因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

国道五十八号戦線解散公演 『国道五十八号戦線異状アリ』

2010-12-10 | 舞台

*友寄総市浪脚本 谷賢一(DULL-COLORED POP 個人ブログはこちら)演出 公式サイトはこちら サンモールスタジオ 13日まで(1) 
 どちらが「アリ」で「ナシ」だったか、よくよく確認しないといまだに混乱するのは、自分がこの夏にやっとR58デヴューしたばかりなのに、今回が解散公演になってしまって、劇団や友寄総市浪に対して自分なりのイメージを持つに至らないからであろう。ご近所にやって来たと思ったらあっというまに引っ越していく人を呆然と見送るごとく、別れを惜しむほどの強い思い入れはないが、「劇団が解散する」ことに対して、しみじみとした気持ちになる。自分でも距離感を測りかねて、中途半端な思いで劇場に向かった。
 本日の「異状アリ」は、これまでの友寄の短篇作品3本に新作1本を加えたもの。

 舞台を客席が三方向から囲む作りに迷ったが、無難なところと判断して正面側に座った。アパートかマンションの一室。テーブルに椅子、ソファ、カセットデッキに写真立てと生活感や現実味の薄い感じだ。舞台奥にドアがあり、下手にもドアがあるがこれは枠だけで、抽象的というほどではないが、どこか浮遊した空気が漂う。

『さっき終わったはずの世界』 2010年、15minutes made Vol.8初演。
今日限りで地球の人間がすべて消え去るはずが、宇宙人側の手違いで無期限の延期となった。絶望から安堵、しかしいつかはやってくる終末に混乱するイケてないカップルと素っ頓狂な宇宙人のやりとり。
『テンパッてる奴』 2008年、ギリギリエリンギAnother Works vol.2初演。
客席が最も沸いたのがこの作品だ。客席の大笑いに舞台の俳優も勢いづく。
『三鷹の女』 2010年、エムキチビートひとり芝居プロジェクト「Fight Alone」初演。伊神忠聡ひとり芝居。病欠した同僚の代わりに深夜まで残業したのに、帰りの電車で恋人といちゃつく同僚に出くわし激怒する男。2人が降りる三鷹駅で自分も下車し、秘かにあとをつける。同僚の恋人は「糞みたいな美人」。わからなかったのは、「手塚治の『人間失格』が」という台詞があったこと。伊神が手にしているのはれっきとした太宰治の『人間失格』(集英社文庫)であり、まちがえたにしてはあまりにベタであるし、こんなふうに勘違いしている男ということなのか?→台詞は「テヅカオサム」でまちがいないことを確認しました。
『三鷹の男』 今回初演の新作。ハマカワフミエひとり芝居。『三鷹の女』で語られている、その女である。男とは彼女の恋人。三鷹の男編、女編がネガとポジだが、それが微妙にねじくれていて、どちらの話がほんとうなのかだんだんわからなくなる。いわゆる「ひとり芝居」というよりも、客席に向かって一方的に語りかける形になっており、三方を客席が囲み、しかも男編では照明が通常の舞台とは違い、俳優がというより、語る人その人自身が無残に晒される美しさがあり(書いていて自分でもよくわかっていないのだが)、これが友寄の「正真正銘の最後の作品」(公演チラシより)であることが、しんしんと骨身に堪えてくる。ほんとうにこれが最後になるのだろうか。

「異状ナシ」の観劇がこれからなので、今日の「アリ」について書くことにためらいがあり、気持ちがしゃんとしない。まだ2度めなのにこんな体験をするとは。これまでの寡聞を悔やむか、これはこれとして自分と劇団の出会いと別れの形と納得するか。次週まで持ち越しである。

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