馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

繁殖雌馬の骨髄内膿瘍

2022-11-01 | technique

数週間にわたる後肢跛行を示している繁殖雌馬のX線画像。

肢の腫れや、血液検査での炎症像など感染と炎症によるものである所見もあるが、

成馬が外傷もなく、関節隣接部でもなく、成長板遺残部でもなく細菌性骨髄炎を起こすだろうか?

という考えが診断を邪魔する。

          -

ただ、私はかつて成馬が骨髄内に膿瘍を形成した症例報告を見た記憶があった。

たしかEquine Veterinary Education。

しかし、相当前だ。

コピーしたり、pdf化して保存したりはしていない。ダメになった1例報告だったはずだ。

Equine Veterinary EducationはPub Medの検索対象には含まれていない。

骨髄炎は、myelitis とか、Osteomyelitis だが、成馬の骨髄内に起こることはとても珍しい(ほとんどありえない)ので、検索してもHit しないだろう。

時間が空いてから、書庫のEquine Veterinary Educationを見ていった・・・・

で、見つけた。

Intramedullary abscess of the proximal third metatarsal bone in a 4-year-old Thoroughbred horse

Equine Veterinary Education (2007) 19 (6) 291-296

UK のGlasgow大学からの1例報告。

私はこの写真に記憶があったのだ。

          ー

このEVEの1例報告のintroをざっくばらんに紹介すると、

細菌性骨髄炎は子馬ではよくある。細菌性関節炎、隣接する軟部組織の感染に引き続いて起こるし、あるいは血行性に起こる。

成馬は骨髄炎を起こすことはまれで、しかし、穿孔創、開放骨折、整形外科手術、特に骨折固定手術では発生率が高く、予後悪化の原因になっている。

さらに、感染は皮膚損傷のない外傷や骨折でも起こることがあり、骨へ血行性に広がることが推察される。

馬の骨髄炎の珍しい後遺症としては、慢性の骨膿瘍が、第一指骨の近位部、上腕骨の外顆、脛骨近位、に起きた報告がある。

これらの症例報告は、人で慢性の骨髄炎形成を認めたBrodie's abscess との類似性がある。

Brodie's abscess は、四肢の骨幹端や骨幹に、骨硬化に囲まれた限界明瞭なX線透過部によってX線画像的に特徴づけられる。

Brodie's abscess を持つ骨病変は、大型の反芻獣や猫で報告されている。

 この報告は、以前に報告がない部位の骨髄内膿瘍を起こした1頭の馬の生前診断と病理所見について記載する。

            -

この症例馬は、骨髄炎か、骨の腫瘍が疑われ、さらなる検査や治療にかかる費用と、腫瘍であった場合の予後の悪さから、馬主は安楽殺を選択した。

(つづく)

           ///////////

連休にはめぐまれない職業人生だったけど、日本全国ほとんど到達したり通過したりはした。

ひとつは学会や講演への出張であり、

もうひとつはかつて行われていた職場の旅行で訪れたからだ。

今はもう職場の団体旅行なんてはやらないのだろうけど、たいして行きたいと思っていなかった所でも行ってみると興味や発見があるものだった。

ただ、私は九州北部は足を踏み入れたことがなかった。

福岡、大分、熊本、長崎、佐賀は、通過したことさえなかった。

それで・・・

湯の里の山あいの宿。

茅葺屋根の露天風呂(これ矛盾だよね;笑)

風情があってとても良かった。

 

 

 

 


4 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2022-11-01 06:49:09
 数週間の跛行がどんな痛みからかと思うとつらい。

 あら、湯布院。
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>はとぽっけさん (hig)
2022-11-01 18:44:20
一時はかなり痛かったようですが、放牧できるようになったそうです。

よくご存知で。有名なんでしょうか??
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Unknown (はとぽっけ)
2022-11-01 20:00:57
 治療しても途中でダメになったのでは?と思っていました。うれしいです。

 有名だそうです。Googleレンズに教えてもらいました。
 湯布院はとても好きです。「わんこも連れてけば?」と言ってみましたが、うちでお留守番。お風呂がよかった。といとこからも何度も聞かされています。ニアミスかも。
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>はとぽっけさん (hig)
2022-11-02 05:18:36
外科的治療はなかなか難しそうです。幸い抗生物質投与に反応したようでした。

なるほど、Googleレンズはそういう使い方もできるのですね。
別府も湯布院もいたる所に湯気がモクモクあがっていて、温泉の湯量に驚かされました。太陽の恵み、マグマの熱、海の幸。北国の者にはうらやましく思えました。
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