図書館で文庫本を借りて、主に通勤で読むという日常なので、文庫本は月に数冊は読む。主にサラッと読めるミステリーなどが多く、ハウツー本や難しいのは読まない。
先月、柊サナカ著『機械式時計王子の休日 千駄木お忍びライフ』を読んだのだが、普段気にすることのなかった時計のことで「そうなの~」と思うことが多く、ストーリーと併せとても面白かった。ちょっと時計の見方も変わったかも・・・。
主人公は時計店の娘だが、時計には全く無関心で知識もない。その娘に説明するシーンが随所にあるので、私にも分かりやすい。そこで「そうなの~」の例を後学のためにも幾つか記しておく。
◆クォーツ時計 〔第2章 水晶と機械と白い象〕より
水晶(クォーツ)は、一定の電圧をかけると、とても規則正しく振動する性質を持っていて、その振動を利用したのがクォーツ時計。
32,768Hzが水晶の振動で、この数字を2で割ることを15回繰り返すと1になる。それが1秒・・・。IC回路が水晶の振動を計算して、1秒の信号を割り出し、1秒分に達したら信号を送る。そうしてクォーツ時計は見えない時を計る・・・。
1969年(昭和44年)のクリスマス、セイコー「アストロン35SQ」のクォーツ腕時計登場は、数百年に1度の革命で、時計界は一変した。全世界の時計職人にとっては氷河期来襲くらいの大ショックだった・・・。
今では、1,000円の腕時計や100均でも時計が売られているのは、このセイコーのクォーツのおかげだな。当時のアストロンは約45万円でトヨタのカローラ相当額(Wiki)。その後急速なコストダウンが進むと共に世界に拡がったわけだ。
◆スプリングドライブ 〔第2章 水晶と機械と白い象〕より
構想から実現まで20年以上、現在セイコーが世界に誇る独自の機構、それがグランドセイコーの「スプリングドライブ」(2004年登場)。機械式時計とクォーツ時計のいいところを合わせ持って生み出された新しい時計。
ゼンマイがほどける力が発電ローターに伝わる(時計内で発電)。その電力がクォーツとICに伝わる。ICは磁力のブレーキをかけてローターの回転を一定に保つ。すると、針は究極のなめらかな動きをしながら、ほとんど狂うことのないクォーツの精度がだせる。電池交換はいらないし、時計の機構も楽しめる・・・。唯一無二の機構のようだ。
この本を読む一週間前くらいに、今年入社した同僚と飲みながら、私が購入した中古自動車のことを話題に(同僚は車好きなので)。それから、お金を得るにはお金を使うことも必要だ。みたいな話から、同僚は自分へのご褒美で頑張ってグランドセイコーを買ったことを話していた(この時は持ってなかった)。
この本を読んで、そういえばと改めて同僚と話をし時計を見たら、このスプリングドライブだった。購入価格も聞く・・・・・ということは、私の車の価格を聞きながら、自分の時計と同じくらいだと、同僚はほくそ笑んでいたに違いない・・・。
◆アストロラビウム・ガリレオガリレイ 〔第5章 幽霊時計と夏の夜〕より
(スイスの名門時計メーカー、ユリスナルダンによる「天文三部作」のひとつ。1985年)
この時計は天文時計で、長針と短針だけでなく、他に太陽の針、星の針、ドラゴン針と合わせて5本の針がある。これによって・・・・・という話もあるが、感心したのは4年に一度の閏年には例外ルールがあるという件。
基本は、西暦が4で割り切れるときは閏年。
例外は、西暦が100で割り切れるけど、400で割り切れない年は閏年ではない=平年。
つまり、1900年、2100年、2200年は閏年にならない。
(これを踏まえて)普通の時計では、4年に一度の閏年には対応できない。閏年になったら、持ち主が正しい日付に合わせなければならない。(31日周期の機械式時計なら年に5回の作業あり)。
しかし、永久カレンダーをもつこの時計はその必要がない。何故なら時計の中には100年で1周しかしない歯車が組み込まれ、なんと14万4千年分のカレンダーに対応しているという。
それでなくとも精密機械のかたまりのような機械式時計に、わざわざ100年周期の歯車を入れ、14万年以上対応させるなんて凄い。凄いけど・・・。
まぁそれが、本の中で時計師のセリフで何度も出てくる「時計にはロマンがある」「時計は美しい機会」なのだろうな。それと「時計はお守り」とも。機械式時計のこと知り、少し共感できるようになった・・・と思う。
それと、花の開花や閉花の時間を利用した『花時計』という存在を初めて知った。
例えば、ムラサキツユクサが咲いたら5時頃、チューリップは6時、マツヨイグサが咲いたら18時半頃とか。公園とかで、周りに花をあしらったモニュメントのような花時計ではない。
とはいえ、季節ごとに開花時間の異なる花を入手することが困難だろうな~。実際、そんな大変なことは普及しなかったようだ。