●皇位の安定的な継承の課題
平成18年(2006年)9月6日、悠仁親王殿下が誕生された。皇室に男子が生まれたのは、41年ぶりのことだった。悠仁様のお誕生により、今上天皇陛下・秋篠宮皇嗣殿下に続く世代の男系男子がお一人いらっしゃることになった。だが、その後は、男系男子は誕生されていない。
天皇や皇室に関することは、皇室典範に定めている。明治時代に皇室典範に天皇は皇統に属する男系の男子が継承すると決め、現在の皇室典範もそのように定めている。
皇統とは、単に天皇の血統をいうものではなく、初代の神武天皇の男系子孫のことをいう。女系子孫は含まれない。皇学館大学の新田均教授が次のようにその根拠を明らかにしている。
枢密院議事録(明治21年5月28日)によると、皇室典範審議の過程において、皇統と男系は同義反復になるので、「男系の」の文言を削除すべきだとの修正案が出された。しかし、議長の伊藤博文は「自分たちの時代はともかく、将来に女系も含むというような意見が出て、祖先の常道が否定されるようなことがないようにしておかなければならない」と述べ、あえて同義反復の表現を残すことになった。修正案の提案者も伊藤議長も皇統は男系に限るという認識で一致していた。審議の過程では、女系も皇統に含むという意見を主張した者はない。旧皇室典範第1条の「祖宗ノ皇統」に女系が含まれないことは、立法者の意思であることは明らかである。現行の皇室典範第1条の「皇統」も旧皇室典範と同義である。
皇統に属する者は、皇統譜に記載される。皇室典範は、第26条に「天皇及び皇族の身分に関する事項は、これを皇統譜に登録する」と定めている。皇統譜は皇族の戸籍である。結婚などによって皇籍離脱したら、その旨が記載される。天皇は皇統譜ではなく大統譜に記載がある。
現在、皇位継承者の順位は、第1位秋篠宮文仁皇嗣殿下、第2位秋篠宮悠仁親王殿下、第3位常陸宮正仁親王殿下である。悠仁様の世代は、他に男子がなく、また今後、皇族の人数が減少することを踏まえて、皇位を安定的に継承できるような措置を早急に講じる必要がある。
これについて、次のような意見がある。
A 明治時代以降の皇室典範の規定に基づき男系男子による継承を堅持すべき。
B 明治時代以前の例を踏まえ、男系継承を維持する方策として、男系女子による継承も可能にすべき。
C 男女平等の理念に基づき、女性天皇を可能にすべき。(男子がいても長子優先)
D 男女平等の理念に基づき、女系天皇を認めるべき。(積極的に女系継承を可能にするか、女系継承もやむを得ないと考えるか)
これらのうち、B・C・Dは、皇室典範の改正が必要である。
憲法に男女平等が定められているから女性も天皇になれるようにすべきだという主張があり、学校でもそのように教えているところがある。皇室の伝統を知る保守的・良識的な学者・有識者の一部にまで、女系継承も可としたり、女系継承でもやむをえないという主張がある。しかし、これは安易な考えである。現代人の浅薄な人知を持って、日本民族が堅持してきた伝統を変更すると、取り返しの付かない結果となる。(註2)
註
(2) 歴史的には、庶系による継承が少なくなかった。庶系とは、庶子すなわち嫡子以外の実子の系統をいう。神武天皇以降、125回の継承がされてきたうち、直系かつ嫡系の継承は約3分の1の42回しか例がない。おおよそ半数の約60回は、庶子による継承だった。わが国は、庶系継承も否定したため、皇統の安定的な継承は極めて困難になっている。西洋文明の浸透によって一夫一妻制が確立している現在においては、庶系継承は考慮の対象たり得ない。
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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平成18年(2006年)9月6日、悠仁親王殿下が誕生された。皇室に男子が生まれたのは、41年ぶりのことだった。悠仁様のお誕生により、今上天皇陛下・秋篠宮皇嗣殿下に続く世代の男系男子がお一人いらっしゃることになった。だが、その後は、男系男子は誕生されていない。
天皇や皇室に関することは、皇室典範に定めている。明治時代に皇室典範に天皇は皇統に属する男系の男子が継承すると決め、現在の皇室典範もそのように定めている。
皇統とは、単に天皇の血統をいうものではなく、初代の神武天皇の男系子孫のことをいう。女系子孫は含まれない。皇学館大学の新田均教授が次のようにその根拠を明らかにしている。
枢密院議事録(明治21年5月28日)によると、皇室典範審議の過程において、皇統と男系は同義反復になるので、「男系の」の文言を削除すべきだとの修正案が出された。しかし、議長の伊藤博文は「自分たちの時代はともかく、将来に女系も含むというような意見が出て、祖先の常道が否定されるようなことがないようにしておかなければならない」と述べ、あえて同義反復の表現を残すことになった。修正案の提案者も伊藤議長も皇統は男系に限るという認識で一致していた。審議の過程では、女系も皇統に含むという意見を主張した者はない。旧皇室典範第1条の「祖宗ノ皇統」に女系が含まれないことは、立法者の意思であることは明らかである。現行の皇室典範第1条の「皇統」も旧皇室典範と同義である。
皇統に属する者は、皇統譜に記載される。皇室典範は、第26条に「天皇及び皇族の身分に関する事項は、これを皇統譜に登録する」と定めている。皇統譜は皇族の戸籍である。結婚などによって皇籍離脱したら、その旨が記載される。天皇は皇統譜ではなく大統譜に記載がある。
現在、皇位継承者の順位は、第1位秋篠宮文仁皇嗣殿下、第2位秋篠宮悠仁親王殿下、第3位常陸宮正仁親王殿下である。悠仁様の世代は、他に男子がなく、また今後、皇族の人数が減少することを踏まえて、皇位を安定的に継承できるような措置を早急に講じる必要がある。
これについて、次のような意見がある。
A 明治時代以降の皇室典範の規定に基づき男系男子による継承を堅持すべき。
B 明治時代以前の例を踏まえ、男系継承を維持する方策として、男系女子による継承も可能にすべき。
C 男女平等の理念に基づき、女性天皇を可能にすべき。(男子がいても長子優先)
D 男女平等の理念に基づき、女系天皇を認めるべき。(積極的に女系継承を可能にするか、女系継承もやむを得ないと考えるか)
これらのうち、B・C・Dは、皇室典範の改正が必要である。
憲法に男女平等が定められているから女性も天皇になれるようにすべきだという主張があり、学校でもそのように教えているところがある。皇室の伝統を知る保守的・良識的な学者・有識者の一部にまで、女系継承も可としたり、女系継承でもやむをえないという主張がある。しかし、これは安易な考えである。現代人の浅薄な人知を持って、日本民族が堅持してきた伝統を変更すると、取り返しの付かない結果となる。(註2)
註
(2) 歴史的には、庶系による継承が少なくなかった。庶系とは、庶子すなわち嫡子以外の実子の系統をいう。神武天皇以降、125回の継承がされてきたうち、直系かつ嫡系の継承は約3分の1の42回しか例がない。おおよそ半数の約60回は、庶子による継承だった。わが国は、庶系継承も否定したため、皇統の安定的な継承は極めて困難になっている。西洋文明の浸透によって一夫一妻制が確立している現在においては、庶系継承は考慮の対象たり得ない。
次回に続く。
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『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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