真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「欲情電車 狙はれたOL」(1992『痴漢電車 通勤下半身』の1998年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/脚本・監督:橋口卓明/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:フィルム・クラフト/助監督:今岡信治/監督助手:本多英生/撮影助手:飯岡聖英/照明助手:小田求/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:五月純・夏みかん・伊藤清美・杉本まこと・佐野和宏・榎本祥太・山田奈苗・林田義行・林田隆行・畠山学・山田孝鐘・伊藤剛正・山本拓)。出演者中、榎本祥太以降は本篇クレジットのみ。
 プアンと画面手前に進行する山手線のショット噛ませて、手短にタイトル・イン。混み合ふ通勤電車の車中、白鳥悠(五月)は殊更に体を密着させた恋人の今川(杉本)の興奮を看て取るや、自らズボンの中に手を差し入れる。今川も応戦したはいいものの、開巻の相互痴漢電車。抑制的な演出の結果、互ひに下半身を弄(まさぐ)る―だけの―画に、単調な走行音のSEが延々被さるのは少々厳しい、そんなに観客を眠らせたいのか。元々悠は今川と同じ会社のお茶汲みOLであつたが、キャリア志向から派遣社員に転進。その選択が、果たして正しかつたのかはさて措き、その日が悠の初出社日。絶妙に細部は詰められない、見た感じ編集部的な新天地。セクション長の越智(佐野)は、ロクに仕事もせずにのつけから悠を注視する。上昇志向の悠とマイペースな今川が何気に対立する中、たまたま今川がかけた公衆電話に自宅の悠が出損ねたタイミングで、今川の同僚、といふことは悠とも面識のある夏代(夏みかん)が声をかける。大胆な昼下がりのオフィス情事から悠は越智と急接近、一方、今川も夏代と何となく関係を深める。そんなある夜、連れ添つて歩く今川と夏代は、同様の悠・越智と交錯する。要は、知らぬは越智ばかりといふ寸法。
 昨今、本格的にエクセスと復縁したらしき地元駅前ロマンにこの期に着弾した、1998年新版。持論を繰り返すと、何はともあれ、未見の旧作と未知の新作との間に形式を除いた差異は、当サイトの中には存在しない。綺麗に擦れ違つた二人が、よくいへば起承転結の転部に相応しい強度とでもいふのか、直截には何気に壮絶なまでに無造作なアシストを受けひとまづ目出度くヨリを戻すまでを描いた物語。非現実的な夏代の行動も大概だが、実は更に凄まじいのが、ビリング下位に甘んじた伊藤清美の登板法。尺の折り返し地点前後を支配する、出し抜けにラバーマスク―しかも一旦被せられると、何故か自分では外せない仕様らしい―なんぞ持ち出しては、服を脱げだオナニーしろだ股を開けだと、越智が我儘放題をし倒す不倫の逢瀬の事後、ホテルで悠がシャワーを浴びる。次のカットが、旦那である越智にローションを塗つて貰ふ背中のアップから、伊藤清美が飛び込んで来る。伊藤清美!?悠と越智のSMテイストな夜は何処に消えたのよ。そのまま平然と穏当な夫婦生活を一幕、佐野和宏の出番もここまで。佐野和宏退場も兎も角、一見シレッとした繋ぎのどさくさに紛れて、とんでもない三番手の放り込み様をしやがる。木に竹を接いだのではない、カット跨ぐと木が竹に変つたのだ。ある意味凄い編集マジックであるのは間違ひない、感触的には殆どイリュージョン。最終的に全篇を貫く意図的に静か過ぎるトーンの中、派手な二手が地味に火を噴く。それはそれとして、悠と今川の復縁は夏代の箆棒な翻意の結果につき、電車痴漢は何の関係もなければ、二人の考へ方の相違が埋められた訳でも別にないよな。と一旦は、痴漢電車的にも、それを差し引いた裸の劇映画にしても、頂けない出来であらうと難じかけたところが、開巻を若干アレンジした、実質的には一歩進んだ形のオーラス相互痴漢電車。そんな、基本漫然としてゐるかと思へば所々では激しく仕出かした、よく判らない始終の末に、案外静かなラブ・シーンとして美しく成立してゐることには面喰ひつつ感心した。何といふか、良くも悪くも一筋縄では行かぬ不思議な一作である。

 配役残り榎本祥太以下は、悠派遣先社内と、欲情電車車内要員か。但し悠派遣先社内、最初に悠が越智の所在を尋ねる若い男は今岡信治?


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