因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

因幡屋12月のひとこと

2010-12-01 | インポート

劇団TAG Vol.4 『リタの教育』 富本牧子と有川博の2人芝居は今でも生き生きと蘇る。違う演出、座組みの舞台に心を切り替えるのはあんがいと勇気がいるもので、実はまだ迷っている。
国道五十八号戦線解散公演 『国道五十八号戦線異状ナシ×国道五十八号戦線異常アリ』(1) 自分はこの夏やっと同劇団デヴューをしたばかりなのに解散とは。こちらが感傷的な思い入れを抱く前に解散してしまうのも、自分が与えられた出会いと別れの形、距離の取り方を提示されたものと考える。
北京蝶々第15回公演 『あなたの部品 リライト』 
ブルドッキングヘッドロックvol.20 『嫌な世界』 去年からずっと気になっている女優津留崎夏子の本拠地の公演。
劇団印象突然番外公演 『空白(そらしろ)』 (1,2,3,4 5,6,7,8,9) 今年は日韓交流公演として2本の新作を楽しんだ。2005年、2008年と上演を重ねている作品を「突然番外公演」として再度お目見え。来年へのよいステップになりますよう。

 今年は公私ともにさまざまな変動があったが、ともかくも健康が守られ、劇場に通える環境が与えられていることに感謝したい。ずっと放置していた資料や本の整理をして、だいぶ落ち着いた。いろいろ発掘されるものがあり、なぜこの記事を取っておいたのか今や不明のもの、思いもよらないところで役立てることができたもの、自分がこれまで読んできたもの、持っていることを忘れて本棚に眠っていた本などなど、久しぶりの再会を喜ぶとともに、自分はどんな本を読んできたのか以上に、「読んでいなかったのか」に気づかされて、不勉強の反省しきり。

 『テネシー・ウィリアムズ回想録』。題名の通りテネシー・ウィリアムズ本人が自分のこれまでを書きつづったものだ。時系列に記されておらず、過去の記述の中に突然彼のいまの気持ちが割り込んできたりして面食らうのだが、ウィリアムズその人が直に語りかけてくるような感覚にとらわれて不思議な気持ちになる。因幡屋12月のひとことはこの回想録終盤、みずからが「泥酔時代」と呼ぶ60年代、ある作品が初日を迎えたときのこもごもに続いて、堪え切れなかったのか「ああ、ちくしょう、けさはなんて人恋しいんだ」と絞り出された言葉の後半からいただきます。

「だがしかし、私の人生はほんとうにすばらしく、そしてまたひどいものだった。泣き言を言ってはいけない、そうでしょう?」

 「そうでしょう?」と問いかけられたからには答えなければならない。泣き言は、たまにはいいかもしれないけれど、言ってばかり、言いっぱなしではいけませんね。わたしはそう思います。答を返しても相手はもうこの世の人ではないのに、回想録や戯曲を読み返しながら、その人がいよいよ近く感じられるようになった。

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