ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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皇位継承5~女系継承は皇統の断絶になる

2021-10-17 08:28:51 | 皇室
●女系継承は皇統の断絶になる
 
 女性天皇と女系天皇は違う。一般に女系とは、女子を通じて血統がつらなる親族をいう。母から母へと辿る。皇位継承の場合にいう女系とは、これとは違って、母方を通じて歴代天皇につながり、また母方を通じてしかつながっていない系統をいう。
 男系女子が一般の民間人と結婚して生まれた子供は、男女に関わらず、皇室から見れば、女系になる。皇室では、女系によって皇位を継承した事例はない。女系天皇は、皇室の歴史に一度も例がない。過去の女性天皇は、みな男系の女子だったからである。また、女系の子が男女に関わらず、皇族になった例もない。
 女性天皇の子である女系天皇が即位すると、わが国の2千年以上に及ぶ伝統は、そこで断ち切れる。女系継承は、皇統が神武天皇以来の歴代天皇とは違う血統の家系に移ることである。つまり女性天皇の夫君である配偶者(皇配)の家の系統に移行することになる。配偶者(皇配)が佐藤氏なら佐藤王朝に替わる。女系天皇の父親(民間人)の家系、佐藤家の王朝に替わる。神武天皇以来の皇室がそこで断絶し、万世一系の皇室とは違う王朝に変わってしまう。これが女系継承である。
 いったん女系に継承されると、その後はその家系の中で代々男系で継承されても、元の皇室に対しては女系の一族における継承になる。
 もし女系天皇が成立した場合、国民の中にその天皇を天皇と認めないという人たちが相当数出てくるだろう。女系天皇の正統性を認めず、他に神武天皇の男系男子の子孫として正統性の考えられる人を天皇に擁立する動きが起こるかもしれない。現行憲法は、第1条に天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と定められているが、正統性が疑われる天皇では国民統合を象徴することはできないだろう。
 皇室には、姓というものがない。皇族は姓を持っておられない。社会の源になる本家本元の家柄には、他の家と区別するための標識が必要なかったからだろう。だが、女系継承になれば、父親の家系の名前を持った一族が王家となる。
 欧州には王家のある国が今日もいくつかあるが、それらの国では、王朝は何度も交代している。例えば、スウェーデンは、フランス革命後、ナポレオン・ボナパルト配下の将軍ベルナドットが王位を後継し、以後フランス系のポンテコルヴォ王朝となった。イギリスでは、フランス系のノルマン・コンクエスト以前の王朝、ノルマン朝、プランタジネット朝、チューダー朝、スチュアート朝等と王家が何度も交代した。王位継承者がなくなると、ドイツから迎え、ハノーバー朝となった。第1次世界大戦で英独関係が悪くなった時期に、ハノーバーからイギリス風のウインザー家に改名した。
 もし皇室が女系継承に転じれば、そうした他の国々にあるような王家と変わらなくなる。形は皇室が続いているようでも、神武天皇以来の無姓の皇室から、有姓の王家に代わることになる。
 ヨーロッパの王室では、女系での継承を認めたために、王朝が移動するケースが相次いだ。最も有名な例がスペインである。1496年、スペイン王女フアナはハプスブルク家のブルゴーニュ公フィリップと結婚し、長男を生んだ。その後、王位継承資格者が次々に若死にし、ただ一人残ったフアナが王位を継承した。その後、フアナとフィリップの長男が母親から王位を継承してカルロス1世となった。カルロス1世の父親はハプスブルグ家の一員であり、ここで王朝はハプスブルグ家に移った。こうしてスペインの統治権を得たハプスブルグ家は、栄華の道を登りつめて行った。
 また、もし女性天皇(男系女子)と民間人の佐藤氏との間に生まれた女系天皇が女子で、この女系女子の天皇がまた民間人の鈴木氏という人とご結婚されたとする。その子が皇位を継げば、王朝は鈴木王朝に替わる。このようなことを繰り返すと、皇族と国民の間の区別がなくなってしまう。そして、皇室の存在意義は薄れていく。すると、そのような皇室は必要がないという意見が強くなり、皇室を廃止すべきだという事態にいたるかも知れない。
 女性天皇以外であっても皇族女子が結婚された場合、お相手が皇族男子でなければ、そこに生まれたお子様は、母を通じて皇室とつながっているものの、父方の血筋は皇室と別の血統である。そのお子様が将来、天皇になると、それまでの天皇とは異なる家系に継承者が移ることになる。男系の女性天皇と結婚した男性やその家系、また女系の女性天皇と結婚した男性やその家系が権勢を得て、それをめぐって国民の間に権力や権威をめぐる争いを生じるかも知れない。
 皇室の存続のためには女系継承もやむなしという議論に、まどわされてはならない。

