土曜日、午前中は競走馬の腕節の関節鏡手術。
以前に同じ関節の関節鏡手術を受けている。
新たにまた骨折したのではなく、DJD変形性関節症が進行したようだ。
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昼は血液検査業務。
と思っていたら、生まれたばかりの黒毛和種子牛が股関節脱臼し、一度は整復できたものの、起立させたらまたはずれ、
今度は整復できない、とのこと。
来院したら、腰角のすぐ尾側がぼっこり膨らんでいる。
そこに大腿骨大転子が来ているようだ。
本当は、股関節はもっと尾側で、大転子はさらにその尾側にある、べき。
DRでX線撮影してみる。
患側を上にして撮影しているので、拡大されて大きい方が患側。
左大腿骨骨頭が、頭背側へ逸脱しているのがわかる。
仰臥でも撮ってみた。
牛の股関節脱臼で一番多いとされている頭背側脱臼だ。
前肢を枠場の根元に縛りつけた。
患肢には産科チェーンを着けて、尾側へ思いっきりひっぱった。
が、戻せない。
一人が患肢をひっぱり挙げて、内側へ思いっきり捻り、その状態で、大転子部を尾側へ押したら、
入った!!
X線撮影したら、入っているのが確認できた。
仰臥で撮影しても大丈夫なようだ。
腰角近くに何か写っている。骨膜の靭帯付着部などがちぎれたのだろう。
円靭帯も切れているはずだし、股関節周囲の靭帯も切れているし、関節包も破れているはずだ。
あとは再脱臼しないように、左右の後肢を飛節の上で伸縮包帯を巻いてつなぎ、さらにその上を粘着テープで飛節を屈曲させた状態で固定した。
トラックに乗せたら、後肢をばたつかせたので、さらに左後肢だけは球節を屈曲させた状態でテーピングテープで固定した。
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私は子牛の股関節脱臼を診療すること自体が2頭目。
電話連絡をもらってから、教科書や文献をあわてて読んだ。
数日経ってしまうと整復するのは困難になるし、骨頭切除をしても長期予後は芳しくないらしい。
再発せず、うまく治ってくれると良いのだが。
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と祈ったのだが、この子牛は翌々日には誤嚥性肺炎で死んでしまった。
股関節も再脱臼していたようだ、とのこと。
とくに事故でもなかったのに股関節脱臼したことから、股関節の形成不全があったのかもしれない。
股関節も再脱臼していたようだ、とのこと。
そういう運命だったとしか、、、
子牛が誤嚥性肺炎で死んじゃうときはそんなに早いのですか。寝たままでは誤嚥しやすいでしょか?
1頭目は手術して(2017年5月27日の記事)その後どうしているでしょ?
脱臼の整復が妙にうまい人っていますよね。高校野球、明徳の監督さんもお上手とか。
寝たままでは誤嚥しやすい、というのはあります。何度かはうまく飲んだようなので、この子牛は一般状態も悪くなって飲めなくなったのかもしれません。
子牛の股関節脱臼では、両飛節の近位で肢を縛って立てなくする、という情報があったと聞いたので、こうしたのですが、どうも再脱臼していたようです。
小動物の技術もちゃんと教育されているのが、ACVSの外科専門医のよさですよね。負けないように勉強します。
胎児の頃からこの方向の異常可動があったのかも知れませんね。
最近の牛は四肢も長くて体幹と四肢のアンバランスでも股関節負担は起きている様でして、これは低形成とは少し違うと思います。
ちなみに大腿四頭筋の収縮力に抗うのは容易では無いので、脚を屈曲させてから外反させると入りやすい様な気がしますがいかがでしょう。
新生子の死因不明は誤嚥性肺炎になりがちですが解剖してみないとこの辺もわからないですよね。
「むせていた」とのことなので誤嚥は間違いないようです。
今度解剖体で練習してみるか・・・
今日、山道で和牛の子に会いました。おでこにりっぱな鎧張り付けたお顔を寄せてきてベロリンチョされた舌が猫よりザラザラしてた
助かる牛さんが増えますように。
”鎧”はあれの固まりですね。