがちょいちょい登場する。別にこれはアマギ隊員(ウルトラ警備隊)・・・もといアマギさんという人がいたわけでなく、仮名である。「甘」と「木」をくっつけると「某」という文字になる。これは旅先で会った人たちの実名を伏せるための言い回しで、他に「何樫君」をはじめとしたいくつもの仮名が登場する。そういうイメージがあるから、甘木鉄道という文字を見て「某鉄道」と脳内変換してしまう。

さて某、じゃなくて甘木からどうするか。甘木鉄道で折り返してもいいが、同じ乗るならこちらも初めての西鉄甘木線だろう。久留米でも西鉄の久留米に到着する。

甘木鉄道の甘木から少し歩いて西鉄の甘木に到着。交通量の多い道端に小ぶりな駅舎が建つ。何だか周囲に申し訳ないと言うかのような小ぢんまりとした造りだ。一応、両社の甘木駅の乗降人員数を見ると西鉄のほうが若干上回るものの、いずれも厳しい状況である。

西鉄甘木線は単線で、2両編成のワンマン運転である。三井電気軌道というのが前身だそうで、三井(財閥)はこういうところの鉄道運営にも関係していたのか・・と思ったが、後で見ると三井(みつい)は関係なく、三井郡(みいぐん)に敷かれたからそういう名前になったのだとか。

駅間も短く、ワンマン運転のためか、各車両の中央の扉は開かない。そのまま天神大牟田線と合流する宮の陣に到着。本線の普通列車が先に発車するということでそちらに乗り換える。ホームには太宰府天満宮向けの大晦日の終夜運転の時刻表も出ている。西鉄久留米に到着。

福岡県南部の主要な町である久留米。こうやって駅前に降り立つのは初めてである。時刻は16時を回ったところで、本日の移動はここで終了。今夜は西鉄久留米駅前で宿泊、一献・・・。

コメント