ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

日本の心17~米と森と命~天皇と日本のエコロジー

2021-10-16 09:31:55 | 日本精神
 今日、日本は国際社会で、地球環境問題への積極的な取り組みを求められています。我が国は自国の伝統・文化に基づき、わが国のできる貢献を行うべきと思います。
 このように考えるとき、人間と自然を結ぶ、天皇の象徴としての存在と役割には、新たな意義が浮かび上がってきます。
 天皇は現行憲法において、「日本国の象徴」にして「日本国民統合の象徴」と、規定されています。天皇は、その規定に従って、象徴としての役割を果たすため、様々なご公務や祭儀をされています。
 そのお仕事の中には、人間と自然を結ぶ象徴的な行為が含まれています。例えば、人々の食生活や地球の環境保全に関することがあります。天皇は、神事を司って五穀豊穣を祈り、米作りをされています。また、森林を守るために、植樹をされています。これらの行為において、天皇は、人間と自然との調和を実現し保守するために、象徴的な役割を担っておられるのです。
 天皇は、皇居で自ら田植えや稲刈りをされています。これは昭和天皇が始め、平成の時代には現上皇陛下が引き継がれ、令和の時代には今上陛下が引き継がれているものです。毎年天皇陛下は、5月下旬頃に皇居内の水田で、五穀豊穣を祈る「お手植え」を行い、苗を植えられます。苗は陛下ご自身が4月下旬頃、種もみをまかれたウルチ米とモチ米の2種類です。品種は、毎年、選ばれます。この米は、10月頃に収穫され、皇居で行われる新嘗祭(にいなめさい)に使われます。
 また、天皇・皇后両陛下は、毎年5月に行われる「全国植樹祭」に出席されます。「全国植樹祭」は、戦後の乱伐による国土の荒廃から緑豊かな国土を取り戻すため、昭和25年に始められました。
 一国の象徴あるいは元首が、自ら稲作や植樹をするということは、世界的にも珍しいことです。そこには、我が国独自の文化が見られます。
 日本の祭りの多くは、稲作と関連しており、稲を媒介とした祭りには、人間と自然の調和を求めるエコロジカルな意味が読み取れます。その祭りは、神道に基づいて行われる祭儀です。
 また、全国各地の神社の多くは、鎮守の森を保っています。それは、自然を畏敬し、森を大切にする神道の伝統です。わが国が、近代化・産業化をなしとげてなお国土の7割近くを占める森林を保全してきた背景には、こうした伝統があるのです。
 天皇は、こうした神道における最高位の祭司としての地位にあります。そして日本国の象徴であり、日本文化を体現する天皇は、稲作や植林の儀式を行うことを通じて、人と自然の調和を象徴的に実現します。この行為は、天皇が、天地大自然(=大親)への孝を実践することと理解することが出来ます。同時に、万物一体の仁を体得・徳化することとも、理解されます。
 環境保全運動の一部には、左翼的な思想の影響が見られます。しかし、日本の伝統・文化を踏まえるならば、天皇を中心とした稲作や植林の伝統を否定する思想は、真の環境保全運動ではないことは、明らかです。反対に、天皇の存在と役割は、地球環境の保全というきわめて現代的なテーマに直結しているのです。
 私たち日本国民は、天皇に象徴される日本の伝統・文化に基づいて、国際社会における責任を、積極的に担っていくべきだと思います。

参考資料
・上之郷利昭著『コメと日本人と伊勢神宮』(PHP)

 次回に続く。

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