さすが村上春樹さんの上質なエッセイ。
本文104ページの掌編ながら
文字の裏側にたくさんの想いが詰まっていて
心にさざ波を起こすには充分だ。
何を言いたかったのかはあとがきを読めばわかる。
宝石のように美しい本。
私の父親も春樹さんの父上とほぼ同世代。
病気で戦争には行っていないけれど
それでも直接、間接的に彼の人生に暗い影を落とした。
当時に似ているコロナ禍の今だからこそ
という思いで本書を綴ったのではないかと思う。
ある日突然災難は私たちひとりひとりに降りかかってきて
否応なく人生を変えてしまう。
地震や噴火、台風も。
「猫を棄てる〜父親について語るとき」村上春樹:著 文藝春秋