馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

エンロフロキサシンによるショック 

2022-03-03 | 馬内科学

分娩による直腸穿孔で、腹腔内に直腸便による汚染もあり、開腹手術もした繁殖牝馬。

私は手術の翌日の夜が当番で、次の朝、持続点滴の管理と抗生剤の投与をした。

凶暴な馬で、採血をするのもたいへんとのことで、持続点滴の三方活栓を利用してエンロフロキサシンを投与した。

それだと痛くないので、馬は暴れないだろうから。

そのあと腹腔洗浄もした。

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その朝は、もう一頭重症馬が入院していた。

子宮穿孔による腹膜炎で開腹手術した馬で、どういうわけかひどい筋変性を起こしてしまい、前日は起立不能だった。

その朝はなんとか起立できるようになり、その馬も腹腔洗浄しなければならなかった。

その馬を診ていると・・・・あっちの馬房が騒がしい。

観に行ったら直腸穿孔の馬が倒れて痙攣していた。

「これはダメかも・・・・」

            ー

しかし、その馬はしばらくすると立ち上がった。

特にそういった発作の履歴もない。

エンロフロキサシンによるショックと痙攣、くらいしか思い当たることはない。

ニューキノロン系抗生物質の投与で痙攣が起こることがあることは知られている。

NSAIDsにより増強されるとされている。

この馬は前日の夕方にフルニキシンを投与されていた。

エンロフロキサシンは、他の抗生剤で効果が得られないときに使うことが多いので、解熱鎮痛消炎剤と併用することはざらにあるだろう。

バイトリルの添付文書にも、「相互作用」として「まれに痙攣が発現する」と記載されている。

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日高獣医師会の講習会をオンラインで視聴した。

BTCは浦河の奥にある育成馬調教施設で、主に1歳後半から2歳になって競馬場へ行くまでの馬がトレーニングされている。

若い、あるいは幼いサラブレッドたちを競走馬としてデヴューさせる難しく、かつ重要な期間である。

ほかの多くの育成牧場でも行われていることなのだが、BTCは規模が大きく、専属の獣医さんがいる。

BTCで調教を受ける馬にどのように故障がおき、どのような診療を受けているかは、育成馬を診る獣医師にとても勉強になる。

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今回のオンライン講習会では、

BTCでどのような診療が行われているか。

育成馬に見られる骨折。

中手骨掌側近位部の障害。

そして、跛行診断のための診断麻酔のHow to.

をBTCの先生がたから学ぶことができる。

いずれも学術的にも素晴らしい内容だった。

教育的にも良くできているので、ぜひ多くの獣医師に視聴していただきたい。

生産地の獣医師にも、

競馬場の獣医師にも、

乗馬の獣医師にも、

これから馬の獣医師を目指す獣医科学生にも、

彼らを教育する獣医学科の教員にも、

役に立つと思う。

           ー

https://39live.jp/e0217

にアクセスして、

所属、氏名を入力後

ID:eisei01

PW:0301

で視聴できる。

 

 

 



6 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2022-03-03 19:41:37
 痙攣する馬、さぞかし驚いたのでは?
 何度も聞きそびれていましたが、やっと。
 ニューキノロンによる腱障害は気にしませんか?
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>はとぽっけさん (hig)
2022-03-04 07:32:57
驚きましたが、どうすることもできない状態でした。

子馬に投与すると3-4日で関節が腫れてきます。しかし、牛、豚では大丈夫なようですね。人は腱断裂もおきることがあるとか。

聴いていただきましたか!
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Unknown (はとぽっけ)
2022-03-04 19:45:20
所属:馬医者修行日記
氏名:はと ぽっけ
 なので、拝聴できかねます。
 しかし、これまでもBTCのサイト内のパブリックな内容で多くを学びました。感謝でいっぱいです。ありがとうございます。
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>はとぽっけさん (hig)
2022-03-05 05:18:33
あらら・・実在の団体、実名でないと視聴できませんか・・・?

照合などはしていないと思います。全国で聴いてもらえると〆の挨拶でもありましたし・・
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Unknown (zebra)
2022-03-07 07:12:39
関節障害なんかはビクタスばかりではなくバイトリルでもあるのですね。
マルボシルは巷で汎用されつつある様な気がしますが、どうなのでしょう。
ショックの様な症状は牛でも無い訳ではないですよ。
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>zebraさん (hig)
2022-03-08 05:39:21
当歳馬には3-4日以上の連用はできない、と思っていた方が良いようです。
最後にとっておいて大事に使うのが良い抗菌剤だと思います。汎用はすべきではないでしょう。
牛でもショック起きますか。それも危なそうです。
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