因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
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龍馬伝第20回『収二郎、無念』

2010-05-17 | テレビドラマ

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 平井収二郎(宮迫博之)は吉田東洋(田中泯)暗殺の下手人について厳しい詮議を受けるが、がんとして口を割らない(知らないし、やっていないのだ。白状しようがないではないか)。武市半平太(大森南朋)は山内容堂(近藤正臣)に収二郎の命乞いをするが、土佐藩の情勢は既に土佐勤王党には逆風に激変しており、収二郎は遂に切腹の沙汰となる。

  勝塾の資金が底を尽き、龍馬は勝麟太郎(武田鉄矢)に松平春嶽(夏八木勲)から千両の!出資を取り付けてくるように命じられる。福井城で春嶽にまみえた龍馬は、そこで熊本藩士横井小楠(山崎一)に出逢う。3月13日の朝日新聞土曜版「磯田道史の『その人、その言葉』」で、幕末維新期の優れた見識人として横井小楠のことを読んでから、龍馬伝にその人が登場するのを心待ちにしていた。小楠は豆を噛みながらにこりともせず、龍馬にアメリカの「デモクラチ―」について話す。龍馬がアメリカのプレジデントが民に決められることを知っているのに対し一瞬笑顔をみせる小楠だが、「時代の流れの中では、ひとりの人間など芥子粒のようなものだ」と冷徹に言い放つ。山崎一の巧みだが作りすぎない演技に引き込まれる。もっとこの人の考えを聞きたい。そしてそれによって龍馬がどんなふうに変化するのを見たい。

 龍馬と入れ違いに、土佐から兄の権平(杉本哲太)が勝塾に現れた。脱藩の罪を赦された弟を連れ戻すためだったが、龍馬を待つあいだ、なし崩し的に訓練をするはめに。勝塾が何をするところかすらわからないまま、一生懸命勉学や実技に励む姿、世界各国の旗を集める訓練で鬼教官佐藤与之介(有薗芳記)からみごと合格を言い渡され、訓練生から祝福されて、「みんなのおかげじゃき」と喜ぶ姿、、龍馬が皆から頼りにされていることを信じがたい表情で、「あいつなら、と言われている」と噛みしめる様子も実に微笑ましく、ほんとうにいい兄上だ。

 兄は「土佐に戻らなくてもいい、自分の決めた道をすすめ」と弟を励ます。龍馬は「10年後には堂々と土佐に帰れる男になります」と約束する。でもあなたはあと数年しか生きていないじゃないの、と思わず涙が。

 時代の流れが変われば、ものの見方も値打ちも変わる。しかしそれでも変わらないもの、変わってはならないものは何か。収二郎の無念、武市の苦悩にどんな意味があるのか。人の命が大切であることはいつの時代でも同じはずだ。収二郎の切腹を知らせる加尾の手紙に慟哭する龍馬に胸が痛む。

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