因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

蜷川幸雄演出 小栗旬主演『カリギュラ』

2007-11-25 | インポート
*アルベール・カミュ作 岩切正一郎訳 蜷川幸雄演出 公式サイトはこちら シアターコクーン 30日まで そのあと大阪公演もあり
 上演前にパンフレットを買うのにこんなに長い行列を体験したのは、おそらく今回が初めてであろう。満席の上に3時間20分にも及ぶ長時間の舞台にも関わらず、立ち見もぎっしりの盛況だ。いま人気沸騰の小栗旬が主演する舞台への熱気は開幕前から凄まじい。

 小栗旬をみたのは2003年の『宇宙でいちばん速い時計』が初めてで、その翌月に蜷川演出の『ハムレット』でフォーティンブラスを演じたのをみた。前者は舞台ぜんたいがよく把握できず、後者は藤原竜也のハムレットがあまりに素晴らしく、その終幕に突然現れて物語を締めくくるというフォーティンブラス役は、あのときの小栗旬には荷が重すぎると感じた。この役は難しい。未熟なのはもちろんだが、いかにも「待ってました」的な空気も違うし、登場まで3時間も待ち続けるなど、心身をどう調整すればいいのか、ベテランでも悩むのではないか。その小栗旬が、いま堂々と『カリギュラ』の中心に立っている。あっと言う間に売れっ子の人気俳優になったこと、過密なスケジュールや、人気という移ろいやすい評価から逃れられない俳優業に苦しみながらも難解な戯曲に挑戦していることに、胸が熱くなる思いである。

 公演パンフレットによれば、演出の蜷川幸雄は若いときにカミュやサルトルやボーボワールを熱心に読んだ世代であるという。出演俳優の中にも30数年前に読みかじった、わけもわからずに読んでいたというエピソードの披露があり、ある世代にとっては知的好奇心を掻き立て、わかるかどうかは別として、カミュを読んでいるという格好だけでも…という実感、手触りをもつものであったらしい。

 話じたいを理解することはできなくても、小栗旬をみられたのなら充分に満たされるといっていいくらいの賑々しい観劇体験であった。彼による『ハムレット』が、自分のなかで俄に現実味を持ち始めた。それがいつになるか、どのような形で実現するのだろうか。

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4 コメント

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因幡屋さま、待ってました! 早速のレポートあり... (ふう)
2007-11-26 02:05:58
因幡屋さま、待ってました! 早速のレポートありがとうございます! 読みながらどきどきしました。そして…、うーっ、やっぱり観たかった~~~ 実はわたしは旬くんの舞台はまだ観たことがなく、ただ、初めて彼をTVドラマで見たとき(かなり昔の堂本剛くん主演の「夏の嵐(サマー・スノー?)」とかいうドラマで、旬くんは剛君の障害持ちの弟役でした)、なんて巧いんだろうと、ものすごく印象に残っていたのです。そしたらいつのまにか、あれよあれよというまにこんなすごい役者さんになってしまった。旬くんのハムレット、わたしも観てみたいです!
因幡屋さま、改めましてレポートありがとうございました!
これからも楽しみにしております!
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 ふうさま、コメントをありがとうございます。怜... (因幡屋)
2007-11-29 22:41:00
 ふうさま、コメントをありがとうございます。怜悧そうな顔立ちの少年が、いつの間にか男になっていた…という思いです。自分は小栗旬が出演したテレビドラマはあまりみたことがなく、映画ではこの夏公開の『キサラギ』が大当たりでした。満場の客席がこんなに笑いで盛り上がる体験も珍しく、ほんとうに楽しかった。でも以前に出演していた地味な作品を発掘して秘かに見てみたいなとも思っています。いつもブログをお読みくださいまして、ほんとうにありがとうございます。励みになります。これからもどうぞご贔屓に。
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はじめまして。 (ハルコ)
2007-11-30 19:45:13
はじめまして。
わたしも「カリギュラ」見てきました。
観劇後、数日間は舞台を思い出すだけで息苦しくなってました。
小栗旬君の舞台はさんまさんの「JOKER」、「お気に召すまま」に続いて3本目です。
「JOKER」でお風呂に入ってる間に洋服を隠されて、風呂おけで前を隠して出てきた少年が、立派になったなぁと。
「キサラギ」はホントに楽しい作品でしたね。

それでは、また遊びに来させていただきます。
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 ハルコさま、ようこそ当ぶろぐにお越し下さいま... (因幡屋)
2007-12-01 23:59:22
 ハルコさま、ようこそ当ぶろぐにお越し下さいました。コメントいただいて嬉しいです。ありがとうございました。自分は何年も経たのちの『カリギュラ』だったので、俳優というのは時を得て、ここまで成長するのかと驚きました。次にどんな舞台が来るのか、楽しみなような、怖いような。でもこんな気持ちにさせてくれる俳優と出会えるのは幸せですね。またお運びくださいませ。
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