風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

林 静一さん

2017-10-26 | 読書
この画家、イラストレーターの名前を知ったのは
確か大学時代、古本で買った漫画雑誌「ガロ」ではなかったか。
高校時代に永島慎二さんに傾倒し
その後つげ義春さんにも興味を持っていたので
彼らが活躍していた場所「ガロ」に憧れていたのだ。
そこで見つけた、儚げな少女を描いた1枚のイラスト。
それが林静一さんの絵だった。

すぐに林さんの作品を調べ
マンガ「赤色エレジー」を文庫で買ってきた。
貧しく若いカップルの同棲を描いた暗い暗い作品だったが
その実験的な展開や、セリフのリアルさが
まだ20歳ほどの自分にも実感として感じられて、ハマった。
特に最後の主人公の一言。
「朝が来れば、明日になれば・・・昨日もそう思った」
が痛いほど胸に迫ったことを覚えている。
大事にしていたこの本は
当時最も親しかった友人にプレゼントしたので手元にない。
どうやら今も大切に守ってくれているようだけど。



その代わりというわけではないが、
アルバイトして金を貯めて買った画集を今も持っている。
「現代の竹久夢二」とも言われる儚さと色気。
一般的には小梅ちゃんのCMで、
あるいは我々から上の世代にははっぴいえんどの
デビューアルバム「ゆでめん」のレコードジャケットで知られ、
実はあの宮崎駿さんと東映動画の入社が同期だったとか、
ジブリでおなじみの高畑勲さんとも仕事をしたとか
実はとてもすごい人なのだ。



でもそんな知識はどうでもいい。
この静謐な世界にふっと入り込みたくなり
今でも時々、もう絶版になってしまったこの画集を
コーヒー片手に開いてみたりする。
すると途端に20歳ごろのことが目の前に蘇ってきて
しばし思い出の波間に揺れてみたりするのだ。

思えば遠くへ来たものだ。
コメント
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