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風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「恋妻家 宮本」

2018-01-15 | 映画・芝居・TV


阿部さんは好きな俳優でもあるし
ふと目に止まったこのタイトルにも惹かれ、
レンタルでDVDを借りてきて家で鑑賞。

元々はドラマの脚本家の方の初監督作品とのことで
やっぱりどこかコメディータッチのTVドラマのようだけど
作りに反して内容は結構リアルでシリアス。
子どもが巣立った後の50代夫婦の実態がそこにあった。
ラストがちょいとお気楽極楽だけどね(^^;

調べてみると、原作は重松清さんとのこと。
なるほど、リアルでシリアスな内容は重松さんでしたか。
「ファイレス」という、3組の夫婦が描かれた小説のうち
1組の夫婦の話を脚本にして映画化したようだ。
小ネタ満載でかなり笑えるけれど
果たして笑って済ませていい内容なのかと
鑑賞後考えたしまった。
夫はともかく、この作品中の妻の感じ方は
コメディにしてもいいのかもしれないけれど。

おそらく原作にあったと思われる、心に止まるセリフがいくつか。

「いま私たちがこだわるべきなのは
 正しいことではなく優しさなのではないでしょうか。
 戦争のように、正しいことと正しいことはぶつかるけど
 優しいことと優しいことはぶつからない」

「夫婦で決めてきたことは
 いま思い出してみて正しかったかどうかわからない。
 でも、もし間違っていても
 あいつ(妻)なら笑い飛ばしてくれる。
 (そういう相手をオレは選んだんだ)」

特に前者は夫婦や家族だけの話じゃない。
社会全般や、政治、外交、人間関係にも言えること。
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サバイバル ファミリー

2017-11-17 | 映画・芝居・TV


つい数日前、東京の田園都市線が停電でストップし
16万人もの足に影響が出たというニュースがあったばかり。
「東急電鉄の社長にも(バスやタクシーを待つ)列に並んで欲しい」
という、インタビューを受けていた人々の声が放送されていたのだが、
この映画を見ていて、そういう言葉が
実際にサバイバルが必要な時にはいかに空虚なものであるのかと
つくづく思った。

私は「人間のやることに完璧はない」と思っている人間。
(だからジェットコースターには乗ろうと思わない)
どんなに完璧を目指しても、それに近づけることはできても
たぶん100%は決してない。
だから当然、今回の田園都市線のようなことは当然起きる。
要は大なり小なりそのための備えを心がけているかどうかではないか?
電車が止まったら、善後策をどうするか。
私も含め、あまりに便利な世の中で生活していると、
人間が本来持っていると思う危機管理能力が衰える気がする。

レンタルで借りてきて見たこの映画は
予告編の作り方や、ところどころに散見される
非現実的でご都合主義なストーリー展開を見ていると
たぶん笑えるエンタテイメントというカテゴリーになるのだろう。
しかし見ていて、そんなに笑う気にはなれなかった。
6年前の、ライフラインが止まったあの数日がフラッシュバックしたからだ。
いざという時、公共交通機関や金は何の役にも立たない。
もちろんブランド品も。
それでもそういうものに頼り、執着する人間たちが哀しい。

スーパーやコンビニに食べるものが無くなっても
田舎では米も野菜もあった。井戸や自家水道もある。
電気が通らず、エアコンやファンヒーターが使えなくても
反射式ストーブがあったし、いざという時には火を焚くこともできた。
サバイバルが必要な時、本当に強いのは
土とともに生きる生活なのだろう。
そして地域のコミュニティーによる共同備蓄。
田舎の当地でも、必要なものの物々交換が行われていた。
ふんだんに最新技術が駆使される、普段便利に見える生活は
本当に便利な生活なのだろうか。
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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

2017-10-21 | 映画・芝居・TV


先週末の真夜中にNHK BSで放送された
この映画を録画し、とりあえず駆け足でざっと鑑賞。
1998年ごろの映画だからちょっと古いものだ。
映画は見てなかったけど、当時CDは聴いていたので
(しかも大好きで、かなりヘビロテで聴いていた)
流れる曲が懐かしくもあり
また歌や演奏している人たちの顔や演奏姿が見られ
すごく良かった。後でゆっくり見よう。永久保存。

