ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

日本の心12~天皇は「国民統合の象徴」です

2021-10-04 10:06:45 | 日本精神
 天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴である、と現行憲法には規定されています。この「国民統合の象徴」という点について考えてみましょう。
 ある集団が一つの集団としてまとまるためには、集団を統合するものが必要です。それは、統合力のある人物や思想や象徴などです。言いかえれば、統合の中心です。中心がなければ、集団はばらばらになってしまいます。国家においても同様であり、国民が団結するには、統合の中心が必要です。
 日本では、古代より天皇が国民統合の中心として存在してきました。天皇による統合は、政治的な権力ではなく、精神的な権威によっており、それが日本独特のところです。そして、この統合力は、長い歴史の中で、自然につちかわれてきたものです。天皇機関説で有名な憲法学者・美濃部達吉は戦後、『民主政治と議会制度』において次のように書いています。
 「すべて国家には国民の国家的団結心を構成する中心(国民統合の象徴)がなければならず、しかして我が国においては、有史以来、常に万世一系の天皇が国民団結の中心に御在(いま)しまし、それに依って始めて国家の統一が保たれているからである。
 それは久しい間の武家政治の時代にあってもかつて動揺しなかったもので、明治維新の如き国政の根本的な大改革が流血の惨を見ず平和の裡に断行せられたのも、この国家中心の御在しますがためであり、近く無条件降伏、陸海軍の解消と言うような古来未曾有の屈辱的な変動が、さしたる混乱もなく遂行せられたのも、一に衆心のむかうべき所を指示したもう聖旨があったればこそであることは、さらに疑いを入れないところである」
 それでは、もし日本において、天皇という国民統合の中心が無くなった場合は、どういうことが予想されるでしょうか。美濃部博士は、次のように考察しています。
 「もし万一にもこの中心が失われたとすれば、そこにはただ動乱あるのみで、その動乱を制圧して再び国家の統一を得るためには、……ナポレオンの帝政やヒトラーの指導者政治や、またはレーニン・スターリン・蒋介石などの例に依っても知られ得る如く、民主政治の名の下に、その実は専制的な独裁政治を現出することが、必至の趨勢と見るべきであろう」
 世界の歴史が示しているのは、国王を廃止することによって、より民主的で平等な社会ができるとは限らないということです。むしろ逆の例が多い。例えば、第1次大戦の敗北後、ドイツでは王制が廃止され、ワイマール憲法による共和制が取られましたが、その下で、ヒトラーが出現し、狂暴な独裁政治が行われました。ロマノフ王朝への反発によって共産主義革命が起こったロシアでは、ボルシェビキの一党独裁の下で、スターリンの個人崇拝体制が生み出されました。エチオピアは、かつて日本のように古代から由緒ある王室が続く国でした。しかし、戦後、社会主義の勢力によって、王制が廃止されました。その結果、体験したものは、何だったでしょうか。飢餓と内戦による混乱です。
 一方、今日も西欧には、国王が存在する国々が多数あります。それらの国々では、一般に政治的な安定度が高く、成熟した議会政治が行われ、伝統文化が豊かに保たれています。例えば、イギリス、ノルウェー、オランダ、ベルギーなどです。
 これらの国に比べ、日本においては、天皇と国民がはるかに強く結びついているのが、特徴です。戦前アメリカの駐日大使であった知日家のグルーは、天皇を女王蜂にたとえ、「この女王を取り除くならば、この群れは解体する」と言いました。ちょうど扇はかなめをはずすと、ばらばらになってしまうように、日本人は天皇という中心を失ったならば、ばらばらに分裂してしまうおそれがあります。逆に、天皇を中心とすることによって、国民が一体感を持つことができるのです。そこに、天皇の「国民統合の象徴」としての働きがあるのです。
 天皇という「国民統合の象徴」について、認識を深めましょう。

 次回に続く。

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