30年来の憧れの岩壁、北岳バットレス。
やっちゃいました!
標高3192m。
日本を代表する、アルパインクライミングのビッグルート。
よもやここを登る日が来るとは。。。
まだチョット実感が湧いて来ないけど、僕の人生の中のビッグイベントの一つでしょう!
9月15日(火)
先週の予定が雨で延期となり、15、16日で決行と決まった。
ベテランガイドのEさんをリーダーとして、クライマーYさんと僕の3人パーティーだ。
初日は北岳への入山のみ。
芦安の駐車場に車を入れて、乗り合いタクシーで北岳の登山口広河原へ。
ここで他の二人と落ち合い、約2時間の登りで北岳の中腹(2230m)にある白根御池小屋へ向かう。
今日はここで一泊。
北岳は6月に来たばかりなので、勝手知ったるルートです。
夕食後、明日の本番に向けた簡単なミーティングを行う。
午後には雨になるという予報が非常に気掛かりだ。
20時就寝。
9月16日(水)
午前2時半起床。
簡潔に身支度を整え、朝食にジェルをひと飲みする。
真っ暗な中、ヘッドランプの明かりだけを頼りに出発。
いよいよこの日を迎えたんだなと腹を括る。 長い一日が始まった。
二俣から大樺沢を登り、バットレス沢出会いで一般ルートを外れ道なき道を入ってゆく。
歴代のクライマー達が付けた踏み跡だ。
5:30 bガリー大滝下部取り付きに到達。ここまででも結構キツイ登りです。
夜が明け始める。心配した寒さは無い。高曇りで直ぐに雨が降り出す感じではない。
北岳バットレスの構成は、下部に2ピッチの岩壁帯、その上部にメインとなる第4尾根が8ピッチで頂上直下の稜線まで突き上げている。(1ピッチとは、50mのロープ一回で登れる高度差のこと)
下部岩壁帯には何本かのルートがあり、我々はbガリー大滝ルートからアプローチする。
クライミングの装備を整え、登攀開始。
まづはウォーミングアップといったところ。
焦るなよ、一つ一つの作業を確実にこなせよ、と自分に言い聞かせる。
ここから先は一つ間違えば確実に逝けます。。。
バットレスの岩に始めて触れた。思いのほか手に馴染む感触が伝わってくる。
リードするEガイド。朝焼けで岩がピンクに染まっている。
2ピッチのクライミングでbガリー大滝の上部に出る。
そこから第4尾根取り付まで、クライミングシューズを履いたまま水平移動。
途中のcガリーのガレ場横断は落石の巣だ。サッと通過する。
6:15 第4尾根下部取り付き点のテラスに到達。
雑誌のグラビアや、遠く登山道から眺めるだけだったバットレスの、そのど真ん中に僕は今居る。
ここから稜線のトップアウトまで一切気の抜けない連続したクライミングとなるため、最後のレストポイントだ。
握り飯一個を食べる予定だったが半分しか喉を通らない。頂上で摂る予定だったジェルを流し込む。
とにかく途中でバテる訳にはいかないのだ。
これは朝一で通過してきたbガリー、cガリーの上部。
6:30 第4尾根クライミング開始。
Eガイドがダブルロープでリードし、僕とYさんが個々にロープを付けて登る方式。
ビレイ(確保)はピッチ毎に交互に担当。
第1ピッチ、いきなりツルンとしたスラブで一手目からホールドもステップも無い!ってな感じで開始ですが、そこはEさん、スリングを伸ばしておくから使っても良いよって。
思わず一手持って左足を左方の壁に押し当てたら、なんか今回新調したクライミングシューズのフリクションが結構良くて、これなら行けるわって感じで、この先お助けスリング無しで突破できました。
クライミングが始まってしまったら、あとは冷静に行動するのみ。
カンテあり、スラブあり、凹角ありと、次から次へと変化に富んだピッチが続く。
全体的にクラックやホールドが多いので、難しい!って感じはさほど無かったが、なんたって標高3000mの大岩壁ですから、その高度感は超怒級。
普通の人の感覚なら恐怖で動けなくなるところでしょうが、クライマーって人種は爽快感を感じちゃうんですよね。
楽しそうに見えますが、緊張感もMaxです。
順調にピッチをこなし、最大の見せ場?第5ピッチ終了点からの20mの懸垂下降。
次の第6ピッチを見上げたところ。スラブの先はカンテ。かなり楽しいです。
この上部が2010年に大崩落した地点(枯れ木テラス)だそうです。
枯れ木テラスから城砦ハングまでは水平トラバースします。スラブはかなり難しそうですが、リッジを掴んで腕力横移動すれば難しくありません。
さっきの懸垂下降点に後続のパーティーが到達したようです。岩峰の先ッちょに人が居るの分かるかな?
