まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

「ガチャコン」で日野商人

2008年12月10日 | 旅行記E・関西

多賀大社参拝後、列車で高宮まで出る。ただこの後、八日市方面に向かう列車の接続が悪く、それならばと「SSフリーきっぷ」のメリットを生かして、一旦彦根まで戻る。

Pc064513今回は「日のあるうちに」近江鉄道を乗ろうということで、途中下車ポイントもいろいろと考えたのだが、「世界遺産候補」にも挙がった彦根城については、残念ながら駅の跨線橋に設けられている展望ポイントからの遠景にとどめる。彦根城が嫌というわけではなく、逆に一度そちらに足を踏み入れてしまうとさまざまな観光ポイントや復元された町並みの見物に時間を費やすことになり(ゆるキャラの元祖である「ひこにゃん」も見ないといけないし)、そのために他のところに寄れなくなるというのがあって・・・・。今回は長浜、彦根、安土、近江八幡など、琵琶湖の沿岸に並ぶ町を無視することにする。

Pc064512その代わりというわけではないが、次の八日市行きの列車が来るまで、駅横の車庫に眠る車両群を撮影。かつては貨物の営業もやっていたとのことで、「いかにも私鉄風やな」という小ぶりな機関車も多く並ぶ。11月までなら「近江鉄道ミュージアム」として開放しており、もっと間近で見られたというが、今の距離でも十分にうならせるくらいの魅力はある。

やってきた列車に乗り込み、刈り入れも終わりそろそろ冬の風情をみせる田園風景に、すぐ間近の新幹線の高架を見ながら南下する。こちらはガタゴトと(列車が走る音というのが「ガチャコン」の由来とか)走るのに対し、新幹線はこれでもかというくらいにぶっ飛ばす。その対比を感じるのもこの路線の面白さ。冬の日差しが近江盆地に温かく降り注ぐ。

Pc064519八日市着。ここからバスに乗り継いで、近江商人の屋敷も残る五箇荘を見物するか、八日市線に乗り換えて近江八幡に出るか、いずれにしても「近江商人」に関するところに行こうかと思ったのだが、ちょうど貴生川方面からやってきた車両をみて心変わり、そちらに乗って貴生川方面に向かうこととした。700系という、これまで見てきた旧西武鉄道の車両に比べても斬新なデザインで、車内も転換クロスシート。これを見た瞬間に近江商人はぶっ飛んでしまい、またも田園風景の車窓が広がることになった。この系統の車両は1編成しかなく、トラベルライターも旅行記の中で「この車両に出会うチャンスがなかったのが残念」と記していたくらいだから。

さすがにこのまま貴生川に行くのも芸がないので、どこかで途中下車ということで、日野に降り立つ。ここも近江商人発祥の地ということで知る人ぞ知るスポットなのだが、知らない人は全く知らないというスポット。近江八幡、五箇荘に比べてもマイナーなイメージかな。

Pc064521日野の中心部は駅から少し離れており、西武ライオンズカラーのバスで10分ほど揺られる。大窪という停留所で降りて少し歩くと「日野商人屋敷」というのがある。かつて財をなした日野商人の本宅だったという建物である。

Pc064522ちょうど見学客が私だけだったこともあり、係の人に展示物の解説をしてもらいながら見物する。日野は製薬が盛んだったところで「万病感応丸」という、もともとは心臓の薬だったのがそれが万病に効くとされて大いにはやったとか、日野商人というのは日野で商家を構えるというよりは、出先に店を構えて日野商人のネットワークを構築したとか、そういう話を聞く。

Pc064528同じ近江商人でもいろいろと特徴があるようで、近江八幡は大都市中心にネットワークを広げ、全国各地や海外を相手とした商売を手広く行い、五箇荘は繊維産業から始めて近代産業にも手がけるようになったのに対し、日野は売薬を中心に江戸幕府の保護を受けつつも、展開したのは中山道のその先、今の群馬県や埼玉県を中心としたエリアで、酒や味噌などの醸造業を手堅く行ったという対比があるようだ(係の人は、近江八幡や五箇荘の間を縫ったところに目をつけることが生き残りの術と心得ていたのではないかという分析をしていた)。北関東にも日本酒の蔵元がいろいろとあるが、その多くが日野商人が手がけたというらしい。まあ、地味といえば地味なのかな。

そんな日野商人の家訓というか、経営理念が残されており、見学後にはコピーをいただいた。それによれば、「謙虚な人間となれ」「不正・粗末な商品を売るな」「貪欲に儲けることを慎め」「投機的な相場で一攫千金を狙うな」「見栄を張るような派手な商いをするな」・・・など、心にグサっとくるような言葉が並んでいる。近江商人は堅実というイメージがあるが、その中でも特に「慎み深く」というのが日野商人のモットーだったようだ。現在もやれ食品偽装だの何だのという問題が世間を賑わせる中、含蓄のあるものである。

Pc064534展示にうなった商人館を後にする。元々城下町だった日野の街並みはそれなりに風情があるが、日野商人そのものは特に日野で大規模な店舗を構えていたというわけではなく(本宅は日野だが出先に単身赴任していたとか)、そのために昔ながらの建物がゴロゴロ並ぶ・・・というほどではない。そのあたりが、他の2ヶ所と比べて観光客的にマイナーな印象があるのかもしれない。

Pc064538バスの時間が合わないので、結局3キロほどの道のりを歩いて日野駅まで戻る。この駅も昔ながらの風情を残しており、年配の駅員が昔ながらの出札口で硬券を売る光景も今では滅多に見られないものだ。

冬の日差しは短いもので、近江盆地も日が暮れようとしていた。西日が田園風景の中を走る車両を鮮やかに照らし出してくれる。水口経由で貴生川まで出て、この日はJR草津線で大津まで向かった。

Pc064547大津では友人と合流し、とりあえず大津といえば琵琶湖ということで、湖岸まで行ってみる。ちょうど噴水のショーが行われており、なかなか鮮やかなものであった。また遊覧船「ミシガン」の到着を見ることができ、「何でコイツと一緒に見物しなければならないのか」という思いはさておき、冬の琵琶湖の湖上もなかなかいいムードだったなと感じたものだった・・・。

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