特にこの写真に写っているイブライム・フェレールや
コンパイ・セグンドの声にとても惹かれていたので
実際の彼らが(年配者だとは聴いていたものの)演奏当時に
イブライムが71歳、コンパイに至ってはなんと91歳と知り、
ひっくり返るほど驚いた。
なにせ声が若い。
一緒に演奏し、プロデュースしたライ・クーダーが
「キューバのナット・キング・コール」と称したイブライム、
大人の男の色気たっぷり、艶っぽいコンパイなど、
キューバの片隅から見いださなければ、
誰にも知られることがなかったアーティストだったに違いない。
イブライムなんてライ・クーダーに発見されるまで
靴磨きの仕事をしていたというから驚きだ。
(この辺は伝説のBluesmanサン・ハウスみたい)

CDだけではなく、映画を見て良かったことは
彼らひとりひとりの人生が語られていること。
そして何より、とても楽しそうに演奏しているシーン。
アメリカによる経済封鎖で貧しい国キューバは
映画が撮影された1998年当時でも
走る車は1950〜60年ごろの、まるでクラシックカー。
それもボコボコになったボディーにペインティングされている。
スラムのようなダウンタウン、路上に立ちすくむ人々の姿。
でもね、どこか心の豊かさみたいなものを感じるんだ。
語られる人生は、現代日本に暮らす我々にしたら悲惨なものだけど
彼らはそれを当たり前のものとして受け入れ、自然に生きている。
「音楽は最高さ」と笑顔なのだ。
そこには周囲からがんじがらめに枠にはめられる日本とは違い
レールなどない中で、自分の力で生きてきた強さも感じる。
そしてカリブの強烈なリズムと哀愁漂うメロディー。
91歳にして「生きている限りロマンスは必要さ」と不敵に笑い、
「まだ子どもを作りたい」と語るコンパイに脱帽。
なるほど色気たっぷりなわけだ。

彼らの音楽には、人間の根源的なものが全て詰まっている
・・・というと言い過ぎだろうか。
でもそれだけの強さと哀しみに溢れてるんだよなぁ。
キューバ・・・行ってみたい。
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映画「起終点駅 ターミナル」

2017-10-02 | 映画・芝居・TV


桜木紫乃さんの作品が好きだ。
決して明るい雰囲気の小説ではない。
それどころか、
どちらかというとどんよりした天気のような
陰鬱な印象すらある。
しかもそこには人生の中で少なからぬ傷を抱え
社会の片隅で静かに暮らす人間たちがいる。

でもね、作品の底辺に強さを感じるんだ。
いろんなことを諦めて暮らす中にも
人間の芯の強さを信じられる気がする。
この作品は桜木さんの作品初の映画化だけど
そういう部分がちゃんと表現されている。
時系列は若干違うけど
台詞回しも含め、ほぼ原作通りに作られていた。
山田洋次監督が作る高倉健さんの映画みたい。

原作と比べての個人的な印象では
主人公(佐藤浩市さん)がかっこよすぎだけど(^^;
でもこのぐらい生きてくれば
同じシチュエーションじゃなくても
大なり小なり身につまされる物語ではある。

「ラブレス」や「風葬」「氷平線」、
そして直木賞受賞作の「ホテルローヤル」なども
できれば映画化してほしいなぁ。
本作のような作り方なら
彼女の小説はとても映像的だから
きっと原作とのギャップは生まれないと思う。
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「この世界の片隅に」

2017-09-21 | 映画・芝居・TV


映画を見逃していたものの
いつかなんらかの形でどうしても観たいと思っていた
この映画のDVDがレンタル開始ということで
さっそく借りてきて鑑賞。

アニメはジブリ以外ほとんど見ないため
はじめはそのコマの少ないいかにもアニメーションに
ちょっと不安を感じたものの、
すぐにこの物語に心を奪われた。

静かな慟哭。
「生の積み重ね」って言葉が胸に湧いてくる。
そして市井に生きる名も無い人々の人生への愛おしさ。
こんな人々を巻き込み、振り回すのが戦争だ。
被害を受けるだけじゃない。
こちらが加害者になって他の人々を不幸にするかもしれない。
それもまた争い傷つけ合うことの悲しさ。

