真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「熟女ペッテイング とろける」(1994/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:双美零/企画:中田新太郎/撮影:千葉幸男/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:秋田健二/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・杉原みさお・林由美香・神戸顕一・杉本まこと・池島ゆたか)。
 嵐の東化玄関に、津山指圧診療院の看板。「それは三年前の夏の終り頃」、「私は師匠の津山悦郎からある秘儀を伝授された」。性的不能の治療を専門とする指圧師の津山悦郎(池島)と、弟子で元泡姫の梅子(しのざき)が対座する、屋内は今も御馴染津田スタ。津山家に代々伝はる古文書『経脈経穴絶倫奥儀』を持ち出した津山は、秘儀の伝授にはデンジャーも伴ふリスクを梅子に提示。限りなく男女の色恋に近い、師弟の一応信頼関係で双方腹を固めた流れで、文字を普通紙に白黒印刷しただけのタイトル・イン。貧相のその先に突き抜けて、寧ろアバンギャルドにさへ映らなくもない、映らねえよ。
 秘儀といふのが、要はもう片方の手で丹田を人工呼吸風に圧迫しつつ、利き手での前立腺マッサ。尻内模型の前立腺が、何故かウンコの如き造形。インポは全快させ得るものの、逆に健康者に対しては強過ぎる秘儀を被験した津山は、佐々共のやうなメソッドで目を見開きレイプゾンビ起動、殆ど一晩中梅子を犯す。翌日、自ら曰く“理性がなくなる”副作用を克服するつもりであつた、津山は自戒の置手紙を梅子に残し修行の旅に出る。三年後、即ち劇中現在。一人で津山指圧診療院を切り盛りする―ここでの患者部が今岡信治―梅子の下を、ソープ嬢時代の妹分・洋子(杉原)が弟子入りを志願し訪ねる。
 配役残り、チェッカーズみたいなジャケットで飛び込んで来る神戸顕一は、梅子が草鞋を脱いでゐたソープのオーナー・白子。白子の不能を梅子が治したのが、騒動の発端。ところで神戸顕一は確かネイティブであつたやうな気がするのだが、他地方人が下手糞に真似るやうな関西弁を操る。のと、この男は扇子ひとつ満足に畳めないのか。ほぼ純粋三番手の林由美香は、こちらもこちらで白子経由で津山流秘儀に首を突つ込む沙貴。そして杉本まことが沙貴とは駆け落ちる形で田舎を出て来た仲の、スケコマシ・中田。元々誇る絶倫を、世界一に加速せんと目論む。更に榎本敏郎と津田一郎が、患者部に追加。自宅以外に津田一郎当人が見切れるのは、滅多にないことにも思へる。
 北沢幸雄と杉田かおりの買取系ロマポに偏りを覚え、箸休めに渡邊元嗣1994年第三作。jmdb準拠だと、前作「いんらん熟女 濡れ盛り」(渡邊元嗣名義/脚本:双美零/主演:しのざきさとみ/ex.DMM未配信)が渡辺と渡邊の境目に当たる。今後の展開は当サイト的には柴原光のピンク第二・三作をコンプ戦、一方大蔵がバラ売りに新着させた旧作を、かつてない早さで月額に放り込んで来る。
 梅子の下で修行を始めた洋子こと杉原みさおの、判り易く含みを持たせた表情に伏線の気配を感じかけたのも本当に束の間。勃起不全に苦しむ婚約者の存在を騙るに至つては、馬鹿にアッサリ割るんだなと呆れかけたなほ一層矢継ぎ早、洋子の動機が単なるナンバーワン売れつ子に過ぎなかつた時点で、物語的に膨らむなり転がる余地は概ね閉ざされ、実際結果的に膨らみも転がりもしない。元も子も、実も蓋もない。津山なり梅子の真心も、所詮は為にもし損なふ方便。秘儀の施術に際し、梅子が一々脱ぐはおろかローションまで持ち出すかと思へば、梅子V.S.白子戦では前立腺を刺激する毎にチリンチリンと鈴の音を鳴らし、インドに気触れた、もといインドで修行して来た津山は、適当にフラワーな扮装で南酒々井に帰国する。ある意味色気を捨てた、より直截には映画的な色気を捨てた潔い裸映画は、時に地を穿つまで底を抜く。一ッ欠片たりとて別に面白くもないものの、決められた尺をサックサク見させる。完成形でも到達点でも何でもないにせよ、それはそれとしてそれでも、量産型娯楽映画ひとつの然るべき姿。唯一軽く心が残る不足感を感じさせるのは、津山流秘儀で風俗界の女王―なんだそれ―に上り詰める野望まで開陳しておきながら、以降一切全く通り過ぎられる沙貴の去就。尤もその点に関しても、三番手の宿命に殉じた、気高く咲き美しく散るバラにも似たエモーションが窺へなくもない。


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