頂上もだいぶ近づいてきました。
最終第8ピッチのハング気味のチムニーもムーブ解決で無事突破。
抜けたところでマルチピッチクライミングの終了点に到達です。
フーッ
安堵感が半端じゃなかったよ。
ここから稜線まではコンテニュアンスで確保しながら30分ほど岩場歩き。
簡単な所ですが、やはりこけたら死にます・・・
8:50稜線に到達!
北岳バットレス 完登しました!!!
下部取り付きから3時間20分でトップアウトです。けっこう早いんじゃないかな。
ずっと緊張しっぱなしで時間の感覚はありませんでした。
本来であれば稜線伝いに往復40分ぐらいで北岳の頂上を踏む訳ですが、雨の降り出しが怖いので登頂は無しにしました。
稜線から見た北岳頂上です。僕は6月に登頂済み。
さあ、八本歯経由で広河原まで、大樺沢を一気に下ります。
これがまた長い!
途中で今登った第4尾根が良く見えます。
これを登っちゃったんですね。。。
とにかく延々と下ること4時間。
13時に広河原に無事帰着。
終わりました。
ハードな一日でしたが、あまり疲れを感じなかった。
歩こうと思えば、まだ2、3時間は余裕で歩けそうです。
多分ですが、あまりの緊張の連続で、脳の中が変になってるんだと思います。
実際のところ、「やったぜ!」っていう達成感は半端無いんですが、「嬉しー!」ってなHappy感はあまり湧いてこないんですよね。
これがクライミングという超危険なスポーツのもつ特殊性かもしれません。
実際、クライマーと言われる人たちに共通するのは、危険や不確実な物、無駄な動作に対する感覚が極めて鋭いし、そうじゃないと長生きできないってことを知っているんだと思います。
下山中の一般登山道を歩いていても、僕自身、ずっと妙な集中力とか緊張状態が続いてました。
確かに楽しく歩いている一般登山者側から見ると、クライマーって変なオーラ出てますものね。その理由が分かった気がします。
危険極まりない岩壁を登ることの意味って、何なんでしょうね?
芦安の駐車場に着いたタイミングで雨が降り出した。
僕は運転席に座ったまま、長い時間、雨の打ちつけるフロントウィンドウをボーっと見てた。
疲れと眠気と強烈な緊張感からの開放か、頭の中が真っ白くなる感覚でした。
ともあれ、北岳バットレス クライミング やっちゃいました!
やっちゃいました!
標高3192m。
日本を代表する、アルパインクライミングのビッグルート。
よもやここを登る日が来るとは。。。
まだチョット実感が湧いて来ないけど、僕の人生の中のビッグイベントの一つでしょう!
9月15日(火)
先週の予定が雨で延期となり、15、16日で決行と決まった。
ベテランガイドのEさんをリーダーとして、クライマーYさんと僕の3人パーティーだ。
初日は北岳への入山のみ。
芦安の駐車場に車を入れて、乗り合いタクシーで北岳の登山口広河原へ。
ここで他の二人と落ち合い、約2時間の登りで北岳の中腹(2230m)にある白根御池小屋へ向かう。
今日はここで一泊。
北岳は6月に来たばかりなので、勝手知ったるルートです。
夕食後、明日の本番に向けた簡単なミーティングを行う。
午後には雨になるという予報が非常に気掛かりだ。
20時就寝。
9月16日(水)
午前2時半起床。
簡潔に身支度を整え、朝食にジェルをひと飲みする。
真っ暗な中、ヘッドランプの明かりだけを頼りに出発。
いよいよこの日を迎えたんだなと腹を括る。 長い一日が始まった。
二俣から大樺沢を登り、バットレス沢出会いで一般ルートを外れ道なき道を入ってゆく。
歴代のクライマー達が付けた踏み跡だ。
5:30 bガリー大滝下部取り付きに到達。ここまででも結構キツイ登りです。
夜が明け始める。心配した寒さは無い。高曇りで直ぐに雨が降り出す感じではない。
北岳バットレスの構成は、下部に2ピッチの岩壁帯、その上部にメインとなる第4尾根が8ピッチで頂上直下の稜線まで突き上げている。(1ピッチとは、50mのロープ一回で登れる高度差のこと)
下部岩壁帯には何本かのルートがあり、我々はbガリー大滝ルートからアプローチする。
クライミングの装備を整え、登攀開始。
まづはウォーミングアップといったところ。
焦るなよ、一つ一つの作業を確実にこなせよ、と自分に言い聞かせる。
ここから先は一つ間違えば確実に逝けます。。。
バットレスの岩に始めて触れた。思いのほか手に馴染む感触が伝わってくる。
リードするEガイド。朝焼けで岩がピンクに染まっている。
2ピッチのクライミングでbガリー大滝の上部に出る。
