さて、私なりに、牛の骨折治療の決定の分析における経済性について計算してみたい。
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子牛が骨折する。
50万で素牛として売れると期待していた子牛なら、一見経営上の被害額は50万だ。期待販売価格;X
家畜共済に入っていて廃用になれば保険金(共済金)が出る。仮に20万としよう。補償金;Y
本当は、骨折牛を販売まで買う飼養代がかかるはずだったのがかからなくなっているし、手間と牛舎が空いた分、別な牛を飼うことだってできる。その浮く経費を仮に5万としよう。不要経費;Z
ここで現実の被害額は、X-Y-Z
例に挙げた値段だと25万になる。
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さて、その難しい骨折を治療するなら・・・・
家畜共済に入っていても給付外負担金がかかるかもしれない。5万とか10万とか。治療費;A
治っても期待していた販売価格よりは安くなるかもしれない。
多少成長が遅れるかもしれないし、肢が少し曲がっているかもしれないし、手術してあることが嫌われるかもしれない。
その価格下落係数;b ・・・・0.8くらい?
だから治療後の予想販売価格はbX ・・・・40万
ここで、治療が成功することによって取り戻せる期待値は、bX-A-Z
(販売までの飼養経費;Z は看護や後治療やそれに伴う手間もあり増えるかもしれないけど)
仮に挙げた治療費Aが5万なら bX-A-Z = 0.8×50万-5万-5万=30万
さて、経済的あるいは経営的にだけ計算するなら、
X-Y-Z > or < bX-A-Z
を考えることになるわけだ。
25万<30万
厳しい数字を挙げたつもりだが、多くの獣医師と畜主が思っているほど割りに合わなくはない。
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ただし・・・・
治療しても必ず治るとは限らない。経済価値が無くならない結果になる治療成功率;c ・・・うちなら90%以上と言える;自慢・笑
実際の期待値は、
bcX-A-Z
のようだが、治療がうまく行かない場合はかけた治療費は無駄になる。この場合は飼養期間はそう長くはならないだろうが、手間は増大するかもしれないので Z のまま置いておこう。治療費と手間をかけた挙句に、という事態だ。
(1-c)×(-A-Z)
例に挙げた数字だと -1万円
bcX-A-Z+(1-c)(-A-Z)
成功率、うまく行かないリスクまで計算しても
X-Y-Z < bcX-A-Z+(1-c)(-A-Z)
25万<29万
となる。
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ただし、治療成功率が五分五分なら
bcX-A-Z+(1-c)(-A-Z) = 0.8×0.5×50万+0.5×(-5万-5万)=15万
となり明らかに
X-Y-Z >> bcX-A-Z+(1-c)(-A-Z)
止めておいたほうが良いかもしれない。
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ただし、子牛を助けようとしてできるだけのことはした、という飼い主としての満足と自信と誇りと、
獣医さんも一生懸命やってくれたという信頼と絆は残るかもしれない。
そして、次は助けられるかもしれない可能性も。
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きのうは1日会議。
いろいろなデータが示されることに感心する。
データを示す執行部もたいへんだろうが、デジタル化時代の恩恵でもあるのだろう。
正しい数字を出して、
正しい解釈をして、
正しい対応につなげる。
数字を出すのはその第一歩だ。
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とうちゃんひるいないからあさにかいごはんくれた
ひるごはんくれなかった
だからゆうがたにかいごはんほしかった
シュミレーションの計算ソフト、簡単そう
オラ君、その場合、夕方はまるでコントロール不良な糖尿病患者の考え方だ。
いつもはごはん3回なんだね。キレイな
しかし、牛を飼っていて、治そうとしない方が特になる、というのはおかしいと思います。
コロナ禍でさらに複雑になるのかもしれません。
相棒はいつも腹減っていて、いつも食べたいヤツです。食が細いワンコが居るなんて信じられないカンジ。
4~5までの数を数えられるそうです。
