さて、42年前の宮脇俊三の『最長片道切符の旅』のルートを机上旅行で2020年にたどってみるとどのようなものか。実は2018年に北海道を出発して福島の郡山まで来ていたが、ここで自然中断の状況になっていた。改めての仕切り直しである。これからぼちぼち始めていく。
まあ、机上旅行は「通し打ち」とは書いたものの、前回中断から2年を経て大阪から郡山まで来たということにしてもよい。新幹線を乗り継いで郡山に前泊でもよいし、大阪から高速バスで朝到着というのもあり。ということで、郡山からまずは磐越東線でいわき(当時の駅名は平)に向かうのだが、始発の5時30分発でなく、8時ちょうどの列車で出発とする。
磐越東線、磐越西線と、太平洋側のいわきから日本海側の新津、新潟までを結ぶ路線である。その2つの路線は郡山で分けられるのだが、会津若松や喜多方といった観光地への需要もあり、電化、さらには快速列車も走る磐越西線に比べると、こちら磐越東線は地味な存在のようである。私も乗りつぶしで一度乗っただけである。本数も、途中乗り継ぎを含めて郡山~いわきに抜けることができるのは1日わずか6本である。そんな路線なので始発の5時30分に乗った方が後の行程が楽になりそうだが、机上旅行とはいえそこは現実的に。ただし、8時ちょうど発を逃すと、次にいわきまで行けるのは13時17分発までない。
沿線には、春には梅、桃、桜が同時に咲くことから名がついた三春という町があるのだが、宮脇氏が訪ねたのは秋の時季。ちょうど沿線の神社で秋祭りをやっていて、幟の白と柿の実の対照を楽しんでいる。宮脇氏はどこかで「日本の『国果』は柿ではないか」と書いていたように思うが、この時の印象もあったのかな。
「取材ノート」では沿線の景色についていろいろメモしていたようだが『最長片道』本文ではあっさりと通りすぎ、平に到着。ここから下校の高校生で満員の中、水戸に南下する。
常磐線といえば2020年3月に全線の運転が再開された。『最長片道』およびこの机上旅行ではいわき~岩沼の区間は通らないが、東日本大震災からの復興の一つの歩みである。また、東京(品川)から常磐線経由で仙台まで直通する特急が復活したのも明るい話題で、これまで被災地めぐりは仙台以北ばかり訪ねていたが、福島県の浜通りというところも机上ではなく実際に訪ねてみたいものだと思う。
さて、『最長片道』では水戸でちょうど夕方を迎える。宮脇氏もこのまま帰宅しようと思えばできるところだが、翌朝水郡線の6時30分発に乗るために水戸で1泊した。「取材ノート」には「(水郡線)満員だが、乗りたくなる。業(ごう)か」「どこまでの乗りたい」という記載があるそうだ。「業(ごう)」という言葉まで出されると・・・。
そして机上旅行では水郡線のダイヤが空くので水戸で小休止。偕楽園に行くには少し時間が足りないので、ここは納豆やらアンコウで昼食としよう。駅前には手軽に昼飲みと郷土料理を楽しめる店もある。
さて『最長片道』では水戸で第11日目を迎える。当時は上野に向かう寝台列車が何本も走っていたようで、機関車の警笛や発車合図のブザーが朝早くから鳴り、宮脇氏も4時には起床したとある。「水戸駅は、上野までの所要時間分だけ早起き」としている。現在は寝台列車が走ることはないが、上野、東京、品川方面に向かう列車は4時台から運行されている。
『最長片道』では朝の6時半、そして2020年版は昼過ぎに水郡線に乗車する。今では「奥久慈清流ライン」という愛称もあり、ハイブリッド気動車も走る路線である。春の行楽シーズン、秋の紅葉シーズンにはリゾート列車やトロッコ列車も運転される。私も東京在住時代に、ローカル線の風情を求めて出かけたこともある。
その水郡線だが、2019年10月の台風19号により鉄橋が流される等の大きな被害を受けた。2020年3月ダイヤ時点では西金~常陸大子間は代行バス輸送が実施されている。全線の運転再開は2021年夏頃の予定。この区間には名所袋田の滝の最寄である袋田も含まれる。
常陸大子からは八溝山地、阿武隈山地という山がちな区間となり、運転本数も少なくなる。再び福島県に入り、郡山の1駅南の安積永盛に到着。列車は郡山行きだがここで下車となる。2020年版では郡山を朝に出発して一回りして夕方に戻ってきた形であり、日帰り乗り鉄を楽しんだようなルートである。
ここから東北本線を南下。『最長片道』では白河まで鈍行で移動して、急行「まつしま4号」に乗り換えて一気に小山まで進んでいる。東北新幹線の開通前なので特急、急行が数多く走っていて、「まつしま4号」も途中の小駅で「運転停車」をして特急2本に抜かれる、そして別の駅では先ほどまで乗っていた鈍行を追い抜くというものだった。現在は鈍行のみの運転で、しかも新白河で完全に系統が切られている。私も先般この区間に乗った時、新白河駅で同じホームの中でお互いに車止めを設けて仕切っていたのに驚いたことがある(貨物列車等も通るので、別線ではちゃんとつながっているのだが)。
2020年版だが、安積永盛で夕方を迎えるが『最長片道』のペースに少しでも追いつくために、そのまま鈍行乗り継ぎで南下する。新白河、黒磯と乗り換えだが、宿泊するところもあまりなさそうなので一気に宇都宮まで行ってしまう。到着は20時前だが、名物の餃子店はまだ開いているはずで、当然この夜は餃子でビールとなる。
『最長片道切符の旅』を追いかける机上旅行もこれから関東編である・・・。
※『最長片道』のルート(第10日続き、第11日)
(第10日続き)郡山14:17-(磐越東線)-16:24平16:27-(常磐線)-18:14水戸
(第11日)水戸6:30-(水郡線)-10:46安積永盛10:58-(東北本線)-白河12:17-(急行「まつしま4号」)-14:02(定刻14:00)小山
※もし行くならのルート(第11日)
郡山8:00-(磐越東線)-9:38いわき10:17-(特急「ひたち10号」)-11:26水戸13:15-(水郡線)-14:15西金14:20-(水郡線代行バス)-14:49常陸大子15:37-(水郡線)-17:19安積永盛17:35-(東北本線)-18:09新白河18:14-(東北本線)-18:38黒磯18:57-(宇都宮線)-19:50宇都宮