そこから第4尾根取り付まで、クライミングシューズを履いたまま水平移動。
途中のcガリーのガレ場横断は落石の巣だ。サッと通過する。
6:15 第4尾根下部取り付き点のテラスに到達。
雑誌のグラビアや、遠く登山道から眺めるだけだったバットレスの、そのど真ん中に僕は今居る。
ここから稜線のトップアウトまで一切気の抜けない連続したクライミングとなるため、最後のレストポイントだ。
握り飯一個を食べる予定だったが半分しか喉を通らない。頂上で摂る予定だったジェルを流し込む。
とにかく途中でバテる訳にはいかないのだ。
これは朝一で通過してきたbガリー、cガリーの上部。
6:30 第4尾根クライミング開始。
Eガイドがダブルロープでリードし、僕とYさんが個々にロープを付けて登る方式。
ビレイ(確保)はピッチ毎に交互に担当。
第1ピッチ、いきなりツルンとしたスラブで一手目からホールドもステップも無い!ってな感じで開始ですが、そこはEさん、スリングを伸ばしておくから使っても良いよって。
思わず一手持って左足を左方の壁に押し当てたら、なんか今回新調したクライミングシューズのフリクションが結構良くて、これなら行けるわって感じで、この先お助けスリング無しで突破できました。
クライミングが始まってしまったら、あとは冷静に行動するのみ。
カンテあり、スラブあり、凹角ありと、次から次へと変化に富んだピッチが続く。
全体的にクラックやホールドが多いので、難しい!って感じはさほど無かったが、なんたって標高3000mの大岩壁ですから、その高度感は超怒級。
普通の人の感覚なら恐怖で動けなくなるところでしょうが、クライマーって人種は爽快感を感じちゃうんですよね。
楽しそうに見えますが、緊張感もMaxです。
順調にピッチをこなし、最大の見せ場?第5ピッチ終了点からの20mの懸垂下降。
次の第6ピッチを見上げたところ。スラブの先はカンテ。かなり楽しいです。
この上部が2010年に大崩落した地点(枯れ木テラス)だそうです。
枯れ木テラスから城砦ハングまでは水平トラバースします。スラブはかなり難しそうですが、リッジを掴んで腕力横移動すれば難しくありません。
さっきの懸垂下降点に後続のパーティーが到達したようです。岩峰の先ッちょに人が居るの分かるかな?
頂上もだいぶ近づいてきました。
最終第8ピッチのハング気味のチムニーもムーブ解決で無事突破。
抜けたところでマルチピッチクライミングの終了点に到達です。
フーッ
安堵感が半端じゃなかったよ。
ここから稜線まではコンテニュアンスで確保しながら30分ほど岩場歩き。
簡単な所ですが、やはりこけたら死にます・・・
8:50稜線に到達!
北岳バットレス 完登しました!!!
下部取り付きから3時間20分でトップアウトです。けっこう早いんじゃないかな。
ずっと緊張しっぱなしで時間の感覚はありませんでした。
本来であれば稜線伝いに往復40分ぐらいで北岳の頂上を踏む訳ですが、雨の降り出しが怖いので登頂は無しにしました。
稜線から見た北岳頂上です。僕は6月に登頂済み。
さあ、八本歯経由で広河原まで、大樺沢を一気に下ります。
これがまた長い!
途中で今登った第4尾根が良く見えます。
これを登っちゃったんですね。。。
とにかく延々と下ること4時間。
13時に広河原に無事帰着。
終わりました。
ハードな一日でしたが、あまり疲れを感じなかった。
歩こうと思えば、まだ2、3時間は余裕で歩けそうです。
多分ですが、あまりの緊張の連続で、脳の中が変になってるんだと思います。
実際のところ、「やったぜ!」っていう達成感は半端無いんですが、「嬉しー!」ってなHappy感はあまり湧いてこないんですよね。
これがクライミングという超危険なスポーツのもつ特殊性かもしれません。
実際、クライマーと言われる人たちに共通するのは、危険や不確実な物、無駄な動作に対する感覚が極めて鋭いし、そうじゃないと長生きできないってことを知っているんだと思います。
下山中の一般登山道を歩いていても、僕自身、ずっと妙な集中力とか緊張状態が続いてました。
確かに楽しく歩いている一般登山者側から見ると、クライマーって変なオーラ出てますものね。その理由が分かった気がします。
危険極まりない岩壁を登ることの意味って、何なんでしょうね?
芦安の駐車場に着いたタイミングで雨が降り出した。
僕は運転席に座ったまま、長い時間、雨の打ちつけるフロントウィンドウをボーっと見てた。
疲れと眠気と強烈な緊張感からの開放か、頭の中が真っ白くなる感覚でした。
ともあれ、北岳バットレス クライミング やっちゃいました!