ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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安定的な皇位継承のための方策を急げ1

2021-10-08 10:04:35 | 皇室
はじめに

 本年(令和3年、2021年)3月に、「安定的な皇位継承策を議論する有識者会議」が設置された。有識者会議は、専門家ら21人からヒアリングを行った。21人のうち半数以上が男系男子を堅持するための旧宮家の皇籍復帰に賛成する一方、女系への資格拡大を積極的に支持したのは5人にとどまったと伝えられる。今後、近いうちに有識者会議は検討結果を政府に提出し、政府はその報告を受けて方針案を策定し、国会へ報告する見通しと伝えられる。
 皇位を継承し得る次世代の男子は、悠仁親王殿下お一人しかいない。また、皇族女子はご結婚すると皇籍を離れるから、今後、急速に皇族の人数が少なくなる。今こそ早急に皇位を安定的に継承するための方策を立てて実行しなければならない。
 本稿は、その方策の実行を急ぐべきことを述べるものである。20回ほどを予定している。

1.早急に皇位の安定的継承の方策を

 神武天皇以降、天皇は第126代の今上天皇まで、すべて父方で歴代の天皇につながる男系の天皇である。父方だけをたどると歴代の天皇と血縁でつながる系統を男系という。また、男系で皇位を継承することを男系継承という。
 明治時代に皇室典範が作られ、皇室に関する制度が西欧近代法の影響のもとに成文化された。旧皇室典範は第1条に「祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス」と定めた。戦後、改正された現行の皇室典範も、第1条に「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と記している。このように明治以降、天皇は男系の男子が継承すると定められている。男系と定め、女系の継承を認めていない。また、天皇は男性に限り、女性の天皇を認めていない。
 今日、天皇皇后両陛下の子孫は、愛子内親王殿下のみである。国民の一部は、愛子様への敬慕、及び戦後の男女平等の観念から愛子様が女性の天皇になることを願っている。また、そのために女性の天皇を可能にする案が出ている。歴史的には女性天皇が8方10代いた。だが、注意しなければならないのは、それらの女帝は、いずれも男性天皇の子孫すなわち男系の天皇だったことである。男系男子による皇位継承が原則であり、男系女子による皇位の継承は、男系男子による継承を維持するための一時的な方法だった。中継ぎという性格が強い。明治時代以降は、この慣習を止め、一時的な方法であっても、女性天皇を認めていない。必要に応じて女性天皇を擁立するには、皇室典範の改正が必要である。
 伝統的な慣習によれば、女性天皇は全員独身(寡婦か未婚)で即位し、在位中は結婚することなく、譲位後も独身を通した。仮に愛子様が天皇となった場合、その伝統に従うならば、ずっと独身でいていただいて即位し、譲位後も生涯独身でいていただかねばならない。現代において、若い皇族女子にこの慣習を守って皇位に就いていただくことは、社会通念との乖離が大きい。また、ご公務に関しては、天皇と皇后が担う役割を一人で、担わねばならない。女性の生理的な特徴を考えると、この負担は非常に大きいことが懸念される。
 仮に独身を強いることはあまりにしのびないということで、仮に伝統的な慣習を止めて、女性天皇もご結婚ができるようにすると、大きな問題を生じる。相手が民間人即ち旧皇族の男系男子孫以外の者であれば、そこに生れたお子様は、母方でしか天皇につながらない。その方が次の天皇となれば、歴史上かつてない女系の天皇となる。
 女系天皇は、女性天皇とは全く違う概念である。女系天皇とは、母方でしか歴代の天皇につながらない天皇をいう。女系天皇には、男性と女性、即ち男性の女系天皇、女性の女系天皇があり得る。
 今後もし女系天皇が誕生すれば、皇統はこれまでの男系継承から女系継承に転じることになる。皇室が続くならば女系継承でもよいという考え方があるが、これは安易な考え方である。女系継承とは、母方でしか歴代の天皇につながらない家系が皇位を継承することを意味する。女系天皇の誕生は、神武天皇以来の家系から別の家系に皇統が移ることになる。父方(民間人)の家系に皇統が移ってしまうのである。これは、諸外国の基準で見れば、王朝の交代を意味する。父方が佐藤家であれば佐藤王朝に移ることになる。英国王室におけるチューダー、スチュアート、ハノーバー(改名して現ウィンザー)の王朝の交代と同様、王家が交代したと見られる。形は皇室が続いているようでも、神武天皇以来の無姓の皇室から、別の有姓の王朝に代わることになる。王朝の交代は、皇統の断絶である。それゆえ、女系継承は、皇室の伝統を断ちきり、わが国の国柄を改変するものとなる。
 皇室の存続のためには、女系天皇と女系継承はやむなしという議論に、まどわされてはならない。女系天皇・女系継承という考え方は、男系継承を貫くことを皇室の絶対的な課題と考えない論者たちが考え出したものである。仮に父方が佐藤家である女系天皇に娘があり、その娘が鈴木という姓の男性と結婚して皇位を継げば、今度は佐藤王朝から鈴木王朝に交代する。いったん男系継承を止め、女系継承に転ずれば、次々に王朝が交代することになる。国民は、そうした女系継承の王朝を民族の中心として尊く感じなくなるのは必定である。
 現在、皇位を継承する次世代の男子は、悠仁親王殿下お一人しかいない。将来悠仁様がご結婚され、必ず男子が誕生するとは限らない。悠仁様以降、皇位を継ぐことのできる世代を確保できるような方策を立てなければならない。
 また、皇族女子はご結婚すると皇籍を離れるから、今後、急速に皇族(註1)の人数が少なくなる。悠仁様が皇位を継がれる頃には、他に皇族がほとんどいない状態になっているだろう。この間、皇族が減るとともに、皇族方の公務の分担がますます難しくなり、皇族個々の負担が大きくなる。
 早急に皇位を安定的に継承するための方策を立てて実行しなければならない。


(1)皇族について、現行の皇室典範は、第5条に「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする」と定めている。天皇は皇族ではなく、天皇と皇族に分ける。

 次回に続く。

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