●恐るべき共産主義者の陰謀

 女系継承を認めるべきだと主張する者たちの中で、最も恐るべき存在は共産主義者である。共産主義者は、日本を共産化するための最大の障害は皇室の存在だとみなしている。そして、共産主義を実現するために、皇室の廃絶を目指している。女系継承の実現は、民主的・合法的な方法で皇室を廃絶し、日本を共和制に変えるものである。共産主義者は、現行憲法の男女平等の理念を打ち出すことによって、女性の天皇と女系の継承を認めるべきだと説いて国民を女性天皇・女系継承の容認に導き、それを通じて本来の目的である日本の共産化を実現しようとしている。
 以前は、皇室制度を廃止せよと主張してきた学者が、女性天皇や女系天皇の容認を主張するようになった。女系への移行によって皇位の正統性が失われるから、皇統廃絶の好機となると考えているのである。
 奥平康弘・東京大学名誉教授は、月刊『世界』平成16年8月号に女性天皇や女系天皇の容認する論文を寄稿した。奥平氏は憲法学者で、第9条改正反対を説く護憲派の理論的支柱である。
 氏は、女帝を容認し、さらに女系天皇が誕生すると、「天皇制のそもそもの正当性根拠であるところの『万世一系』イデオロギーを内において浸蝕する因子を含んでいる」と指摘している。「『万世一系』から外れた制度を容認する施策は、いかなる『伝統的』根拠も持ち得ない」「『女帝』容認論者は、こうして『伝統』に反し『万世一系』イデオロギーと外れたところで、かく新装なった天皇制を、従来とまったく違うやり方で正当化して見せなければならないのである」と述べている。
 つまり、女系の天皇が誕生した時、奥平氏らは、万世一系の伝統から外れた天皇には正統性がないと主張し、皇室制度を廃止にもっていこうと考えているわけである。
 ジャーナリストの門田隆将氏は、『なぜ女系天皇で日本が滅ぶのか』において、日本共産党の動きに強い警告を発している。共産党は、1932年テーゼで、「天皇制は国内の政治的反動と封建制の残滓の主要支柱」であるとし、その「粉砕」が「革命的任務中の第一のもの」と打ち出した。だが、平成16年(2004年)1月、不破哲三委員長は「天皇制廃止の問題」等は「情勢が熟した時の問題」だと方針を転換した。そして、令和元年(2019年)6月、志位和夫委員長は女系天皇を認めるという方針を打ち出した。このことについて、門田氏は「『天皇制を潰すためには、女系天皇を実現させ、内部から崩壊させる』という意図があるからにほかなりません」「女系天皇というのは、皇室廃止に持っていくための一里塚です」と述べている。
 主要メディアを見ると、全国紙では、男系継承を明確に支持しているのは産経新聞のみである。読売新聞は、女系天皇容認が社の方針となっている。朝日新聞・毎日新聞は女系継承を推進している。読売・朝日・毎日と「しんぶん赤旗」の論調が替わらないというのは、実に深刻な状態である。
 いわゆる保守と呼ばれる人たちの中にも女系容認論を説く人たちがいる。彼らは、女系継承による皇位も正統性を持つと主張し得るかどうか、その正統性の根拠について十分説得のある理論構成を提示すべきである。さもなくば、皇室制度否定の共和主義者や共産主義者の深謀遠慮に、さらに言えば中国や北朝鮮の対日工作にしてやられるだろう。私は、女系継承を正当化する理論は成立し得ないと考える。男系継承が皇位の正統性を維持する唯一の方法である。なぜなら、万世一系とは、皇位の男系継承によってのみ可能だからである。

 次回に続く。

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