何度でも見たい映画だし、
自分の息子たちや、成長したあとの孫たちにも見せたい。
レンタルじゃなくてDVDそのものを買おうか。
こんな気持ちにさせてくれる映画は珍しい。
「表現」の可能性を再確認させてくれる傑作だと思った。

「対話は無駄骨」と宣う国のトップの言葉は
自ら外交を捨て去る考え方。
この思考が争いや暴力を生み出す。
決めるのは国を動かす偉いさん方だけれど
その結果を直接悲惨な思いをするのが
日本やシリアや北朝鮮など
「この世界の片隅」につつましく暮らす「すず」たちだ。
人為的な災害によって流される涙がない世界を。
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「愛を積むひと」

2017-09-02 | 映画・芝居・TV


久しぶりにDVDを家人が借りてきたというので
出張から帰ってきてからゆっくり鑑賞。
仕事に追われ、こんな風に鑑賞することを忘れていた。
静かに心に沁みてくる映画だった。

男ってのは
なんてバカで鈍感で愛すべきものだろう。
女ってのは
なんて強くてしっかりしていて可愛いものだろう。
そんなことを感じながら最後まで目が離せなかった。
身につまされながらも
自分は篤のようには強く生きられないだろうなと
自らを省みながらちょっと反省。

佐藤浩市さん、樋口可南子さんだからこその
こういう雰囲気を出せるというさすがの好演ながら、
柄本明の味のある演技が心に残った。
北川景子さんもいいねぇ。
風景もとても美しい。
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「花戦さ」

2017-06-04 | 映画・芝居・TV


これ見たい!!
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関口知宏のヨーロッパ鉄道旅

2017-02-17 | 映画・芝居・TV


毎朝のTVルーチンは
NHK地上波のニュースを見た後
7時からはBS-3にチャンネルを合わせる。
「ニッポンの里山」と「もう一度、日本」を見た後
朝ドラの再放送を見る。
今は数年前に放送された「ごちそうさん」。
これがなかなか面白い。
7時半からは弁財の朝ドラ(今は「べっぴんさん」)。
それが終わると朝食を済ませた
出勤組の家族たちがバタバタ支度を始める。
ワタシ自身は早く出勤する家族の支度を待ってから
自分の支度を始めるので
みんなが出かける8時までは比較的のんびり。
その間の15分間に放送されているのが標記番組だ。

関口宏さんの息子さんという存在はこの番組で知ったが
初めて見る民族楽器を弾きこなし、
旅の途中で曲を作り、スケッチから起こした絵もうまい。
なかなか素晴らしい表現者だと思う。
直に見たものを曲にし、絵にできるということは
様々なものを感じとる感性も素晴らしいということ。
実際、現地の人たちとのふれあいの中で
自然にコミュニケーションをとり、すっと中に入り込める。
列車の中で隣り合った人たちとの会話も自然だ。
異文化を自然に受け入れ、感じ取れる能力は羨ましい。
肩肘張らず、変に構えたりカッコつけたりせず
自然なコミュニケーションをとる姿にとても好感が持てる。

触れ合うのはごく普通にいる
ささやかな日常を送っている人々。
文化や言葉は違えど、幸せを願う思いはどの民族も一緒だ。
みな笑顔で異邦人を受け入れている。
その時々に垣間見える歴史や記憶が鮮烈。
特にクロアチアやポルトガル、ハンガリーが印象的だった。
大国ではない、都会でもない、
あんな田舎や伝統的生活慣習が残る地域って
どうしてあんなに魅力的なんだろう。

鉄道旅の景色もいい。
植物が違うから、今の自分の周りの景色とは違って見える。
駅や街や(基本的に)鈍行列車の佇まいもいい。
どこの駅も金太郎飴のような新幹線に慣れた目には
特色あるそれらの風景がとても新鮮に見える。
学生の頃、夜行列車で帰省するときに感じたような
街々の匂いが感じられる。

あんな旅、してみたいな。
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「自閉症の君が教えてくれたこと」

2016-12-14 | 映画・芝居・TV


日曜日夜のNHKスペシャルは
自閉症の作家 東田直樹さんを取り上げたもの。
2年前に1度取り上げたことがあったらしいが、
ワタシは本で読んだだけで、番組は見ていなかった。
今回は前回担当したディレクターとの会話が中心。
このディレクターも2年前の放送後にガンを患って
長いこと入院・治療していたとのこと。
自らがハンディチャップを抱えることになったディレクターが
東田さんに問う、これからの生き方についての答えが
今のところ社会的なハンディチャップの無いワタシでも
思いつかないような心の言葉になって胸を打つ。
実際ハンディチャップとは何なのだろうか。

