真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「変態家族 碧い海に抱かれて」(2018/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:中尾正人/録音:光地拓郎/編集:山内大輔/音楽:Project T&K/音響・効果:AKASAKA音効/特殊メイク・造形:土肥良成/特殊メイク・造形助手:串淵徹也《spitters》・江沢友香《spitters》・長谷部美月/助監督:江尻大/ロケコーディネーター:リチャードTH/撮影助手:戸羽正憲/スチール:本田あきら/監督助手:村田剛志/演出部応援:菊島稔章・小関裕次郎/協力:はきだめ造形・風酔苑、他/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:涼川絢音・霧島さくら・伊織涼子・ほたる・川瀬陽太・森羅万象・竹本泰志・世志男・和田光沙・細川佳央・リチャードTH)。土壇場の情報量に力尽きる。
 波打ち際と、夕焼けショット。日没の早回しに、俳優部が先行するクレジット起動。先に片付けておくと、タイトルは後述するオーラス前に入る。浜辺に二人の女が倒れてゐるロング、画面奥の女が起き上がり、生まれたての小鹿ばりに覚束ない足取りで歩きだす。女が草叢の中に消えると、一転タワーマンション。資産家の三沢(森羅)が、子連れの中年女・容子(伊織)と結婚する。三沢が初婚なのか何度目かなのかは、必ずしも明示されない。容子の連れ子・サユリ(霧島)と三人の、一見如何にも幸福さうな朝食。ところがサユリは小遣ひの無心を断られるや、脊髄で折り返して粗暴な本性を現し家を飛び出して行く。お前の躾が悪いと称しての、朝つぱらからエロい通り越してどエグい夜の営み。容子の乳首を一頻り執拗に責めた上で、観音様に手を伸ばした三沢は「もうビッショビショぢやないか」。森羅万象がビショビショの最初の“ビ”に叩き込む極大のアクセントが、極めて陳腐な紋切型をも決してさう聞こえさせない。一方佐藤(世志男)と援交したサユリは、事後惨殺される。
 配役残り竹本泰志は、再起動後ヒョッコヒョッコ奇怪に移動するミカヨ(涼川)を、結構なスピードの軽トラで撥ね犯す高橋。強盗ならぬ昏睡強姦といふ寸法にしても、加減を仕出かすと殺してまふぞ。話を高橋に戻すと山本宗介のスケジュールが合はなかつたのか、片腕格の真木がゐないだけで造形は殆ど変らないが、一応堅気。ほたるは、今度こそな完璧な家族を求める三沢の飽くなき再婚相手・シズエ、ミカヨがシズエの娘。綺麗にオラッた細川佳央は、ミカヨの彼氏・準一、この男は明確に組に草鞋を脱ぐ。デジタル前後以降の現代ピンク男優部山宗に次ぐ第二の男は、所詮抽斗はひとつきりの櫻井拓也よりも、地力が違ふ細川佳央であると看做すのが適当であるやうに思へる。川瀬陽太はミカヨのチョイスで三沢家が家族旅行で訪ねる、予約客が本当に来ると驚かれるペンションならぬペンシ~ョン「風酔苑」主人・吉井。先輩後輩ではなく、高橋とは今回高校の同級生。リチャードTHは、吉井がミカヨの働き口を乞ふ山羊牧場のをぢさん。ところで風酔苑は実際には、リチャードTHことRichard Ventnerが営むタイ式マッサージ店。となると、リチャードTHのTHはタイのISO国別コードなのかも。そして不脱の和田光沙は、高橋の妻にして、吉井の元妻・明恵。
 四週間後封切りの「再会の浜辺 後悔と寝た女」―物語的には全く別個のお話らしい―と沖縄ロケ二本撮りで涼川絢音引退企画を成す、山内大輔2018年第一作。今上御大の伊豆映画ほどではないにせよ、山内大輔も沖縄づいてゐる印象を何となくか勝手に持つてゐたものだが、改めて振り返つてみると、「情炎の島 濡れた熱帯夜」(2015/主演:朝倉ことみ)があるのみで今作が二本目なのね。それと、“変態家族”といふと周防正行デビュー作「変態家族 兄貴の嫁さん」(昭和59/主演:風かおる)と相場が決まつてゐる感は否めなくもない中、山﨑邦紀の「蜜まみれ変態家族 ~いぢりあひ~」(山崎邦紀名義/1995/主演:桃井良子)や、深町章の「いんらん家族 花嫁は発情期」(1992/脚本:周知安=片岡修二/主演:桜井あつみ)の、剽窃セルフリメイク「変態家族 新妻淫乱責め」(2005/主演:山口玲子)もあるどころか、そもそも関孝二―御齢百六歳!?―の無印「変態家族」(昭和47)が存在するのは知らなかつた。
 裸映画的には伊織涼子が超豪快なスタートダッシュを爆裂させつつ、サユリは別に感じてなどゐない体で、霧島さくらは折角か格好の即物的な素材を、量的には兎も角概ね持ち腐らせる。以降はドラマの展開により重きを置き、場数だけならばこなす割りに、主演女優の裸が一番薄味の印象。尤も涼川絢音が浮世離れた存在感は確かに輝かせる反面、スタイル自体お人形さん的過ぎるのか、日常的な訴求性ないし煽情性は逆に感じさせない人ゆゑ、さういふ女優部先行逃げ切りは構成なり戦法としてそこそこ有効。アスファルトよりも、下が土だとなほさら加速する川瀬陽太の持ちキャラに、飛躍の高い台詞も頑丈に固定してのける、和田光沙の張りと独特の揺らぎとが器用に同居する案外稀有な発声。当然スクリーン映えする、抜けのいいロケーション込みで諸々見所もあるものの、南の島に銘々の欲なり憤怒なり、要は一言で済ますと愛憎が熟れる始終が最終的には一本調子。充実した70分を見せながらも、後には特に何も残らない。量産型娯楽映画的には、それが元来然るべき有様であるのかも知れないけれど。ハッピーなエンドに例によつて冷水を浴びせる、開巻に違へ、死に位置が劇中推移に則してゐるオーラスに関しては、山内大輔の素直に映画を畳むと死んぢやふ病―あるいは親が死ぬ呪ひ―に釣られるだけ馬鹿馬鹿しい気さへして来た。


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