風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

ルパン100年

2005-10-06 | 風屋日記
今年はアルセーヌ・ルパンが生まれて100年とのこと。
もちろん生誕からじゃないよ(笑)
モーリス・ルブランが「怪盗紳士」にルパンを登場させてからの話し。
だって第一次世界大戦にもルパンは、陸軍中佐として出征してるし。

私が小学生だった時分、
周囲にはルパン派とホームズ派、明智小五郎派がいた。
いうまでもなく、それぞれ子ども向けの本が出ていたわけで、
本好きの友人達は自分の好みに分かれていたのだ。
明智派は「外人の名前が覚えにくい」って理由が大きかったので別格。
観察力、推理力が超人的なホームズは、
結局「水戸黄門」的というか、ONが揃って9連覇の巨人というか(笑)
あまりに完璧過ぎて私はどうも好きになれなかった。
その点、ヒールでありながら情と信義に厚く、涙もろいルパン、
手下を亡くして落ち込んだ時には乳母のビクトワールに甘えに行くルパンが
とても人間的で魅力ある存在に思えたものだ。
そう、私は熱狂的なルパン派で、
ポプラ社刊のシリーズ27巻を読破している。

27巻のうち後から追加された19巻以降にはあまり惹かれなかった。
せいぜい24巻目の「ルパン最後の戦い」における年老いたルパンに
何だか寂しさを感じたぐらいしか印象に残っていない。
前半18巻は名作がめじろ押し。
レイモンド嬢との悲恋が涙を誘う「奇巌城」。
ホームズとの死闘に手に汗握る「813の謎」や「ルパン対ホームズ」。
美しい風景の中で哀しい話が進む「青い目の少女」など。
特に「奇巌城」は
明智シリーズの小林君のようなイジドール・ポートルレ少年探偵に
自分を投影させながらわくわくして読んだものだ。

日本の子ども達にこれだけルパンを根付かせたのは
訳者である故南洋一郎の功績が大きいと思う。
自身が戦前から冒険小説作家として有名な存在であり、
少年少女の夢をかき立て心踊らせる表現はお手のものだっただろう。
フランスの美しい風景描写、すべての登場人物を魅力的に描く人物描写。
翻訳ものの文芸作品は何でもそうだが、
訳者の役割はとても大きい。
私がランボーやボードレールに憧れた高校時代、
それらの訳がすべて堀口大学であり、
他の翻訳者による同じ作品を手に取ることがなかったように。

いずれ私はルパンによってフランスの国や自然、町を知り、
ルパンによってフランス革命や普仏戦争、第一次大戦等の歴史を知り、
恐らくはそれが引き金となって、ランボーなどのフランス詩人、
あるいはカミュやデフォーなどのフランス作家に
その後惹かれていくことになったのだと思う。

「奇巌城」は何度も繰り替えし読んだので、
今でも1枚1枚の挿し絵まで思い浮かべることができるけど、
「ルパン100年」についての昨日の朝日新聞「天声人語」を読んで、
図書館あたりで、また27巻読み直そうかと思ったりしている。



「今日の話題はタイガース株の上場だろう」と予想していた方、残念でした(笑)
ああいう金儲けしか考えていない方々には興味がないので・・・悪しからず。
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