馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

第三中手・足骨の顆へ入れるスクリューの長さと先端

2014-03-10 | 整形外科

Large13 第三中手骨、第三中足骨の顆骨折で骨端部に入れるスクリューの長さと先端を出すか出さないかについて、ペンシルバニア大学大動物外科主任教授Dr.Richardsonに尋ねてみた。                   

以下はメールでのやり取りをまとめたもの。

                 -

Q; 私はスクリュー一巻き半は対側の皮質から出した方が良いと考えています。

スクリューの先端が刺激をあたえること、とくに第三中手・足骨の骨端部では側副靭帯への損傷を心配する馬外科医がいますがどうでしょうか?

A; 君の入れたスクリューは長すぎるが、おそらく大きな問題ではない。君のスクリューの長さについての考えは第三中手・足骨の骨端部については正しくない。君の論理は正しいが、この部位だけは違っている。

この骨端部には長いスクリューを使う正当な理由はない。骨はとても固くて頑丈だ。皮質はない。全て固い骨でできている。

もしスクリューで骨に25mmねじ山を効かせることができれば、骨はすでにスクリューより強い。

例えばもし顆の骨折片が20mm幅で、君が22mmのすべり穴を開ければ、48mmのスクリューは58mmのスクリューと同じ強さだ。

スクリューが突き出ていることはいくらかのリスクがあるので、最長のスクリューを使うべきではない。

この骨折をたくさん扱うほとんどの人はデプスゲージで深さを測ることさえしない。

なぜならこの部分の骨のサイズはとても一定だから。私はほとんどいつも52mmのスクリューを使う。骨端にうまく入れたスクリューとしてはそれで充分な短さだ。

                           -

Q; 骨端部のスクリューの先端が出ていることのリスクについて教えてください。Mt3medcond11

側副靭帯へのダメージを心配するなら、スクリュー先よりはるかに大きいスクリューヘッドについてはどう考えますか?

スクリューは抜くべきだということになりませんか?

A; とてももっともな質問だ。答えはまったく満足のいくものではないと私は思う。

数mm突き出たスクリューの先端はまったくリスクはないだろう。

とても少数の馬でしか、スクリューヘッドが側副靭帯に問題を起こしているのを経験したことはない。

しかし、ごくわずかしかリスクが無くてもあえてリスクを冒す理由はない。

わずかなリスクを冒してより長いスクリューを入れる利点はない。

 スクリューを抜くことについて言えば、私は遠位の顆のスクリューを抜いたことはほとんどない。

骨幹部についてはすべてのスクリューを抜くことを勧める。16

第一指骨では通常のスクリューを抜くことは勧めない。しかし、ここ数年、問題を起こしている数例を見たのでスクリューを抜いた。抜く必要があった第一指骨のスクリューはまだ2%未満だと思う。

                          ---

 lag法で入れるスクリューの先端は一巻き半は出すべきだが、第三中手・足骨の顆部だけは出す必要がない。という回答だ。

はっきり25mmの長さでねじ山が効けばもうスクリューより強い。と述べておられるので、おそらく報告されている基礎研究があるのだろう。

ただ、48mmのスクリューも58mmのスクリューも固定力は変わらない。と言われても完全には納得しかねる。

骨の強さには個体差もあるだろうし、いつもスクリューが完璧な入り方をして理想の固定力を発揮するとは限らない。P3105884

Dr.Richardsonは(この部分には)皮質はない。と書いているが、皮質はある。

(右写真)

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この部位ではスクリューヘッドを埋め込むためのカウンターシンクもしないことになっている。

側副靭帯へのダメージを気にするからだ。

だからスクリューヘッドが挿入側の側副靭帯内に残ることになる。

にもかかわらずスクリューを抜かないのに、スクリューの先端の数mmを気にするのはどうも私には納得しかねる。

ぎりぎりの長さのスクリューを選ぶ必要がない。というのは楽でありがたいことだ。

側副靭帯があるためにドリルやスクリューの先を感じることが難しく、デプスゲージでも深さを測りにくい場所なので。

                            -111

顆へ入れるスクリューは少し短いスクリューを使うことにしよう。

幸いとても長すぎるスクリューを顆に入れたことはない。

ARTHRO先生、勉強する機会を与えていただいてありがとうございます。

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10cm近く雪が降ったが、軽い雪だった。

アスファルトの上では融けて数cmしか残っていなかった。

それでも朝1時間ほど雪かき。

日中にはほとんど融けてなくなった。

P3105888

        


4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 ネジの一巻きにも理由があるものなのですね。 (はとぽっけ)
2014-03-11 06:50:39
 ネジの一巻きにも理由があるものなのですね。
 骨といってもどこの骨も同じではなく。

 オラ君、あれはやはり ドラゴンボールでしょか?
 ボール遊びできそうな季節になってきたのですね。
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>はとぽっけさん (hig)
2014-03-11 19:02:18
>はとぽっけさん
 より良い方法を求めていきたいものです。より良く治すために!

 雪の上、泥の上、草むら、それぞれにボール遊びも趣きがあるようです。
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典型的な皮質骨はほぼ存在しないということになる... (zebra)
2014-03-12 22:27:55
典型的な皮質骨はほぼ存在しないということになるのでしょうけれども、用いているのは皮質骨スクリューということでよろしいのでしょうか。
カウンターシンクがヘッドを埋没させるために僅かな皮質骨をヘッド下から除去してしまう手技であるならば、あまり賢い方法ではないように思えますが、如何でしょうか。

英語でこれらのやり取りをされてる時点で私は感服いたします。
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>zebraさん (hig)
2014-03-13 19:17:42
>zebraさん
 皮質骨スクリューですがlag fascionで挿入します。この部分はカウンターシンクはしないのですよね。側副靭帯へのダメージを気にするだけでなく、皮質骨が薄いからかもしれません。
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