生後数ヶ月までの子馬の駆虫で、もっとも重要なのは馬回虫の駆虫かもしれない。
回虫は虫体が大きく、ときには小腸の中で食べたもの以上の容積を占めるほどになってしまう。
そして、小腸を閉塞させたり、重積を起こす原因になる。
回虫が大量寄生している子馬を駆虫すると、死んだ 回虫が小腸に詰まって小腸閉塞を起こしたりもする。
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8月になってイベルメクチンで駆虫した子馬が1週間後小腸穿孔で死亡した。
剖検すると小腸の中でも、腹腔内でも回虫は生きていた。
イベルメクチンは・・・・効かなかったのだ。
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5月生まれで、すでに3回イベルメクチンで駆虫している子馬を小腸閉塞で開腹手術した。
かなりの量の回虫が小腸内に入っていた。
空腸を切開して排泄させた回虫はまだ元気よく生きていた。
大きい回虫も目で見えるかどうかの小さい回虫もいた。
イベルメクチンは・・・・効かなかったのだ。
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腸内にいる線虫だけでなく、体内移行中の線虫も殺せるイベルメクチンの利点はすばらしい効果を挙げてきた。
かつては、馬を解剖すると多かれ少なかれ腸間膜動脈根部には円虫による血栓があったものだ。
しかし、イベルメクチンによる駆虫の普及は寄生虫動脈瘤をめったに見られなくした。
ただ、イベルメクチンだけに頼った駆虫プログラムは、イベルメクチンに強い寄生虫を選択的に残してきてしまうのかもしれない。
イベルメクチンを多く使い、駆虫を徹底してきた牧場ほど、その傾向が進んでいる可能性がある。
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われわれ獣医師も駆虫プログラムを作って指導してきたし、
これからも効果があがる駆虫プログラムを推奨していく責任がある。
しかし、そのためには何種類かのプログラムを虫卵検査をしながら試していく必要が出てきたようだ・・・・・
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洗面器(かおを洗う器ではありません;笑)に入れた回虫が(左)、
うにょうにょ泳いでいるうちに整列するのはなぜでしょう?(右)
私は、単に虫体の硬さと動きのせいだと思うのですが、別な答えを知っている人は教えてください。
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夜中に手術を終えて帰っての夕食は、素麺でした。いや、ホント。
夢の島のハエは殺虫剤が効かないと聞いたことがあります。馬の虫除けも効果が薄れるのでしょうか。
放牧が感染機会になるのは確かです。子馬は母馬からも寄生虫感染します。ですから全頭一斉の駆虫が望ましいのですが、イベルメクチンで徹底して駆虫してきた牧場ほど、イベルメクチンが効かない回虫を選抜してきたのかもしれません。
われわれ獣医師もイベルメクチンを過信していたのかもしれません。
子馬の線虫類(円虫・回虫・糞線虫)の駆虫をイベルメクチン(エクイバラン・エラクウェル・ノロメクチンなど)だけに頼っているなら、回虫が駆虫されているか気をつける必要があるかもしれません。
ピランテル(ソルビー)かベンダゾール(フルモキサール)などを併用していった方が良いかと思います。
吸血虫も同じ虫除け剤を使い続けると(海外から取り寄せたスポットオンタイプ)1年目は効果てき面でしたが翌年からはあまり効きませんでした。気のせいかもしれませんが私なりに耐久性のある虫が生き残ったからかと思っています。虫に合わせて薬も多様化して、数種類の薬をローテーションで使っていけるといいのでしょうか。
あと、草地に長期間放牧されていると寄生虫が付きやすいとかは考えられないでしょうか。うちも含めて厩舎飼いの馬の仔は駆虫をしても虫を見ることはまずないのですが、以前牧草地で放牧されていた馬の仔を買ってきたら多くの虫が出てきました。犬でも毎日草地で遊んでいる犬の仔からは虫が出ますが、草地で遊ばせたことのない犬の仔からは出ません。単に偶然や飼育管理の違いだけなのでしょうか。
寄生虫は興味深いです。
駆虫薬を変えたほうが良いですね。先日の子馬にはフルモキサール(フルベンダゾール)を投与しました。
プログラムとしてこれからどのような駆虫薬をどのように使うべきかは、考えなければなりません。
はじめまして。イベルメクチンによる駆虫を徹底してきた牧場ほど、抵抗性を示す回虫を選択的に残してきてしまった可能性が高いと思います。
