【長さ70cmのテストピース。両端は三つ編み+ダブルラインループ。これを20組近く作りました。】
【一方を固定、反対側に20kgのはかりを引っ掛けて切れるまで引っ張り、目盛りを読む。】
PEラインについては、細いのから太いのまで色々な釣りで使い込んでいるので、付き合い方は大体分かっている。
でも、ナイロンラインでのライトタックルとなると10年振り位なので、最近のナイロンラインの性能はよく知りません。
目下、伊東ではワラサが好調だけど、僕にとってはナイロンラインへの興味の方が勝った。
僕は、基本知りたがり屋。興味が沸くと放置できません。
実際のところどうなのよ? ささやかな実験をしてみました。
先日、「計る事がマイブーム」って書いたけど、魚のサイズやライン強度など、実際に計ると実にスッキリするんですよね。思い込みや誤解、迷いが払拭されます。
その後は毎度計らなくっても、重量の推定とかノットの信頼度などに自信が持てます。
早速、テスト用に新品のナイロンラインを買ってきた。
IGFA規格の30Lbクラス。 製品名は○○○・・・。某有名メーカーの普通に手に入る一品です。テスト用なので150mの単品を購入。
僕は初めて手にする製品ですが、どちらかと言うとパリッとした硬めのタイプです。
試してみたいのは、直線強度、結束強度、そして耐久性だ。
実験方法は、全長70cmのテストピースの一端を固定、もう一端を20kgのバネばかりで引っ張り、目盛りを読みながら破断するまで徐々に引っ張るという原始的な方法。
だいたいの傾向が分かれば良いので、目盛りの読みは0.5kg単位とした。ゆっくりと引っ張るので目盛りはちゃんと読めました。
テストピースの両端は、三つ編みでダブルラインによるループを作った。三つ編みは15回で3~4cm。実戦よりもやや少な目の回数です。ダブルラインの長さは7~8cmぐらい。
実験1 直線強度
新品の状態のテストピースを使って、3回破断実験してみた。
1回目 14.5kg ライン中央部で破断。
2回目 14.5kg ライン中央部で破断。
3回目 14.5kg 三つ編みの根元で破断。
3回ともに15kg直前でバシッと切れました。
ライン強度30Lbの表示どおり、それ以上でも以下でもなく強度は綺麗に出ているようです。少なくとも、新品のラインならギリギリのファイトに耐えうる直線強度が期待できそうですね。
また、実際の使用より少なめに編んだ三つ編み部分は、何ら問題ありませんでした。少なくとも15回の編み込みでも大丈夫な事がこのテストで同時に分かりました。
実験2 耐光性
ナイロンは紫外線が大敵。これはよく言われることです。以前の製品よりもUV対策は進んでいるそうですね。
調べてみたら、10時間の紫外線暴露(晒すこと)で、強度が50%低下するというデータも見つかった。店内に陳列中の蛍光灯でも劣化は進むそうな。ホントだとしたら怖いですね。
テストピース3本を、家のベランダで直射日光に6時間晒してたうえで、直線強度を測ってみた。
1回目 14.5kg ライン中央部で破断。
2回目 14.5kg ライン中央部で破断。
3回目 14.5kg ライン中央部で破断。
ライン強度の低下は見られませんでした。さわった感じも特に変化無しです。
少なくとも、丸一日使った位では紫外線による強度劣化は問題無さそうですね。
さらに長時間、長期間のでの影響は不明ですが・・・
【写真は吸水時の破断状況。ラインの中央部で切れた。ちょっとビックリな結果が・・・】
実験3 吸水性
ナイロンが吸水性を有しているのは素材特性の一つだ。吸水すると強度が低下し、逆にしなやかさが増すとのこと。
紫外線と同様に、6時間水に漬けた後に破断実験をしてみた。
水から上げたラインは、しっとりとして実にソフトな手触りに変わっている。 まったく別物です。
1回目 11.5kg ライン中央部で破断。
2回目 13.5kg ライン中央部で破断。
3回目 10.0kg ダブルライン部で破断。
新品のラインを僅か6時間水に漬けただけで、ライン強度は最大31%低下しました!