他者と面と向かったコミュニケーションが難しい彼が
キーボードを前にすると深い言葉を紡ぎだす。
その表現力は一般の人々は持ってい無い能力だと思う。
そう考えると、彼はハンディを持った人間なのか?
身近な人が本人に対して持つ感情と
本人が自ら持つ感情が違うという事実に愕然とする。
どんなハンディを持っていようと人は人。
ハンディは個性と言えるし、ある意味強みにすらなる。
そんな単純に見えて深いことを、彼は教えてくれるのだ。

「命のバトンを受け継ぐよりも
 一人一人が自分の人生を生き切ることが大事だと思う」

と言う彼の言葉が特に心に響いた。

それにしても、彼の頭脳はどうなっているのか。
本やTVを通して見てもわからない。
どんな感覚なのだろうか。
人間の不思議さを改めて感じる。
コメント (2)
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「世界でいちばん美しい村」

2016-11-07 | 映画・芝居・TV


昨年4月に起きたネパール大地震をきっかけに
取材に入った先の、震源地ラプラック村で
人々の暮らしに魅せられたカメラマンが作ったドキュメンタリー。
世界でいちばん美しい村
涙が出そうなほど綺麗な風景、
懐かしさとと温かさを心に感じる人々の生活、
厳しい自然の中での祈り、
そして飾ることのないピュアな笑顔。
これは現代の生活に慣れ、疲れた世界中の人たちに
ぜひ見て欲しい映画だと思った。



そしてそのエンディングテーマを歌ったのが
花巻出身のデュオグループはなおと。
澄んだギターの音とハイトーンの声で歌うのは
英語版の「Nda nahan」。
このタイトル「んだなはん」というのは
花巻あたりの言葉で「そうだね」という意味だが
この日本語バージョンを彼らは東日本大震災当時から歌っていたとのこと。
この映画のために英語に直したものをミニライブで歌ってくれた。
これにも心が揺さぶられた。

昨日の花巻は先行上映会ということで
東北各地や東京、遠くは大阪からも観賞したい人が駆けつけた。
一般へは来春公開とのこと。
乞うご期待。
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映画「怒り」

2016-09-20 | 映画・芝居・TV

原作の本を読んだ時から
タイトルはなぜ「怒り」なのだろうと思っていた。
映画を見てますますその疑問が増幅されたが、
じゃあタイトルを「疑念」とか「裏切り」とかにすると
それはそれであまりにもストレート過ぎるかも。
映画中の3つの物語の根底には
ずーっとそれらのテーマが流れているんだけど。

人を騙すぐらいなら騙される側でいい、
信頼を裏切るようなことはしたくは無いと
昔から思っていたし、
実際何度か騙されたり裏切られたりしてきた。
それはそれで、それなりの理由があったのだろうと
できるだけ理解したつもりになっているのだが、
じゃあ本当にギリギリの場面で
100%相手を信用できるのかと問われたら
たぶん本能的に腰が引けてしまうのだろう。
信用しきれない弱さ、
信用しきって裏切られた時の弱さ、
そんなものをこの映画は描いているのだが、
原作にあって映画に無いものがある。
ネタバレにならないよう
「ラストシーンの描き方」とだけ書いておこう。
原作では最後の最後、
弱さと対極にある本当の強さが描かれている。

「本当に大事なものは増えるものではない
減っていくものだ」
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「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」

2016-07-04 | 映画・芝居・TV

クドカンの爆裂コメディ。
といってもこだわりの製作。
主な舞台である地獄の場面は
コンピューターグラフィックスを極力使わず
実にアナログな作り方をしていたり、
さもないところに田口トモロヲや烏丸せつこ、
中村獅童(最後までどこにいたかわからなかった)など
主演級の演技派を散りばめた贅沢なキャストだったり、
木村充揮やchar、野村義男など
シブいミュージシャンが勢揃いしていたり。
(木村さんとcharの鬼っぷりは見もの)
さすがは稀代のエンターテイナー宮藤官九郎だ。

