馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

子牛の肋骨骨折による気管狭窄

2018-05-17 | 牛、ウシ、丑

生後数週の黒毛和種子牛が呼吸が苦しくて、喘鳴がある、ということで来院。

胸部のX線撮影で、

胸腔の入り口で気管が狭窄している。

しかし、肩関節と重なってわかりにくいので・・・・

抱えて倒して、左右の前肢をできるだけ前へひっぱって撮影した。

どうやら第一肋骨が折れていて(矢印)、その部分で気管が狭窄している(矢頭)。

分娩時に肋骨が折れて、骨折部が骨増勢したことで気管が圧迫されているのだろう。

左右を確認することが大事なので、仰臥でも撮影してみた。

が、判然とはしない。

右から左方向で撮影した。

フラットパネル(アナログXrayやCRではカセット)から距離がある手前側(この場合は右側)肋骨は拡大されて写っている、はず。

気管の内視鏡検査もして、右よりから気管がつぶされているらしい、ということになった。

                   -

呼吸が苦しくて、痩せて、増体も遅れているので、あまり時間をおかないほうが良い。

数日後、右の第一肋骨の摘出手術を行った。

(簡単じゃないよ!!)

呼吸は楽になった。

橈骨神経麻痺がおきたが、数日の経過で回復した、とのこと。

                   -

子牛の分娩時の肋骨骨折による気管狭窄は、ときどき起こるらしい。

うちでは手術したのは2頭目。

症例報告も出てはいるが、育たない弱い子牛としてあきらめられている例が多いのではないだろうか・・・・

                /////////////

寒さがなくなった、と思ったら、もう初夏の様相。

ことしはGWから天気がパッとしなくて、暑くもなく、寒くもなく、虫もいない良い季節が無しに通り過ぎてしまいそうだ。

 

 



8 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2018-05-17 07:34:43
 大人しく撮影させてくれたのでしょか?だっこして?
 人為的な原因による可能性もありますか?痩せてくるのは呼吸が正常でないための栄養とかエネルギー不足か、哺乳不良か、またはどっちもでしょか?この場合は骨折の治療するとまだ追いついていけそうでしょうけど。
 くっつけるのではなく、摘出となるのですね。治療を依頼するかどうかは経済的に釣り合うかどうかでしょか?この子牛はラッキーにも治療の場に運ばれてよかった。順調に成長してほしいです。
 あら、ここまでは残念な天候だったのですね。ご自愛なさってくださいませ。
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Unknown (zebra)
2018-05-17 07:47:36
第二肋骨以降も倒れたようになっていますね。
これが胸郭が捩れたものか若木骨折しているのか判りませんが、傘の骨が裏返ったみたいになって胸郭をうまく支えられるかどうか一抹の不安はあります。
症例報告にもあったと思いますが、結局飼養管理が難しいくらい胸郭が非常に薄い個体に成長する可能性もあると思います。
この辺を飼養者がどう考えるかでしょうね。
呼吸に異常が見られなくても何と無く元気がなくて心臓拍動が触知できるパターンは多くの場合左右肋骨が倒れこんで胸郭が狭くなっていると思いますよ。
非常に多いです。
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Unknown (piebald)
2018-05-17 20:37:22
虫のいない時期。
かけがえのない時期ですね。
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>zebraさん (hig)
2018-05-17 20:58:18
分娩との関係とか、血統背景とか、誰か調べてくれませんかね。
画像診断もまだ工夫の必要がありそうです。CTの普及は現実的ではないでしょうから、x線撮影による診断をまず可能にしたいところです。
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>piebaldさん (hig)
2018-05-17 21:00:25
今年はハエが出てくるのが早いようです。
と言っても、もう5月も半ばすぎですね。こんな天気が悪い5月もめずらしいです。
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>はとぽっけさん (hig)
2018-05-17 21:03:31
まだ50kgもない子牛なので、抱えて倒して押さえつけられます。
呼吸が苦しくて努力性なので、酸素分圧も低いでしょうし、カロリー消費も激しいでしょうし、哺乳も充分にできないのかもしれません。
折れていることより、骨癒合しようとして骨増勢することで狭窄しているように思います。
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Unknown (Green)
2018-05-19 17:42:00
遭遇し、レントゲンで確定診断したことがあります。生後数日後からの時間の経過に伴う喘鳴が主訴でした。
とてもじゃないけど吸入麻酔なしではできない手術だったので、二次診療施設に手術をお願いしたかったのですが、場所的に難しいとのことで、様子見を勧められました。だめもとで自分でやろうかと考えもしましたが、道具、施設、技術を考えると無謀すぎるから諦めた経験があります。
その後ですが、成長に伴い気管も太くなっていき、喘鳴は改善し、わからないくらいになった症例となり、このまま普通に育つかと期待しましたが、結局半年くらいたつと関連するかしないかわかりませんが、慢性鼓腸になり、成長不良となりました。
手術、してほしかったなぁ。と、思っています。
診断しても治療できないのは残念です。
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>Greenさん (hig)
2018-05-19 20:59:28
気管だけでなく、食道も狭窄することがあるようです。それでゲップできなくて鼓張症になるのでしょうね。

うちはプロポフォールで麻酔維持しますが、キシラジンでも大丈夫だという症例報告もあります。牛は縦隔がしっかりしているので、開胸手術になっても反対側の自発呼吸が機能するのだそうです。
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