真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「三十路秘書 太股ご接待」(1995『人妻秘書 肉体ご接待』の2002年旧作改題版/製作:ルーズフィット/提供:Xces Film/監督:山岡隆資/脚本:七里圭/プロデューサー:真田文雄/撮影:河内洋/照明:赤津淳一/編集:菊池純一/助監督:七里圭/監督助手:西村和明・黒川幸則/撮影助手:伊藤直人/制作進行:岡元啓/スチール:宮澤豪/録音:福島音響/タイトル:道川昭/現像:東映化学/出演:白井麻子・荒木太郎・寺十吾・菅野敬子・辻かりん・貴奈子・小林節彦)。出演者中菅野敬子は、本篇クレジットのみ。
 メランコリックなギターが鳴り、製作のルーズフィットのみクレジットしておいてタイトル・イン。新聞をスクラップしてゐる風の曜一(荒木)の背中に、妻の杏(白井)が先に寝るねと声をかける。シャキシャキ淀みなく進んでゐるものの、斜めに走つてみたりと明らかに不自然な鋏の軌跡に、そこはかとない不安感が掻きたてられる。耳鳴りを訴へ寝室に倒れ込んで来た曜一を杏は再び仕事部屋に急きたて、夫婦生活即ち絡み初戦を十全に完遂する。翌朝、並木道を軽快にチャリンコをカッ飛ばして寺十吾登場。杏と曜一の兼住居は曜一が社長の「news fax servis」と、曜一の友人・靖幸(寺十)が社長の「《有》ほかほか人材派遣」の共同事務所。「news fax servis」の業務内容は、靖幸いはく“新聞切り抜いてファックスするだけ”。それで―幾許かの注釈なり何某かの再編集は加へられてゐるみたいではある―どうやつて金が取れるのかよく判らないが、曜一の作業は滞り、顧客の片岡システムからの催促の電話は鳴り止まない。外回りがてらと称して片岡システムに出向いた靖幸は、社長の片岡(小林)に貴奈子を紹介する。何のことはない、ほかほか人材派遣もほかほか人材派遣で、要はデリであつた。相変らず不安定な曜一は一旦帰宅後、代りに杏が仕上げて送つたファックスに目を落とすと、杏が薬缶の火を止めてゐる隙に姿を完全に消す。
 配役残り辻かりんは、劇中登場するもう一人のほかほか嬢・ヨシコ、靖幸の恋人でもある。脱ぎもしないのにビリング上位、且つオープニングでは四人ばかりのクレジットにも紛れ込む菅野敬子は、関係は最後まで語られないが家を出た曜一が転がり込む先の女・リョーコ。
 シネマアイランドなりルーズフィットなり、ザックリいふとエクセスのアート班界隈で名前を見かける山岡隆資の唯一作。Vシネにせよ、活動の痕跡は前世期までしか見当たらない。何はともあれ驚いたのが、寡聞にして全く知らなかつた。主演女優の白井麻子が何処かで見た顔もへつたくれもない、一旦引退するまでと全然変らない工藤翔子、元々白井麻子名義でタレント活動をしてゐたらしい。ロングの多用と今となつてはむず痒さを覚えなくもない、背景のアタック音。当時の自主映画界の花形?菅野敬子を―しかも選りにも選つてエクセスに―招聘してみせたりする辺りに、才気走つた風情は窺へる。さうはいへ、ラストは上手くリョーコに匙を投げさせる、三人が何となく三人で生きて行く姿はあくまで何となくの範疇に止(とど)まり、その何となさが琴線に触れる向きも当然あらうが、一見娯楽映画にしては始終の求心力は終に心許ない。寧ろ、さうした中でも質・量とも濡れ場だけは十二分に揃へ、ひとまづ裸映画的には過不足なく仕上げさせて来るエクセスのレーベルとしての誠実が、反照される形でより際立つて来るやうに思へるものである。


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