まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

えちぜん鉄道~東尋坊 雨のち晴れ

2016年01月04日 | 旅行記D・東海北陸
福井駅に到着して、えちぜん鉄道に乗り換えるべく隣の建物に向かう。隣の高架は北陸新幹線の建設予定地であるが、「えちぜん鉄道福井駅」の看板がある。何でも昨年9月のダイヤ改正で、福井市街中心部の立体工事に入るため、新幹線の建設中の高架を一時「間借り」することになったのだとか。そのため高架下に窓口や待合室が移ったのだが、仮設のような感じである。新幹線の線路の間借りと聞いて思い出したのが阪急京都線であるが、こうして駅そのものを間借りするというのは聞いたことがない。

一日フリーきっぷ1000円を購入する。えちぜん鉄道で福井から三国港まで往復するだけでも元が取れる値打ちもの。この後で高架ホームに上がる。JRのホームを壁越しに見下ろす高さにあり、線路も途中で途切れているのがわかる。今はこのような形だが、完成時にはどのような形になるだろうか。

その高架をとことこやってきたのが三国港行。隣の新福井駅は高架ホームから見えるくらいの距離である。

さて出発だが、先ほどまで薄く雲が広がっていたところに、パラパラと雨が降ってきた。そして車内から見ても強くたたきつけるように降り始める。やはり冬の日本海側である。雪でないからそれだけ暖かいということだが、この後東尋坊に向かうのに雨はちょっと残念。雨足は強くなる一方だ。

福井口で高架から地平に下り(ちなみにここも高架化される予定)、新駅のまつもと町屋、福井鉄道との接続駅である田原町を過ぎる。田原町は駅の改装工事中で、完成後はえちぜん鉄道との乗り入れも行われるそうだ。今も両線共通の一日フリーきっぷを発売するなど提携を意識している両線だが、乗り入れでより利便性を図るようだ。ただ個人的には、それならいっそのこと統合したほうがいいのではないかと思うが・・・。

雨の中、昼間のこととて乗客の入れ替えがほとんどないまま走る。ラグビーの五郎丸選手をイメージさせる太郎丸という駅や、周辺の見どころとともに「春江の一番星」として紹介されていた越ノ龍という力士の写真パネルを見る。どこかで聞いたなあと検索してみると、現在三段目で関取経験もない力士であるが、36歳の今でも現役。武蔵川部屋から藤島部屋の独立に伴い移籍したが、ベテランとして若い力士の兄貴的存在として部屋でも頼りにされているのだとか。

あわら湯のまちに到着。東尋坊には終点の三国港からでも行けるのだが、いったんここで下車してバスに乗り換える。雨はまだ傘がいるくらいに降っている。

ただバスに乗って芦原の温泉街を抜ける頃に、空が晴れてきた。しばらく「天気雨」の状態だったが虹も出て来て、20分ほど走って海に出ると先ほどの雨が嘘のように晴れ渡った。結構変わりやすい天気だ。

そして東尋坊のバス停に着き、土産物屋や食堂の並ぶ通りを抜けると、とても冬の日本海とは思えない穏やかな光景が広がった。雨は先ほどまで降っていたようで岩場は濡れていたが、傘を差さずに岩場を歩けるのはうれしい。怖い怖いと言いながら写真を撮る人があちこちにいる。自撮り棒でスマホを崖の先に伸ばして撮影する人も。これは結構スリルありそうだ。

この時間は雨上がりの晴天の光景だったが、果たして当初の予定通りに昼前後に着いていたら、どのような天候だっただろうか。ひょっとしたら強烈な雨に見舞われていたかもしれない。そう思うと、今朝「やってもうた・・・」と寝坊したのも、逆によかったということになるのかもしれない。一年を締めくくる最後の景色ということで心に留める。

このように観光客で年中賑わっているし、手前ではイカやホタテを焼いたり、この時季ならではのカニ料理などでいい香りがする東尋坊。旅の前日のアルバイト仲間の忘年会で「東尋坊に行く」と話したら「思い詰めて飛び込まんといてくださいよ」とからかわれたが、観光客の賑わいだけを見れば自殺の名所とは思えない。ただこれはあくまで昼間、ましてや年末年始で観光客もいる時の景色だろう。店も閉まった夜、あるいは冬の大荒れの季節の東尋坊を見たことがないので何とも言えない。

今でもここで自殺を考える人がいるのだろう。公衆電話には警察の連絡先や、「あなたは一人じゃない」と励ますメッセージが貼られている。いのちの電話というが、そこまで思い詰めて、最後の最後に公衆電話の受話器を手にする人というのはどのくらいいるだろうか。受話器を手にする人はまだ「生きたい」という気持ちがほんのわずかでもあったわけで、これはこれで救ったことになる。ただ本当に死のうと思う人、あるいは本当に死んでしまった人は、こういうのも目に入らないのではないか。

帰りは荒磯の遊歩道を右手に海を見ながら歩く。三国港までは2キロくらいの距離で十分歩ける距離。東尋坊からだらだらと高度を下げ、九頭竜川の河口のある三国港に着く。先ほど東尋坊では快晴だったが、ここまで歩くうちに次の雲が海の方から広がってきて、太陽はそこに包まれる形になった。時刻はまだ16時前だが、もう今年最後の日暮れを迎えるようになった。

ここから福井行の電車に乗り、再びあわら湯のまちで下車する。今夜の宿泊は福井駅前であるが、いったん下車して温泉に入ることに・・・・。
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