まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第33番「瑠璃寺」~新西国三十三所めぐり・39(無事に満願達成)

2017年08月02日 | 新西国三十三所
山崎から船越のバス停に降り立つ。ここが瑠璃寺への入口で、看板には「西の高野山」の文字も見える。

また県道を行くクルマにもよく見えるようにと巨大な絵馬が掲げられている。今年の干支の酉であるが結構かわいらしい。地元の小学生がデザインして、作用高校の美術部が絵馬に描いたという。

仁王門に出る。昔はこれをくぐったのだろうが、今は寺の前までクルマで行けるとあり、そのために門を迂回する形で道路が取り付けられている。それをくぐると昆虫館に出る。夏休みとあって子ども連れが多く、昆虫採集の催しも催しも行われていた。この辺りはそうした自然が売りなのだろう。先ほど、同じバスを降りた母娘づれがリュックに入れていた棒のようなものは組立式の虫取網で、この後も参道の周辺や、時には瑠璃寺の境内でも虫を追い求めていた。

森と寺谷川の緩やかな上り坂、木陰だと涼しく感じられるところもある。石灯籠にも苔が生えている。

ただ一方で、森をよく見ると倒木の跡がすさまじかったり、沿道に掲げられているかつての絵馬も朽ちているものがあったり、台そのものがなくなっていたりする。今から8年前の2009年、台風9号のため作用町一帯は大きな被害を受けた。先ほど通った昆虫館や、これから訪ねる瑠璃寺も土砂災害に遭ったとのことだ。今でも山にはその痕跡が残るとは痛々しい。道端に山の木々を慰霊する(まだ新しい)石碑もあった。

バス停から15分ほどで瑠璃寺の長屋門に着いた。こちらにはまだ新しい石柱や、新西国の満願御礼で寄進したらしい石灯籠がある。石段を上って門に着くと小僧さんの人形が出迎える。その横には台風被害からの復旧を願う志納金を呼び掛ける手書きの張り紙がある。寺として拝観料、入山料を取るわけではないので、せめてもと少しばかり箱に納める。

正面には立派な木造の建物があるが、これは大師堂と本坊。本堂はこの先にあるが、脇の黒板には「ここでお参りしてもかまいません」とある。まあそれでも、新西国ということなら本堂に行かなければ。

そう思って本坊の脇を通って奥の建物に着いたが、ここは不動明王を祀る。ここはここで真言を唱えた後で、再び本坊から外に出る。こちらの門側は石段に生える苔と、目の上の青もみじがいい感じである。兵庫の山の中だからゆっくり眺めるが、京都市内にこの景色があればたちまち人であふれ返ることだろう。

瑠璃寺は奈良時代、聖武天皇の勅願で行基の手で開かれたとの言い伝えがあり、南北朝時代に赤松則祐により再興した。かつては塔頭寺院も多く抱え、それこそ「西の高野山」と称しても違和感がなかったとか。ただ、時代の流れである。またこういう地形だから、水害で壊れた建物もあったことだろう。今は小ぢんまりとした感じの山あいの寺院である。

本堂を目指すべく、苔むした石段を上がる。そしてやって来た境内。室町時代からの灯篭や鐘もあり、緑に囲まれるように本堂が建つ。他に人の姿はなく、ここで汗をぬぐって、新西国としては区切りのお勤めである。

そしてこの後、しばらく本堂の階段に腰かけてボーッとしていた。新西国を回り終えたという安堵の気持ちがあった。ただこの場ではそれ以上に、境内を抜ける風が涼しかった。この日も関西の平野部では34~35℃はあったと思う。それが本堂の周りだけは30℃を下回るのでは?と思わせた。

この瑠璃寺の上には、船越山のモンキーパークというのがある。野生の猿を観察できるという知る人ぞ知るスポットなのだが、そこに向かう坂の途中は暑く、またお金を払って猿を見るのもな・・・ということで引き返した。またその途中には瑠璃寺の奥の院に向かう細道もあるが、なぜかこれもパスした。また本堂に引き返し、なぜこの一角だけ涼しいのか思いながら、普段の生活ではなかなか感じられない静けさと涼しさを味わう。これは新西国の他の札所では感じなかったことだし、いつもなら慌ただしく次の目的地に向かうところ、折り返しのバスまでの時間が結構あったことからである。こうした札所めぐりの終わりもなかなかよかった。

さて、札所めぐりの朱印である。先ほどの本坊に戻り、インターフォンを鳴らす。しばらくして寺の方が出て来て、「千手観音」と優しい文字を書いていただく。

また、新西国の満願ということで、「満願之証」を申し出た。寺の方は「名前は入れず、日にちだけ書きますがそれでいい?」と訊く。確かに、過去に満願となった方のブログやネット記事を見ると、表彰状のように名前が書かれていたが、そこは仕組みが変わったのだろうと思い、そのまま書いていただく。こちらは無料だった。A4より少し大きなサイズである。

さてこれで瑠璃寺を終えて、新西国めぐりは満願となった。何か急に良いことに出合うわけではないが、一つの区切りである。そろそろバスの時間が近づき、バス停まで戻る・・・。
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