奴隷調教 監禁SM御曹子

　「奴隷調教　監禁SM御曹子」（2007/製作：フィルム・ハウス/提供：Xces Film/監督：大門通/脚本：有馬仟世/企画：稲山悌二/プロデューサー：伍代俊介/撮影監督：創優和/撮影助手：柴田潤/照明助手：小松麻美/助監督：加藤義一/監督助手：城定秀夫・矢野真麻/制作協力：フィルムハウス/出演：今野由愛・ミュウ・倖田李梨・岡田智宏・吉岡睦雄・加藤智明）。
　開巻、山下玲子（今野）と恋人の宮本昭信（吉岡）の情事で手堅く出発進行。事が済むと、定職にも就かずにギャンブル三昧の宮本は、玲子に金の無心。終に愛想を尽かした玲子は激昂、服を着るのもそこそこに、宮本を追ひ出す。未練といふか執着を残す宮本に対し、さつさと切り換へた玲子はアモーレ結婚相談所に登録、相続した不動産を元にアパートを経営する本村卓司（岡田）と会ふことになる。本村の高い収入と感じの良さに脊髄反射で瞳を輝かせる玲子ではあつたが、本村は、女を薬で眠らせては監禁して陵辱の限りを尽くす、変態サディストであつた。
　濡れ場はキッチリ押さへながらも最短距離で道筋をチャッチャと整へると、後は延々粘着質な責めのシーンに専念。プログラム・ピクチャーの勘所を完全に手中に収めた誠鮮やかな、品性低劣な男供の薄汚れた欲望にのみ訴求する、事ここに至ると却つて清らかにすら見えて来るエロ映画である。もう一人の犠牲者となる倖田李梨とミュウ（何れも後述）まで含め、主演はエクセス初出演の女優、といふいはゆるエクセス・ルールにも囚はれない布陣は正しく十全。余計な映画的完成度になんぞ色気を出すほど、大ベテラン大門通は愚かでは無論なからう、正しく鉄壁の裸映画である。これが詰まらないだとか他愛もないことをいふ者は、たまには下半身で観る映画の観方も覚えればよい。あくまで“たまには”、である。玉で観るのは偶でいい、おあとがよろしいやうで、まだ終らんけど。
　一体この人は正味で今年幾つになるのかは知らないが、岡田智宏の何時までも抜け切らぬ青さが、本村の変態性の突進力と全人格的な未熟さとを表すのに効果的に作用する責めの場面は、暗さと厚味はほぼ皆無なものの、歪みぷりは申し分ない。犠牲者も今野由愛に倖田李梨と、ルックスもプロポーションも抜群。大の字に―正確には両手はガッツ・ポーズ―拘束して嬲る件の破壊力は、百点満点で二千七点。輪のついた洗濯挟みで乳首を摘み、悲鳴を上げる女を余所に本村は指で軽く指揮でも執るかのやうに輪に指をかけ、無造作に勢ひよく洗濯挟みを引き千切る、乳首責めのシークエンスは非常に素晴らしい。最早何をいつてゐるのか、自分でもよく判らないふりをする。
　倖田李梨は、玲子の前に本村の憐れな犠牲者となる、美容師の川原美幸（再見に際しての注：主までは判らないがアテレコである）。玲子と美幸とでプレイのバリエーション自体は全く変らないが、女優のタイプがまるで異なるので飽きさせられることもなく楽しめる。一体何時になつたら、どういふ形で出て来るのか全く読めなかつたミュウは、辛うじて送信された玲子からの助けを求めるメールを受け、本村の居場所を求め奔走する宮本が辿り着いた、本村の前妻・ひとみ。やさぐれた年増女の爛れた色香を、いい感じで爆裂させる。加藤智明は、結婚相談所の担当者・中村信治。この人には、女優と絡むといふ一切の旨味はない。ラスト・カットに、本村の新たな犠牲者ともなるのか、いい感じのメガネ娘が後姿からだけ登場。小松麻美か矢野真麻か？玲子もラスト・カット後姿だけのいい感じのメガネ娘も、結婚相手候補の男と初めて会はうとする段に、ドレスを着て来いとはいはんからもう少しキチンとした格好では来れないものか。メガネ娘など、動き易さが全開だ。

　ここから先は、映画自体の中身とは全く関係ない余談である。今作は一応ホームグラウンド、福岡市は博多区の駅前ロマン（＠プロジェク太上映）ではなく、北九州市は八幡東区に現存する残り僅かな奇跡、前田有楽に遠征して観て来たものである。駅前ロマンは新日本映像（母体会社）公式サイトにも記載のある、一応純然たるエクセス系列館の筈にも関らず、終に駅前に先駆けてエクセス新作が前田有楽にやつて来たものである。駅前ロマンと前田有楽に関して改めて幾つか補足しておくと。駅前ロマンはプロジェク太上映につき、といふ便法でもなからうが、三本立ての内通常一二本、悪い時は三本ともVシネを上映してゐる、ピンクではなく。なかなかに、厳しい状況ではある。一方前田有楽はといふと、今時何でこのやうな小屋が現存してゐるのか不思議にすら思へて来るほどの、大衆娯楽としての映画全盛期の趣を今に伝へる古くからの小屋で、たとへば十一月に公開される「ALWAYS　三丁目の夕日」のパート2にどのくらゐ出て来るのかは判らないが、ロケ地として採用されてゐたりもする。