真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「淫乱OL 思ひつきり抱いて」(2002『OL性告白 燃えつきた情事』の2014年旧作改題版/制作:セメントマッチ/配給:新東宝映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:佐藤吏/監督助手:下垣外純・井上久美子/撮影助手:岡部雄二/照明助手:広瀬寛巳/録音:シネキャビン/スチール:津田一郎/現像:東映化学/協力:未来/出演:佐々木麻由子・水原かなえ・河村栞・なかみつせいじ・竹本泰史・神戸顕一・入江浩治・樹かず・色華昇子・小川隆史・つーくん・山ノ手ぐりこ・川瀬陽太)。出演者中、色華昇子から山ノ手ぐりこまでは本篇クレジットのみ。
 無人のブランコを一拍抜いて、手短にタイトル・イン。税理士の神林尚彦(川瀬)は仕事先の「アセント・コーポレーション」にて、この半年で別人のやうに変貌したといふ野村美咲(佐々木)の溌溂とした姿に惹かれる。仕事に感(かま)け、疎かにしてゐた彼女・怜子(河村)をギタリストのヒロシ(入江)に寝取られ失意の尚彦は、今度は自棄酒を呷るバーにて、ホステスとしてアルバイトする美咲と再会。尚彦は口封じ兼意気投合した美咲宅に要は連れ込まれ、そのまゝ熱い一夜。そんな据膳、僕も装つて欲しい、下戸だけど。仕方のなさ過ぎる与太はさて措き、翌朝美咲から二月一ヶ月間―限定―の恋人を申し込まれ、当然釈然としない尚彦に、実家から送られて来た苺のお裾分けを持つて来た美咲の親友でオカマのミチヲ(なかみつ)は、尚彦が先月の―恋人―よりずつとマシ、今までで一番いゝとタイミング抜群に外堀を埋める。
 配役残り神戸顕一は、尚彦に対する美咲のイントロダクションも担当するアセントの経理部長・船戸。竹本泰史は後輩の尚彦と「N&K税理事務所」を共同経営する、Nこと中里功一。これ尚彦のイニシャルがNKで中里はKNなので、この二人何れかが去る形で袂を分かつた場合でも、何とか事務所名を変へず続けてゐられる。水原かなえは、中里の婚約者・由里枝。樹かずが、美咲の“一月の恋人”・西村。色華昇子から山ノ手ぐりこ(=五代暁子)までは、ミチヲ四十の誕生日パーティー要員。この中で唯一名つきの小川隆史は、ミチヲの彼氏・マサオ、マサヲかも。問題が、遡つて尚彦が美咲と双方驚きの再会を果たすバー。カウンターで一人酒の尚彦背中のボックス席、二人連れの客は片方が佐藤吏なのでもう一人は多分下垣外純にしても、美咲にカウンターの接客をするやう促すホステスが不明、演出部にしては普通に華がある。協力の未来といふのが、人なのか店なのか何の名前か判らない。
 池島ゆたか2002年第一作、「スウィート・ノベンバー」とかいふ評判の悪かつたデートムービーの翻案らしいが、そんな代物評判が良からうと悪からうと俺様の知つたことか。ラジー賞を獲得したとか聞くと臍の曲つた琴線もくすぐられつつ、実際に観るなり見れば珠瑠美の方がまだしもマシに決まつてゐる。女の裸もあるし、尺も半分近く短いし。捻くれた閑話は休題、因みに劇中が九月ではなく二月なのは、公開月に合はせて。月毎に恋人を変へる奔放な女と、女に見初められた、引つ込み思案の男。やがて明かされる、女のありがちな秘密。後述する、常にも増して主演女優ありきの企画であるにも関らず、佐々木麻由子よりも、相手役の川瀬陽太の方が寧ろ輝く。楽しむだけ楽しんで今際の間際は綺麗言を投げてオサラバだなどと、最終的には身勝手なアタシ探しに明け暮れる美咲の姿が、個人的には感情移入に難い。代つて美咲との出会ひを通して一皮剥け、一途に突つ込んで来る尚彦の青さを残すエモーションにこそ、激しく胸を揺さぶられた。「二月は終らない」、そんなダサいのかカッコいゝのかよく判らない台詞を、静かなる渾身で撃ち抜く川瀬陽太の愚直なカッコよさが、この映画のハイライト。終らない、終らせない。時空をも歪めよ、馬鹿の純情。何てロマンティックなんだ・・・・何ィ、元々甘ノベにもある台詞?だからそんなこた知らねえよ(#゜Д゜)

 すつかり忘れてゐたが、今作は当初佐々木麻由子の引退花道作であつたさうである。そもそも、人気ゆゑ旧作が常時上映され続けてゐるうちに、何時の間にか復帰し目下も現役の佐々木麻由子が、一旦引退してゐたことすら忘れてゐた。ただあれは今世紀初頭か、佐々木麻由子出演作は客が呼べると、週刊誌にも採り上げられるほどのちよつとしたフィーバーが興つたのは覚えてゐる。尤も、覚えてはゐるものの、実感してゐはない。この期に及んで今更何だが、実は当サイト、佐々木麻由子があまり得意でない。その理由は、伝はる伝はらぬは兎も角言葉には出来る、広島の土の匂ひがするんだ。


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