まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

『最長片道切符の旅』をめぐる机上旅行~第15日(静岡~上諏訪)

2020年05月15日 | 机上旅行

時刻表をめくりながらの机上旅行で行く『最長片道切符の旅』。舞台は首都圏から東海地方に移る。もっともこの後、豊橋から会津若松まで、宮脇俊三自身も「襟を正す」と振り返る逆向きルートに入ることになるのだが・・・。

前日は静岡で海の幸やらおでんやら「しぞーか割り」などを楽しんで酔いが残っているかもしれないが、また早朝からの出発である。

まずは掛川に出る。『最長片道』の当時は、在来線ホームの真横を新幹線の線路が通るのに駅がなかった。新幹線駅が改行したのは1988年の3月。ちょうど青函トンネル開業と同じ日である。少し離れて「新掛川」とならずに元の掛川駅と線路が隣接していたのは、開業当時から新駅建設も見込んでのことだったのかな。

掛川からは慌ただしいが天竜浜名湖鉄道、通称天浜線に乗る。『最長片道』当時は国鉄二俣線だった。二俣線、元々は掛川から遠州二俣を経由して岐阜県の恵那を結ぶ路線として計画されたが、後に、東海道本線のバイパス線に変更され、浜名湖の北を通って新所原に向かうこととなった。戦後はご多分に漏れず赤字ローカル線で、民営化直前の1987年に第三セクター化された。

天浜線としては新たな駅も次々設けられ、地域密着の運営に取り組んでいる印象がある。また駅舎を利用した蕎麦屋やピザ店などの「駅グルメ」を楽しめるし、天竜二俣では鉄道遺産の転車台の見学もできる。この机上旅行では一気に乗り通すが、実際には日中の時間に途中下車しながら行きたいところだ。

新所原から豊橋に出る。1時間近い待ち時間だが、豊橋から乗るのはあの飯田線である。『最長片道』では夕方から乗車して飯田まで行ったところで1泊だが、机上旅行でこれから乗るのは豊橋から辰野を経て、中央本線の岡谷まで行く鈍行列車。豊川までのいくつかの駅は通過するが、90あまりの駅に停まりながら7時間近くをかけて走る。この日の机上旅行のメインイベントと言っていい。

飯田線は逆方向だがこうした通しの鈍行に乗ったことがあり、またクルマを持っていた当時に、飯田線の鈍行と、並走する国道を行くマイカーのどちらが早く豊橋に着くか競争したこともある。

宮脇氏は後にクルマ派の雑誌編集者を連れて飯田線を乗り通す旅をしていて、飯田線は「たくさんの駅にちょこちょこ停まりながら長時間かけて乗り通す」面白さの印象が強かった。しかし、この10数年で、飯田線の一番のアピールポイントは「秘境駅」となった。「秘境駅」の定義はともかくとして、飯田線には愛知、静岡、長野の県境が交じりあう小和田をはじめとして、田本、金野、中井侍、為栗(順不同)といった「秘境駅」が並ぶ。そうした「秘境駅」をめぐる臨時急行が行楽シーズンを中心に運転され、それに乗車するツアーも人気だ(私も旅仲間たちと参加したことがある)。「秘境駅」に人がごった返すという逆転現象も起きている。

豊橋から岡谷まで直通するこの列車、特に青春18きっぷの時季は混雑するのだろうな。最悪、7時間立ちっぱなしかもしれない(笑)。

・・そんな飯田線、『最長片道』でも宮脇氏は豊橋に泊まり、翌日鈍行で全線を乗り通そうと考えていたが、後の日程にしわ寄せが行くとして急行で飯田まで進んでいる。しかも途中で日が暮れるとあって残念そうだった。そして翌朝5時台の急行で続くことになる。

その飯田で下車の際、宮脇氏は改札の係員に呼び止められて駅長室に連れていかれる。周りの客が「不正乗車」の疑いの目を向けたが、実際は途中下車印の押印のためだった。また、ここまで多くの途中下車印を押されて券面記載事項が見えなくなっているので、再発行しなければならないとも言われている。宮脇氏は「ここは長野県、教育県の代表のように言われる」と感想を持つも、「まあいいから」と切符を取り返す。

机上旅行に話を戻すと、「秘境駅」区間は路線の中盤あたりで、天竜峡から飯田を過ぎると、盆地の中を淡々と進む。南アルプスに近いところを行くので、「秘境駅」区間の渓谷モードとはまた違った楽しみがある。

日中の多くの時間を鈍行列車の中で過ごすのも貴重な経験。実際乗ると、案外短くあっという間に着く感じがするかもしれない(注:個人の感想です)。飯田線乗り通しをこの机上旅行で組み込むことができてよかった。

さて岡谷に着いてからの宿泊。翌日は小淵沢から小海線に乗るのだが、乗り継ぎを考えれば必ずしも小淵沢にこだわる必要もなさそうだ。ならばということで上諏訪を選択。温泉地だし、諏訪湖にも近い。時季によっては諏訪湖畔で花火を見ることもできる。過去にも泊まったことがあるがなかなかよいところ。ここに泊まるのも一興である・・・。

 

※『最長片道』のルート(第16日続き、第17日)

(第16日続き)静岡11:25-(東海道本線)-12:10掛川12:20-(二俣線~東海道本線)-14:45豊橋15:09-(「伊那5号」)-18:50(30分遅れ)飯田

(第17日)飯田5:48-(「こまがね2号」)-8:46小淵沢・・・(以下続き)

 

※もし行くならのルート(第15日)

静岡6:22-(東海道本線)-7:09掛川7:14-(天竜浜名湖鉄道)-9:18新所原9:34-(東海道本線)-9:45豊橋10:42-(飯田線~中央本線)-17:33岡谷17:56-(中央本線)-18:08上諏訪

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