「アイス食べて、スムージー飲んで、
 生きてるとそんな当たり前のことが
 とても大事なことなんだよ」
生死に関わることばかりじゃない。
戦争が起きると、生きていてもできないこと。
当たり前の平穏な日常が一番大切だ。
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「海よりもまだ深く」

2016-06-13 | 映画・芝居・TV


「なりたかった大人になれなかった」人たちの物語
というのがこの映画のキャッチフレーズだけど、
なりたかった大人・・・なんて無かった。
いつもその時その時
懸命に考え、振り回されながら、這いずりながら
周囲と折り合いをつけ、妥協もしながら
なんとか生きてきた55年。
いくつであっても自分は自分でしか無かった。

この映画の主人公である阿部寛さんなんかは
だからまだ自分の思うように生きて来て
ある意味うらやましく思ったりもするんだ。
自分で自分が情けないんだろうとは思うけど
でもまだ何者かになろうとしている。
それは誰でもできることじゃない。
彼もまた必死に生きている市井の人間のひとり。
その姿に勇気をもらうよ。
ラストシーンの背中の切なさも
自分のことのように感じたし。

阿部さんの役のことを「主人公」と書いたけど
この映画のタイトルの意味を考えると
本当の主人公は樹木希林さんの母親なんだろうね。
登場人物一人一人に味があり
希林さんの存在感が特別目立つわけじゃないけど。

エンディングテーマのハナレグミの歌がまた沁みた。
人は誰しも一人で生きているんだなぁ・・・
是枝監督、良いわぁ。
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「ベトナムの風に吹かれて」

2016-04-08 | 映画・芝居・TV

痴呆の母親を
自分が住むベトナムに連れてきて一緒に暮らす物語。
周囲はみんな当たり前のように反対するけれど、
辛く苦しかった半生を取り戻すかのように
少女のようにニコニコ過ごす母親の顔が印象的だ。
もちろん子にとっては
こんなもんじゃない大変さはあったのだろうが、
かつての日本(田舎にはまだ残ってるけど)のような
ハノイの人たちの暖かく優しい目が見守っている。
なんか懐かしいような、心が暖かくなる物語。

痴呆の介護に関する本2冊を読んだ後なので
より興味深く見ることができた。
こういうコミュニティーのあり方が
介護の環境を考えるのに一つのヒントになる気がする。

日本とベトナムとは複雑な歴史がある。
戦時中の日本軍統治も、ベトナム戦争時の反戦運動も。
そういう記憶や感情も織り込みながら、
全体が多層的なストーリーとなっているのは
大森一樹監督の世代ならではの視点ではなかろうか。
だから隣席の人がつぶやいていたような
「なんだか色々なシーンがあって散漫な感じ」
という鑑賞後の言葉は当たっていない。
私たちはもっと他国のことを知る必要がある。
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「家族はつらいよ」

2016-03-13 | 映画・芝居・TV


山田洋次監督にとっては
「男はつらいよ」以来の喜劇とのこと。
「あの世で渥美さんが笑ってくれるといいなぁ」
とは新聞に載っていた山田洋次さんの弁。

期待にたがわず面白い。
9割方埋まった客席が爆笑の渦だった。
・・・が、そこは人情話の山田監督。
目尻に涙を溜めての笑いとなる。
登場人物ひとりひとりの気持ちの機微が
細かく描かれたシナリオ
画面の隅にまで気配りが行き届いた楽しい小技、
そして観客の心をくすぐるリアルな演出。
うまいなぁ。
「東京家族」とまったく同じ役者さんたちも
みんな手練れでうまい方々ばかりなので
あっという間に引き込まれ、
あっという間にエンディングになった感じ。

特に、一番リアルな演技と感じた夏川結衣さんと
あれだけうまい役者さんたちに囲まれながら
負けることなくしっかり役にはまっていた
蒼井優さんに感心した。
お2人ともすっかり演技派俳優だねぇ。

身につまされて見た観客も大勢いたと思うが
(終わった後、後ろの席のおじさんが
「リアルだったなー」とため息ついていた 笑)
それでも、涙を誘った後の
山田監督のエンディングのうまさには脱帽。
ネタバレになるからこれ以上ここでは書かないけど
なるほどねぇ。
これは名画だな。
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