チョット衝撃的な結果ですね。
6時間目だけの計測なので、経過時間と強度低下スピードの関係は分かりませんが、強度が劇的に低下するのは確かなようです。
釣りで使用するラインが水に弱いって、、、 何か釈然としませんが、事実のようです。
6時間という時間設定は、正直1日の釣行時間中ぐらいは変化無いだろうという期待を込めての設定でしたが、甘くは無いようです。
一日の釣りが終わってタックルを水洗いしたまま仕舞うってのは、どうなんでしょう?
保管時の湿度の影響も気になりますね。
いずれにせよ、ナイロンラインでは、PEのように表示強度ギリギリのファイトは不可能ということですね。
実験4 結節強度(ループ to ループ)
クランキングリーダーにメインラインを接続する際、ループ to ループで接続する。
僕はこのループ to ループという接続方法の信頼度が、いま一つ把握できていなかった。特に2回、3回と回すことがあるが、本当に必要なのか・・・? さっそく試す。
漁師仕掛けによく登場するピンクのより紐(あれ何て言うのかな?)を相手側ループとし、それにダブルラインのループを、シングルループとダブルループで接続して引っ張り試験を行った。
シングルループ時 14.5kg メインラインが破断。
ダブルループ時 14.0kg メインラインが破断。
ループ to ループの結束部は何ともありませんでした。輪っかくぐりは1回でも問題無さそうです。
ループの相手側を、ピンク紐からスナップスイベルのリング側に変えてみました。
シングルループで3回実験しましたが、やはり結束部は問題なく、メインラインが切れました。
ループ to ループという結束方法は、ライン強度をほぼ100%出現できる様です。信頼性は高そうですね。
予定外の出来事も。。。 3回の実験のうち一回、ラインが破断した衝撃で頑丈なスナップが開いてました。
スナップは想定された方向(引っ張る方向)に対しては充分な強度があるようですが、変な方向の力が作用すると開いちゃいますね。この現象は実際の釣りを通し経験的に知ってましたが、図らずも今回の実験でも再現されちゃいました。
【ループtoループの破断状況。ノットはライン強度に影響を与えなかったようだ。】
実験5 結節強度(クリンチノット)
ナイロンラインは結束部の強度低下が問題視される。ノットの中で締め込まれる力が1点に集中すると、その箇所でラインの断面が減少して切れてしまうようです。
よく使うクリンチノットで結束部の強度実験を行ってみました。
撚りの回数を5回として、破断実験です。
1回目 10.0kg ノット部で破断
2回目 10,0kg ノット部で破断
3回目 10.5kg ノット部で破断
見事に結束部が弱点となりました。
【シングルクリンチでは簡単に切れてしまう。ノットの選択は慎重に。】
実験6 結節強度(ダブルクリンチノット)
クリンチノットの改良版で、結束部への負担が低減されるノットです。
1回目 15.0kg ノット部で破断
2回目 13.0kg ノット部で破断
3回目 12.0kg ノット部近くで破断
ウーン、バラつきが出ました。
1回目はライン強度の100%が出現してます。これはこれで凄いですね。
ダブルクリンチにすることで、結束部強度は相当UPしますが、ノットの出来具合によって強度にバラツキが出やすいという事でしょうか。
ノット作成は要注意ですね。
今回の実験は、僕の興味本位で行ったものです。実験方法も簡易的なものなので、数値の信頼性は?ですが、傾向ぐらいは見えたのではないかと思います。
また、ここで現われた問題点を解決した製品もあるかも知れません。
良い製品情報があったら教えてくださーい。(願)
過去にもノットの実験など色々やってみました。まだまだ調べてみたい事ありますねぇ。
今回の結論としては、
ナイロンラインを釣りで使用する以上水と太陽は避けられないのだから、ライン強度の問題を織り込んだゲームを考える必要があること。(50Lbでも、80Lbでも同じ事)
少なくとも、30Lbクラスのラインを1シーズン使い込むのは少々危険。安いラインですからこまめに巻き変えましょう。
ノットは種別と作り方次第で、強度が大きく変わること。(当たり前でしたね・・・)
こんな所でしょうか。