先の記事に「全国の一の宮を訪ねる旅というのも面白そうだ」という内容のことを書いたが、こういう本があったんですな。
『全国「一の宮」徹底ガイド』(恵美嘉樹著 PHP文庫)。現在の都道府県制が敷かれる前の旧分国というのが68あり(この中には、現在の北海道、沖縄といった、当時「日本」に含まれていなかった地域はカウントされていない)、それぞれの国の「一の宮」(中には、複数の神社が「我こそが一の宮」という主張をしている国もあるようだが)について、その祭神や由来を紹介するというものである。
紹介されている個々の神社を見ると、現在でも観光名所で、私自身も訪れたことがある神社や、この本で初めてその存在を知った神社もある。誰もが知っている神社が必ずしも「一の宮」というわけではなく、「一の宮」が定められた奈良時代~平安時代の頃と現在の規模の大きさがそっくり対応しているというものでもないようだ。
日本は昔から「八百万の神」がいるという伝説がある。かつて森元首相が「日本は神の国です」と発言したことが大きな批判を招いたが、多くの神社があっていろいろな神様が祭られており、初詣を初めとしていろいろな節目で神社に参拝するのは日本の文化であるということは、否定できないのではないだろうか。まあそれはさておき、この一冊は「なぜこの国、この地でこの神様が祭られているのか」ということと、その土地の歴史、文化、風土が結びついていることを的確に解説してくれている。
これをガイドとして、これまで訪れたことがある神社も含めて、改めてその土地を味わう旅に出るのも面白いだろう。この68ヶ国の中には「隠岐」「壱岐」「対馬」という国が含まれていたり、奥社は重装備をして登らなければならない山の上にあるという国もある。改めて思い立って回るにはかなりの労力を必要とするが、こういう切り口で各地を見て回る、そしてこの国の多様性に触れるというのも、なかなか面白いのではないだろうか。
それにしても、著者の肩書きというのが「作家・歴史旅コンサルタント」。いろんな商売があるもんですな。