もともとイベルメクチンの回虫への効果は高くない。数%の回虫は生き残る。その数%を選択的に残してきてしまうと、イベルメクチンに抵抗する回虫ばかりになってしまう。という機序が考えられます。
途中で、他の薬で残る数%を殺してやれれば、選択的に残すのを避けられるかもしれません。
もやし。あ~似てます似てます(笑)。素麺も、ごぼうも、韓国冷麺も、もやしも、しばらく売り上げが落ちたりしないことを願っています。
同じ環境で飼われていても、成馬は回虫が大量寄生することはまれです。食べているものと免疫によるのだと考えていますが、正確なところは明らかになっていません。
あ~韓国冷麺。いけますいけます(笑)。
ごぼうの「ささがき」。似てるかも。似てるものを探しても・・・食べたくない物が増えるだけかもしれません(笑)。
イベルメクチンは回虫にも効く。とイベルメクチンによる駆虫を推奨してきました。それは、臨床試験にもとづいたものだったのですが、そろそろ方向転換しなければいけないようです。
ピランテル(ソルビー)でも落ちないとなると、ベンダゾールへ戻るしかないのでしょうかね。モキシデクチンはどうなのか・・・・
この場をお借りしてお伺いしたいのですが・・・
4月生まれの当歳にエクイバランペーストをかけたのですが、駆虫後も回虫君たちが馬糞に混ざって出てきます。大小さまざま・・・
1週間おきに4回駆虫しましたが、数は少なくなりましたが、まだ出ます(汗)
しかもこの1頭だけ。
近日中に離乳予定ですが、特にストレスもなく、体は毛づやも良く、ボディスコアも高めです。
駆虫剤をかえた方が良いのでしょうか?ご教授お願いいたします。
イベルメクチン耐性虫はこれまでのプログラムできちんと駆虫してきた牧場ほど発生しやすいと解釈して良いのでしょうか?
先日届いた抄録に載っていますが、北海道獣医師会にも本件に関する発表が出ているようですし興味深い話ですね。
夏にぴったりの画像ですね!(背筋が涼しくなります^^;)
こちらで解剖した成馬ではこういう状態は見たことがなかったです、馬産地ならでは、なのでしょうか。
不謹慎ですが、アルミの器から韓国風冷麺を思い出してしまいました・・・。
当たり前ですが駆虫には気を使わないといけませんね。
私は「ごぼうのささがき」を連想してしました(失礼・・・)
イベルメクチンが発売されて以来、臨床では万能薬であるかのような幻想を抱き、信用しすぎてしまったのではないかと思います。文献を読むと先生のおっしゃるように、実は回虫にはあまり効かないのです。
現在は仔馬にはイベルメクチンとピランテルを交互に投与するように提案していますが、ある牧場ではピランテルにも耐性があるようだと言うことで、フルベンダゾールなどを試しているそうです。古い薬を見直すようですが、何だか時代に逆行しているようです。
洗面器の虫体の並び方は面白いですね。腸管の中でも同じ事が起こるのでしょう。確かにあの虫体がもぞもぞと動くと、物理的にああいう並びになるのでしょうね。
大学などで遺伝学的な調査をすれば、イベルメクチン農場とそれ以外の農場では検出される系統が違うなどという結果に至るかも知れません。
もしくは、ある程度のイベルメクチン投与レベルに達すると、イベルメクチンを投与した際のOPG減少率が鈍くなる事に現れたりするのでしょうか。
細菌類の耐性株は感受性のある株が殲滅した結果そろそろと増えてくると思うのですが、
寄生虫の場合は宿主の免疫能も併せて考えなければならないかも知れません。
現場の臨床検査だけではなかなか難しそうですね。
牛と同じくらいの市場価値の馬もいっぱいいると思うのですが、コストは頭数割で馬は高いですね。
費用対効果が見込める折角のサラブレッドでしたら、コストと神経を注ぐ価値はあろうかと思います。
牛はこんなもんでしょう、の神経ではそれも出来ないのですが。。
「選択的に残してしまう」は種類の違う寄生虫を意味したのではなく、同種の寄生虫の中で抵抗力のある個体を選抜し続けてしまうという意味でした。
寄生部位も生活環も異なる他種の寄生虫が競合・拮抗しているとは考えていません。
理想の駆虫プログラムは難しいです。駆虫薬代は少なく抑えたいし、いちいち虫卵検査していては検査代が高くついてしまいます。しかし、致命的な障害をおこしてしまうかもしれないのが、牛よりはるかに固体価格が高いサラブレッドなのです。
しかし興味深いスタイルですね。円虫はある程度太いので消化管の中にとどまるためにはまっすぐでいることが好都合なのでしょうか。
糸状虫は蛇行スタイルで消化管にへばりついているように思えますが、如何でしょうか。
競合相手が駆虫された結果、他の寄生虫が増える可能性は高いように思えます。
虫卵検査をある程度持続していくと、生産者が負担に思わない程度の駆虫をどうするか?というヒントは意外に得やすいように思えます。
まあ、牛相手ならではの鷹揚っぷりかも知れません(笑)