馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

プレート固定の基本 最初のスクリューをどこに入れるか 実践的説明だと?

2024-05-04 | technique

骨折をできるだけ整復したら、

骨鉗子で仮止めする。

そして、骨折部がlag screw を入れられる形状なら、lag screw で固定する。

(lag screw は、4.5mmのgliding hole を開けて、そこへ3.2mmドリルガイドを入れて、対側皮質まで3.2mmドリルで貫いて、深さを測って、タップを切って、screw を入れる、という操作なので、

やっているうちに骨折部がずれてしまいがち。

細いキルシュナー鋼線で骨折線を貫いておいて、ずれないようにしてからlag screw を入れると良いかもしれない。)

            ー

そして、contour したプレートを載せて、

最初のスクリューは、骨折部に近いところから入れていく。

というのが基本。

横骨折なら骨折部から1cmちょっと、

斜骨折なら3-5mmあたりが、最初のスクリューの位置になる。

            ー

しかし・・・・・

これは馬の中手骨、あるいは中足骨のプレート固定をモデルにプレート固定の基本を説明する図。

・骨折線を跨ぐように骨鉗子をかけて仮止めしたら、

・3.5mm皮質骨スクリューを2本、lag法で入れて補助固定。

・contour したプレートを当てて、骨鉗子で留める。

・プレートは骨の表面に沿っているが、骨折部ではprebending(対側皮質にもcompressionを働かせるため1mmほどプレートが浮くよう「へ」に曲げておく)している。

・そして、骨折部を避けたところに最初のスクリューを入れる。

           ー

実践的になると「基本」で説明されていたことと、少し異なっている。

プレートを載せる位置が、斜骨折の先を押さえる位置(側面)ではない。

仮止めのlag screw を入れることを優先したからだろう。

側面にプレートを当て、lag screw はプレートスクリューとして入れる方法もあったと思う。

           ー

最初のスクリューは骨折線近くに、とは意識していないようだ。

続きの図。

2番目のスクリューは近位から2番目の孔に入れている。

そして、骨折部の両側へ交互にスクリューを入れていく。

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中手骨という具体的な部位が対象になると、原則としての基本から少し外れた方法になる。

骨折部近くの整復とcompression にこだわっていると、中手骨というわりと直線な骨の全体がひずむ可能性があるから、かな。

骨折部をぴったり合わせることは大事なことで、そのことで骨全体の整復もうまく行くことが多いが、

骨折部に崩れがあると、ぴたりと合わせると骨全体の alignment がずれることがある。

横骨折だと外旋、内旋していないかにも注意が必要。

        ///////////////

枝垂れる植物は、重さや風に逆らわず、枝垂れることで生き残る戦略を選んだのだろう。

”高等”動物と名乗っている脊椎動物は骨を持つことで生き残ってきたが、地球上でもっと繁栄しているのは昆虫やダニの節足動物だ。

骨折しないし、足が千切れても生きていける。

 

 

 

 

 



6 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-05-06 07:16:01
1枚目の「C」のアルミニウムプレートは何のためなのでしょう?
 模型で練習するときもこのタイプの骨折が登場するのでは?螺旋状の骨折は献体に人為的に作れるものですか?複雑骨折はできそうに思えますけど。

 青に映えて力強さも感じる枝垂桜ですね。種類によってはまだまだ桜の季節。
 枝垂れや斑入りの遺伝子はすでに見つかっているものもあり、同時に耐病性やほかの形質との関連も興味深いです。
 ヒトでもペストを生き延びた人々がその後に罹患、発症する可能性のある疾患との関連も言われたり。
 柔道や合気道は枝垂れ系武道といえるのかな。どうでしょう?
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>はとぽっけさん (hig)
2024-05-07 04:43:54
アルミプレートは、prebendingにより骨折部でプレートが浮いているんですよ、と示すためだと思います。

中手骨斜骨折の模型は市販されています;驚!解剖体をうまく骨折させるのはなかなか難しいです。螺旋骨折を作るのは困難でしょうね。bone sawで切っちゃうと、骨折面ツルツルで仮固定が難しくなります。

ヤナギに風折れなし、を生存戦略として選んだのでしょうね。巨木になるそうですが、やはり枝の付け根などが弱いように思います。
日本人が、筋トレ、「剛」の武道へ進まなかった理由の考察は興味深いです。歴史的に異民族の巨人軍と闘わなくて済んだからかもしれません。
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Unknown (zebra)
2024-05-08 06:52:42
プレートを差し込んでいるのも、骨折部を開けてスクリュー入れ始めるのもprebendingした部分で先に骨を引き寄せるのを防ぐためでないかと思います。
この隙間分向かいの皮質骨が引き寄せられることになるのでしょう。

学生時代に中足骨折治したら膝蓋骨脱臼する様になったラブラドールが来て、まあすっちゃかめっちゃかした訳ですけれど、結局回旋していて、それ治さないとどうにもならずという症例だった様に思えます。

枝垂れるタイプは風当たり強くても平気で、でも日当たらないと全然ダメで。
人間と真逆だなー笑

雪で折れて皮一枚繋がった梨の枝が花をつけたのでぶら下げて接合しました。
とりあえず徒長枝残してどこまで枝として復活するか。
他のもボキボキなもんで。
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>zebraさん (hig)
2024-05-10 04:29:09
そういう意味だと思いますが、実際にはそんなことはしませんし、この図でもscrewを入れるときはアルミプレートは描かれていません;笑 かなり観念的なことなのだろうと思います。

骨折がうまく治らないと、他の障害が出てくる例ですね。角状変形には自己矯正力が働くが、回旋変形は自力矯正されない。気を付けなければいけないことです。

東北のサクラは枝垂れ桜が多かったように思います。雪国だと雪の重みにも強いのでしょうか。
人と逆かな~?うなだれている寡黙な人の方が打たれ強い、ということもあるように思います。
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Unknown (脱サラの牛飼い)
2024-05-14 12:40:58
以前働いていた職場に庭木、盆栽に詳しい人が、
枝垂れ桜を背高く育てるには、
主幹(真の主幹でなくてもよさそう)を上に伸ばすように、支柱を立てて、幹をたれないように紐で縛り、上へ上へと誘引すると大きくなる。

と言っていました。

実際に、事務所前にある枝垂れ桜も竹を支柱に主幹を上に伸ばしていました。
その枝垂れ桜は、
その人が管理していない他の枝垂れ桜より高く育っていました。
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>脱サラの牛飼いさん (hig)
2024-05-17 04:37:39
なるほど、支柱で保護をしながら上へと誘引するのですね。枝垂れる樹は風に強いとも限らないので、ある大きさまで支えてやると良いのでしょう。
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