武甲山(ぶこうさん)は、秩父盆地の南側で秩父市と横瀬町の境界に位置する山で、標高は1,304m。名前は日本武尊が東征の成功を祈って山頂に武具や甲冑(かっちゅう)を納めたことが由来とされている。
武甲山は北側斜面が石灰岩質であり、石灰岩の採掘が盛んに行われセメントの主原料となって高度経済成長期以降の建設業界を支えた。同時に、養蚕の衰退に苦しんでいた秩父地域の経済も活性化した。
2月12日(土)、あしがくぼの氷柱を見た後、宝登山に向かう途中の道路から武甲山が近くに見えた。ここまで近くから見るのも、雪が残る山容を見るのも初めてのこと。
こちらは、信号待ちの際に、助手席の妻に撮ってもらった。武甲山からは北北北東あたりから。
さらに進んだところで車をとめて眺める(少しズーム)、セメント会社の煙突が印象的だ。
さらにズームで山頂辺りを記録。雪のおかげで階段状になった採掘跡がよく分かる。
階段状になるのは「ベンチカット」と呼ばれる採掘法によるもので、水平なベンチ (階段) で採掘する方法。一段の高さは10m。武甲山では3つの鉱山が稼動しており、取り残しの無いよう協調して同じレベルを保ちながら階段状に採掘しているようだ。
現在もセメントは作り続けられている。
武甲鉱業株式会社のWebサイトで採掘や選鉱について拝見した。外見だけではなく山の中もスゴイことになっている。山頂部で採掘した石灰岩は下部のベンチに設けられた立坑に投入された後、様々なサイズに小割されてベルトコンベアで排出される。山の中が工場だ。できることなら見学してみたい。
距離が一気に遠くなるが、(前回もとりあげた)宝登山山頂付近からの武甲山。秩父盆地からはどこからでも武甲山が見られるであろう。やはり武甲山は秩父のシンボルだと納得する。
そこからのズーム武甲山。右側(西側)も採掘されている。
ちなみに、2019年4月28日に秩父市の「羊山公園:芝桜の丘」からの武甲山を眺めた。
武甲山は山頂を中心に採掘が進み、標高は32m低くなり、山の姿は変わってしまった。でも、その歴史も含めて武甲山は地域を象徴する存在なのだろう。今は、採掘跡地緑化も進んでいるようだ。
---*---*----*----*-----*-----*-----*------*------*-----*-----*-----*----*----*---*---
秩父市内から三峯神社へ行くには、国道140号線から左折してダムの天端を通って坂道を上る(県道278号)。このダムは『二瀬ダム』という。
『二瀬ダム(ふたせダム)』は、1961年(昭和36年)完成。ダムによる人造湖は『秩父湖』。ダムの型式は重力式コンクリートダムとアーチ式コンクリートダムの利点を兼ね備えた「重力式アーチダム」であり、ダムの高さは95m。堤頂長は288.5m。
天端の道路から坂道の途中までは、信号機による交互一方通行となっている。
2月11日(金・祝)に、三峯神社から三十槌の氷柱へ行く途中、道路脇に車を止めてダムを見る。
冬なのでやはり秩父湖の水位は少ない。水面は凍り、前日の雪が白く残っている・・・ように見える。
天端からの風景も見たいものだが、道路幅は狭いし交互一方通行なので無理とあきらめる。青緑色の部分は非常用洪水吐(こうずいばき)の流入部。
国道に入って、ダムの堤体を眺める。雪が付いているということは、一般的なアーチダムと違って壁面が垂直ではなく斜めになっているということだな。
その昔、荒川は名前のとおり荒れる川として幾たびも氾濫を繰り返し、流域に被害を受けていた。昭和25年に荒川の治水を図るべく「荒川総合開発計画」が立てられ、埼玉県及び東京都の水害に備えることとなった、この計画の中心事業が二瀬ダムの建設だった。(二瀬ダム管理所のWebサイトなど参照)
ダムの下=谷底を臨むと左右から山が迫るV字渓谷ということを実感できる。かつて大雨はジョウロのように荒川に集まり、一気に下流に流れていったのだろう。
「ダム便覧」のWebサイトで、二瀬ダムのことを確認。このダムの洪水吐は、直接落下させるのではなく、空気中に飛ばし落下地点の水のクッションで弱める「スキージャンプ式」という。2本とも下部で傾いており右岸側に水が向くようにデザインされている。改めて画で確認、な~るほど!である。
氷・雪のおかげで洪水吐に水が流れているような雰囲気がある。
重力式アーチダムを見るのは初めて。調べてみると全国で12基しかない珍しい型式だという。
また奥秩父に行く機会があったら、管理所や秩父湖、支流の中津川にある滝沢ダムなども訪れたいものだ。
秩父地域の観光日記は、今回で終了。楽しく面白く有意義な観光だった。
◇2022年2月11日~12日 秩父観光散歩 まとめ
真冬だからこその「秩父観光」に行ってきた!
秩父1:三峯神社1 立地,三ツ鳥居,奥宮遥拝殿,随身門など
秩父1:三峯神社2 拝殿-本殿、摂末社、ご神木、他施設
秩父1:三峯神社3 大島屋テラス、遥拝殿絶景、その他
秩父2:三十槌の氷柱(みそつちのつらら)
秩父3:あしがくぼの氷柱(ひょうちゅう)
秩父4:和銅遺跡、聖(ひじり)神社
秩父5:宝登山のロウバイ、宝登山神社奥宮
秩父6:秩父のシンボル「武甲山」・「二瀬ダム」
冬の武甲山、寒々としてますね。
セメント会社は三社あるのですか?
当方は秩父セメントだけかと思っていました。
まぁ、地名が先にイメージを固定化させてい
ましたね。新潟県下はデンカセメントと、
明星セメントの二社が操業しています。
武甲山。何度か見ていますが、近くに行った
ことは無くて、いつも紹介のように遠巻きの
風景でした。なにか、面白い施設無いですか
ねぇ。
今回は雪の残る冬の武甲山が見られて良かったですよ。
「武甲山資料館」という施設があるようです。
一度行ってみたいと思いました。
罫の入っているタイプですね~。確かに。
1段高さが10mもあるのですか。
階段を上ることは不可能ですね。
そういえば、伊吹山や藤原岳もベンチカットになった部分があります。遠くからしか見たことがありませんが。
凍てついたダムは、寒そうですね。
ダム湖畔にも行ってみたかったですが、下流ではあの大きな氷柱ですから、寒いでしょうね。
次回とりあげる時のキャッチは“秩父のロゼッタストーン”にします。