風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「ありふれた魔法」

2014-10-01 | 読書
組織とは、実態の無い人の集まり。
建物なんて単なる器だし、
人も物も金も組織の部分的要素でしかない。
目的に向かって組織を構成する人々が
それぞれの役割を担って存続していくだけのこと。
会社はその利潤を追い求めるだけでなく、
社会の有為な存在になるべき組織であって、
「会社」なんて呼び方は単なる概念でしかない。
構成員たちは役割を担う代わりに身分を保証され、
給料をもらうことにより食っていける。

しかし、いつしかその本質が忘れられ、
前を向くどころか組織内部での首の締め合い、
あるいは足の引っ張り合いが始まり、
組織内競争が激しくなるに従って人を人と認めなくなる。
(その際たる物が軍隊なのであろう)
人が人として生きるとはどういうことであるか。
それが忘れ去られた組織は地獄でしかない。
本書はラブストーリーの形をとっているけれど、
そういう「人(組織)」の恐ろしさを
人として生きることとの対比で描いた物語と読んだ。

それにしても、
自分のこのタイミングで本書を手にしてしまったこと、
自分を鑑み、読み進めるのがとても辛かった。
ある意味、客観的に読めて悟ったこともあるけれど。

「ありふれた魔法」盛田隆二:著 光文社文庫
コメント
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