新年度になると、新入生とか新社会人などに読むべき本、というような特集が目に付くようになる。こういう機会に読んでもらいたい本を紹介したい人が多くなるのである。また、そういう質問を投げかける企画を考える編集者が増えるのだろう。気持ちは分からないでは無いが、そういうのをやはり新人関連の人が読んでいるのか、というのはちょっと疑問がある。何故なら僕は、そういう時期にはそういうものにまったく興味が無かったし、自分の好きなものをぐんぐん読んでいたからだ。紹介している人たちももちろん読書家が多く、おそらくその時期に読んで役立ったとかとか後にもっと早くに読んでおけば良かったな、というような本を選ぶ傾向にあって、別段自分が新人の時に紹介されて読んだのでは無いのではないか。なかには自著を推薦するような肝の太い先生もいるが、そういう機会が無いと売れないのかもしれない(宣伝のみかもしれないが)。
そういう疑問はあるものの、どういう訳か新人の時代を過ぎて、大人になった今になってみると、このような紹介された書籍がなんだか気になるような感じなのだ。それでこの時期になると紹介された本を大量に買うことになってしまう。学者の先生の紹介するものの中には、やたらに衒学主義的に小難しいものや(要するに読んだことある自慢)、絶版になっていたり、そもそも図書館でも探すのが難しいだろうというのがあったり、ものすごく大部のものであったり、稀覯本であったりすることがある。お金の無い学生に勧めるものであったり、新人の若者に勧めるにしては、どうかしているとしか言いようが無い。しかしながらそういうものの中には、やはりそうであるからこそ、手に取ってみたいものが無いではないのが苦しいところなのである。
結局散財してしまうことの愚痴ではあるのだが、こういうことが無い限り出会えない本があることも確かで、だから結局は新人ではない人間のためにはなっている、ということなのだろうか。