真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻投稿写真 不倫撮り」(1990『特別企画 ザ・投稿写真』の2009年旧作改題版/企画・株式会社旦々舎/製作・(株)メディア・トップ/配給・新東宝映画/監督・浜野佐知/脚本・山﨑邦紀/撮影・河中金美、田中譲二、横山健二/照明・田中明、石山一三/音楽・藪中博章/編集・金子編集室/助監督・磯崎太郎/車輌・田島正明/制作・鈴木静夫/録音・ニューメグロスタジオ/現像・東映化学工業/出演・外波山文明、杉村みはる、小川さおり、柳沢あおい、早坂亜澄、岡野由衣、平賀勘一、南城千秋、秋川ねずみ)。出演者中秋川ねずみは、本篇クレジットのみ。
 カメラ小僧の舟木(南城)が、恭子(早坂)か智美(柳沢)か理恵(岡野)に「写真撮らして呉れませんか?」と声をかけると、あれよあれよといふ間に舞台をラブホテルに移してのいはゆるニャンニャン写真撮影に突入。嗚呼、何とインスタントな世界よ。「パンティ下ろして貰へますか?」、といふ舟木の求めに応じ女が有難味の正直薄い尻を見せたタイミングでタイトル・イン。ところで初めに潔くシャッポを脱ぐが、早坂亜澄・柳沢あおい・岡野由衣の三名に関しては、清々しく手も足も出せずに特定不能。何れも折に触れ登場する、舟木被写体の皆さんである。ここで「カメラは愛の小道具」とかいふ舟木が、女に持たせたカメラを自らに向けさせた上での、迷台詞も通り越したチン台詞、「僕のポコチン写真、カッコいいでせう?」。日本映画史に残、らなくとも別にいい下らなさだ、何がポコチン写真か。ここは流石にアホかと、山﨑邦紀にツッコまざるを得ない。続けて舟木は、全く代り映えのしない手口で由美子(杉村)を攻略する。それにつけても、こんなに特に美人でなければ、別にスタイルがいい訳でもない主演女優は初めて観た。“初めて”といふのは些か言葉が過ぎたか、主に新田栄の映画で何度も観てゐるな、訂正すると久し振りに観た。話を戻して、外回り中にベンチに腰かけ缶コーヒーで一息つかうとした紀和多(外波山)は、傍らに放置されてあつた『投稿写真』誌を戯れに手に取つてみたところ驚愕する。局部修正に加へ目線も入れられてゐるものの、妻に酷似した女の痴態を捉へた写真が掲載されてあつたからだ。以降『投稿写真』誌以外にも、『スーパー写真塾』誌・『熱烈投稿』誌の実誌が一部紙面まで含め劇中に登場する。エロ本編集者であつたといふ経歴を持つ山﨑邦紀の、人脈を活かしたギミックか。血色ばんで帰宅した紀和多は『投稿写真』誌を突きつけ妻の由美子を問ひ詰めるが、当然一旦由美子は否定する。どうしても納得が行かぬ紀和多は、目線を入れる前の写真を見せて欲しいと編集部に乗り込む。編集長(秋川ねずみ?)は最初は固く断りつつ、夫婦が崩壊するや否やの瀬戸際だと懇願する紀和多の勢ひに負け、送られて来た状態の写真を見せる。果たして、写真の女は案の定由美子であつた。流石に写真の投稿者の素性までは信義にもとると編集長も明かさないまゝに、ネガではなくプリントされた写真を送つて来る投稿者は、レンタル・ラボ―日本語でいへば貸し現像室―を使つてゐる筈だといふヒントを紀和多に与へる。
 とかいふ次第で紀和多が舟木をボコッてケジメをつけた上で、由美子とは離婚だと、舟木の顔を知る由美子を伴ひ張り込み始める物語は、今にしては甚だ奇異にも映るが、紛ふことなき外波山文明が主人公の物語だ。何となればこの映画を撮つたのが、目下女の側から、女が気持ちよくなるためのセックスを描くことを一貫して頑強に旨とする、浜野佐知であるからである。レンタル・ラボ前に終に現れた舟木を、マウント・ポジションまで取つて豪快に殴り続ける―ここのアクションが、何気に見事である―紀和多に割つて入る変な長髪の平賀勘一は、舟木とは顔見知りでもある同好の士・大原。大原は舟木に詫び料を納めさせる旨を約束させた上で、紀和多を自宅に招く。同年サトウトシキの映画にも主演作があり、今作中唯一女優の顔をしてゐる小川さおりが、大原の妻・澄江。大原はマニア世界への理解を求めるべく、紀和多の前で夫婦生活を展開してみせカメラを向けさせる。大原の狙ひ通り開眼したのか、舟木から得た三十万でカメラを買つて来た紀和多が改めて撮つた由美子の写真を投稿すると、首尾よく掲載。さういふ次第の、ミイラ取りがミイラになりましたといふ類のマニア改め変態さん誕生譚かと思ひきや、不貞を働いた妻との離婚は依然既定らしく、紀和多は自らの写真投稿は由美子に対するお仕置きであると強弁する。何時まで経つても由美子が主体性を一切発揮しないばかりか、1990年当時にしても前時代的と思へなくもない、高圧的な紀和多が竹箆を返されるでもなく主軸であり続ける物語を、何でまたほかでもない浜野佐知が撮るのかと面喰つてもゐると、夜空の下の屋根の上、パンツ一丁の外波文が挙句ガッツポーズで満月に向かつて狂騒的に高笑ふ。などといふ無茶苦茶な画で無理矢理畳み込む怒涛のラスト・ショットには、正しく度肝を抜かれてしまふ以外にない。これでは殆ど外波山文明といふよりは、清水大敬の役だ。小川さおり以外の女の出演者―正直“女優”といふ言葉は、最早使ひたくない―は何処から連れて来たのかまるで判らない有象無象揃ひ、お話に関しても監督が浜野佐知であるといふ意外性をさて措けば特段見るべき点がある訳でもないのだが、オーラスの出鱈目な振り逃げで、無闇に印象に残る一作ではある。直截にいふならば、全方位的にいはゆる珍作といへよう。

 因みに今作は2002年に少なくとも既に一度、「エロ雑誌の女 悶える花芯」と旧作改題されてゐる。


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