4月6日(土)、二荒山神社を大鳥居から出ると、右手奥に門が見える。輪王寺『大猷院』とのことだが、大猷院のことはほぼ知らなかった。門越しには山しか見えず、何があるのか分からない。拝観券売場で簡単な話を聞き、ならば一応入ってみようと・・・そんな感じで観てきたのだが、行って良かった。とても魅力のある寺院だった。
大猷院(たいゆういん)は、遺言で自分を神として祀るようにと、日光山に霊廟(墓所)となる東照宮を造った家康公を尊敬していた(孫の)三代家光公が、遺言で死後も東照公のお側にいて使えるとし、日光山に墓所を設けたもの。(家光公以外の歴代将軍家の墓所は、東京の上野「寛永寺」と芝「増上寺」にある。)創建1653年。
●仁王門【重文】
最初の門は、短い石段を上った所にある黒と朱の仁王門。阿形と吽形の金剛力士像が待ち受ける。「阿吽の呼吸」はここから来ていると言われているが、それはさておき強い視線は何だか品定めをされているような気になる。
●水盤舎【重文】
仁王門をくぐると右手に、小さいけれども屋根は切妻・唐破風付きで、躯体の4隅は3本の石の柱が支えている独特な構造の建物。色使いも上から葵の紋が入る金と黒~極彩色~柱の白色と特徴的だ。水の引き方も面白い。
参道は長い石段へと続く。石段の隣には石灯籠が多数並んでいたが、江戸時代にここよりも上に行けない大名が献上したものだという。
●二天門(にてんもん)【重文】
石段の上には、日光山内で一番大きな門という二天門がどっしり。持国天(じこくてん)と広目天(こうもくてん)の二天を安置している。背後は風神と雷神。
陽明門とは異なり、彫刻は少ないし金使いも少ないけど、二層の組物の色使いだけで納得してしまう。
二天門をくぐるとまた石段になる。そのおかげで二天門を横から見ることができる。山麓と一体化した大猷院らしさを感じられるところでもある・・・とこの時は思った。
●鐘楼・鼓楼【重文】
二天門から階段を上った所に、右側に鐘楼、左側に鼓楼がある。東照宮のそれと比べると、高さは一層分低い感じで、色は全体的に黒が基調。まずは鐘楼。
鼓楼を横から見る。
●夜叉門【重文】
鐘楼と鼓楼の間を進み、石段を上ると夜叉門がある。夜叉は古代インド神話に登場する鬼神で、近くなった霊廟を守っている。
金色と深紅に緑色が入ることで、他の門とは違う佇まい。
ここには緑色の阿跋摩羅(あばつまら)、↓赤色の毘陀羅(びだら)、白色のケン陀羅(けんだら)、青色の烏摩勒伽(うまろきゃ)の四体の夜叉が安置されている。壁の彫刻も繊細だ。
●唐門【重文】
夜叉門の先には、左右に石灯籠が配され、短い石段の先に唐門がある。金が眩しく、入口の頭上には「白龍」の彫刻、唐破風の下には鶴の彫刻もあり、全体的にとても気品のある門だ。
大猷院のそれぞれの門は、必ず石段を上った先にある。下界から天海へと徐々に近づいていくことを意識させるようだ。そのために地形を上手く使っているわけだ。
●大猷院廟:拝殿・相の間・本殿【国宝】
唐門からは屋根続きで拝殿に入れる。権現造りで拝殿・相の間・本殿と連なる。輪王寺Webによると、『東照宮の権現作りをそのまま生かし、規模は小さくとも細部の技法に力を尽くした造りとなっている。東照宮が「権現造り」を中心とした神仏習合形式であるのに対し、大猷院廟は「仏殿造り」の純仏教形式となっている』とのこと。
拝殿の内部には、教科書などで見る狩野探幽(かのうたんゆう)の描いた唐獅子、天井には140枚の龍の絵、家光公が実際に着用した鎧など、目を見張るものばかり。
外から相の間・本殿を見る。別名「金閣殿(きんかくでん)」と呼ばれるのも頷けるものだ。
金と墨と深紅で、落ち着きのある造りになっている。
●皇嘉門(こうかもん)【重文】
大猷院廟を囲む塀を本殿の横から出ると、石段の先には皇嘉門。明朝様式の竜宮造りで、別名【竜宮門】と呼ばれている。この門から先は立入禁止で、奥の院・家光公の墓所がある。
大猷院は、家光公の祖父である家康公の東照宮を凌いではならないという遺言により、全体的に金と黒を使用し重厚で落ち着いた造りになっていた。とはいえ、目立たない部分には技巧が凝らされていて、個人的にはお気に入りの寺院になった。
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ところで、拝殿の中に入ってしばらくすると、僧侶による説明が始まったのが、大変興味深いものだったので、記しておく(しっかり記憶してないので、Web検索も参照したが、聞き間違いもあるかもしれない。その辺はご容赦を。)
・大猷院の中は(外も)金色で覆われており、京都金閣寺、平泉中尊寺金色堂と並んで三大黄金建築物とされが、こうやって中に入って座れるのは大猷院だけ。
・大猷院は、東照宮と異なりお寺。神社とお寺の区別は、天井に天蓋があるかないかで見分けられる。天蓋があればお寺。といって指差す天蓋は座っている私の真上にあって驚く。(家光公は神になってないので、神社ではない。とも分かる)
・天井には格子の中にそれぞれ龍が描かれているが、玉を持っているのが昇り龍(人々の願いの詰まった玉を持って天に上がる)。持ってないのが下り龍(天に願いを届けて戻ってきた(?))。
・夜叉門に祀っている烏摩勒伽(うまろきゃ)は、他では見られない全国でも珍しい仏様。烏摩勒伽の膝に象の飾りがあり、これが「膝小僧」の由来とされ、また、手に持っている弓矢が破魔矢の発祥となっている。
・破魔矢の正しい祀り方は、矢を上に羽根を下にすること。家族にうまくいかない事が続く時は、玄関で矢を外に向けて横に祀ると良い。
・一般的に、破魔矢は正月に購入し、翌年返しにいくが、当院の破魔矢は烏摩勒伽の矢にちなんだもので、返さず一生持っていられるもの。この昇り龍の破魔矢は3,000円。(お守りや縁起物などを滅多に購入することはないのだけれど、お気に入りになった大猷院の破魔矢なので・・・購入した。)
以上で、東照宮~二荒山神社~大猷院の日記を終わりとする。やはり時間(日数)がかかってしまった。
〈日光山内記録〉
東照宮:石鳥居・五重塔・表門・三神庫・神厩舎・鐘楼
東照宮:絢爛豪華『陽明門』
東照宮:唐門・眠り猫・奥宮
東照宮:神輿舎・銅燈籠・他
日光『二荒山神社』
必見!輪王寺『大猷院』