風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

危険

2020-08-30 | 風屋日記
60歳になると、定年退職となる人が多い。
私の同級生たちも例に漏れず、たまに会ったりすると
「定年後どうするの?」
という話題が必ずと言っていいほど出てくる。
「うちの会社は再雇用制度あるから、もう少しがんばるベぇ」
「ま、どこかに出向することになるかな」
「一応年度末で終わりだけど、他から声かけてもらってる」
などなど、なんらかの形で仕事を続ける人が多いが、
それでもみんなとりあえず還暦で一区切りという形なので
どこかホッとした顔をしている。
人生のひとつの大きなランドマークではあるので
その気持ちわからなくもない。

医師や政治家、自営業などはまだ先があるから
そんな話をニコニコ聞いているのだが、
ここに実は大きな落とし穴があることに最近気づいた。
特に自営業やフリーランスだ。
医師や政治家は遠からず引退が待っている。
しかし自営業やフリーランスは体が動くうちは延々と仕事が続く。
後継がいる自営業はまだいいのかも知れないが
個人的スキルで仕事をしているフリーランスは孤独だ。

60歳を迎え、実はほんの一瞬どーんと気持ちが落ちた。
先が見えない、ゴールのないレース。
それでも勤めていた頃の感覚がどこかに残っているせいか
一度ゴールテープを切ったような錯覚。
ゴールしたのに、まだ走るべきコースが
目の前にどこまでも続いているような微かな絶望。
60歳を迎えて、週末を過ごし、
さてまた今日からいつもの日常の仕事・・・と思った月曜日。
正直言って行動を起こすのに、いつも以上の気力が必要だった。

大袈裟な表現をするなら、いわば「還暦鬱」。
たぶんこれは再雇用や再就職には無いのだろう。
一度定年退職という、ひとつのゴールを経験するのだから。
特にフリーランスの方々は気をつけなければ。
社会はどこに落とし穴があるかわからないと思い知った。
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