オラ君もしっかり覚えて期待してたかも(笑)
うちの老犬も食べる事しか考えていません。
ネコはちょっと違うようでハンティングが一番の関心事のようです。
わんこ、いつでも食べたい説に異論はありませんが、いとこわんわんには普通にヒト・日本語で話しかけますが、山では「おやつ?今はいい。先に進もう。行っていい?」という場面も。が、プロフィールから「くいしんぼー」が消えるわけじゃないし、「わんこ、いつでも食べたい説」に異論はありません
うちのも散歩よりゴハンです。おやつは少ししかもらえないのがわかっているので、それより遊びってときはあるかな。
式の最大の要点は治療成功率になると思います。
全事故からいくつ直したかではなく、治療介入した症例の中での成功率ですから、そこの見極めが経済性を提案する上で重要となる訳ですね。
短絡的な診療所の経営だけ考えればなんでもやればいいことになりますが、そこで成功率が下がるなら飼養者に治療を提案して受け入れられる事は長期的には困難になりますよね。
端的には1回の診療行為が2度と治療を頼まない飼養者を生むことになります。
このクラスターは芋づる的に展開しますから侮れないです。
倒産する小動物病院もこんな事を繰り返しているのだろうと思います。
内固定による介入が不成功に終わったのがこれまで1つだけならcはもっと高いでしょう。
外固定の成功率を遥かに超えて、99%を語っても良いのではないでしょうか。
もちろんこの数字は治療困難と診断された個体を省いた上で得られている事を理解してもらう事は大事でしょう。
有意に治ると言わず、大いに治る可能性があると表現し90%の数字を示すのは、1割程度が子牛生産本来の目的である販売という目的を達成できない可能性があるためだと思います。
販売目的が達成される90%の治療個体のbはほぼ考慮しなくて良いと思います。
逆に言えば販売した個体の1割程度が不本意な結果であった、と言えるかも知れません。
販売率*販売成功率が0.8の根拠かも知れません。
販売しない個体からは飼養者の努力次第で利益を生む可能性もありますが、Yの根拠となる評価額を上回る事はないと思います。
しかし飼養を続ける限り評価額相当の掛け金を払い続けることになり、本来の目的外で飼養する経費Zを過剰に膨らまします。
売れない個体を生産することに対する評価は厳しいものになると思いますので、ここのコンセンサスは大事だと思います。
想定外に治って売れて嬉しいケースもあろうかと思いますが、飼養者も飼っている事に根拠を求めていると思います。
牛や骨折に限った話ではないですが、なんで飼っているのか、なんで治すのかを最大に評価して頂けるのが上場でしょう。
エンドポイントとしてその目標をクリアする事は支える技術者の存在を背景として示します。
その成果を獣医師として飼養者と共有できれば、お互い自己満足にハマらなくて済むと思います。
牛の骨折外固定(キャスト固定)も部位や牛の大きさによりますが、中手中足骨で5-7割、脛骨だと1-2割ではないでしょうか。
その万が一を取りに行かないと概念変えられない。
そこまでの導線が引ければ後は水が堰を切る様なsimplelifeが訪れるはずなのですがそうはならないですね苦笑
第四胃や子宮の捻転自体は後遺の原因となりにくいと思いますが、アプローチで思った様な手術にならない場合がありますね。
子宮裂けたりしない限りは99の技術だと思います。
第四胃変位は初診が何病日かによるのでしょう。
変位自体が機能障害を後遺するので早く頼んで切れば問題無いと飼養者に認識してもらっても頼まれても切らない獣医が挟まってくると飼養者も諦めとかモチベーションが低下して信用を失い切っても治らなくなります。
左巻き診療ですね。
腸閉塞は診断が3割まで行っていないのでは無いでしょうか。
モタモタの獣医対応なのに切ることを頼んでくる飼養者は少なからずそれまでの対応の証明に係っているはずです。
良い獣医師の教育者としての側面はあります。
其処まで行ってしまう獣医の多くは救えないのが実際なのですけれども。
キャストも適応を間違えなければ99なのでしょうけれども内固定を選択肢としていない限り無理な治療が増えて成功率を下げてますね。
技術によらず体重問題は存在するわけで、内固定はこの辺のボーダーにどこまで近接できるかという選択肢であることを飼養者に理解してもらわないとやはりこちらにも無理な治療が増えて成功率を下げる原因になると思います。
そんなに大きな治療費にはなりませんよ。
できるだけのことはした、次回は助けられるかもしれない、牛飼いの誇りも守れた、となります。1-c でさえです。