馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

熊撃ち

2022-12-27 | 図書室

 

この表紙はいただけない。

内容は、熊撃ち猟師たちが主人公の短編集。

この作者の特徴で、感傷を抑え、無駄をはぶき、とてもハードボイルド。

取材を元にしていて、実話なのだそうだ。

名作「熊嵐」を書いたあとに、同じテーマで短編の連作を頼まれたのだろう、と思ったら、

この連作の取材の中で苫前事件についても取材し、苫前三毛別事件だけは短編に収まらないので独立させたのだそうだ。

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この短編集に出てくる猟師たちを取り巻く事情もいろいろ。

老練な熊撃ち猟師も居るし、まだ熊を獲ったことがない若者も居る。

共通するのは、連射できない村田銃で危険な猛獣に立ち向かう恐怖だろうか。

スコープ付きの高性能ライフルではなく、丸い鉛弾を射っていた時代の物語だ。

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人が襲われる。

復讐と危険排除のために熊撃ちを請われる。

依頼に応えて人食いヒグマを山中に追い、撃ち果たす猟師たちはヒーローなのだけれど、彼らの喜びはほとんど描かれていない。

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背景にあるのは山奥の集落の貧しさ。

豊かな農村ではなく、山に入り山菜を採り、茸を採り、生活の足しにする暮らし。

猟師もまた熊を撃てば、胆嚢は薬として高く売れ、毛皮も手に入り、肉は食糧になる。

先人たちの暮らし、野生動物や自然との緊張感を持ったつきあいに思いを馳せるのも悪くない。

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各短編の表紙のページに描かれた絵は素晴らしい。

シュールでありながら、短編の内容と関係していてリアルでもある。

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もっとリアルでハードボイルドなもの(資料)

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もう40年前、ずいぶん日高山脈や他の山々を登ったが、ヒグマには一度も会わなかった。

NHKのアルバイトで、日高のカムイエクウチカウシ山の近くで、ヒグマを撮影したいと稜線から1日見張っていたこともある。

それでも姿も見えなかった。

10年ちょっと前に家の近所で見たけど;笑)

最近、北海道のヒグマも増えているのかもしれない。

そして、行動がおかしいヒグマも散発しているのかも。

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週明け、午前中、競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

1ヶ月前にTieback&cordectomy した競走馬の再検査。

昼、ショック状態の当歳馬が来院。消化管破裂のようだった。

午後、当歳馬の肢軸異常のscrew抜去。

夕方、当歳馬の飛節の細菌性関節炎。全身麻酔して関節洗浄。

有茎脂肪腫が巻きついて空腸切除・吻合した高齢馬は、POI(術後イレウス)が改善し退院していった。

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年末だ。

 



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2022-12-27 19:44:11
 POIからの生還、すばらしい!

 この表紙はamazonの熊関連小説がずらりと並んだ中でも確かに異彩。
 熊打ちの方々は話し上手が多いように思います。熊に遭遇した人の話にも笑わされて育ちました。
 いとこわんわんには熊の足跡や糞や「熊」という言葉で教えて、いち早く車に戻るよう教えました。姿が見えなくても音や匂いでわかるらしく山歩きに同行しくれると心強く安心です。が、いとこのことは気にかけて何度も車と往復。少なからずジェラシー。
 早朝一人でのんきに牛の放牧地や水芭蕉群生地を散歩して帰ったら前日近くで人が熊の被害にあったと知りヒヤリ。ということもあった一年でした。(総括終わり)(無駄に長文ですみません。)
 hig先生は次は「熊撃ち」を読むと思います!
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>はとぽっけさん (hig)
2022-12-28 04:32:31
まあ、なんとか、でしょうか。

話は聞く、しかし実際に姿を見ることはめったにない。くらいがヒグマと人との正しい距離かもしれません。お互い怖がっている、というか。
ヒグマに対する正しい対応をワンコに教えるのは難しそうですね。吠え掛かって、ヒグマを興奮させて、飼い主のところへ逃げ帰ってくる、が自然な、最もまずい反応かも;笑

「熊撃ち」久保さんの?もう読みました。良い半生期でしたね。
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