真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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アナーキー・インじやぱんすけ/ex.DMM戦
さ行
/
2021年06月24日
「
アナーキー・インじやぱんすけ
」(1999/製作:国映株式会社・新東宝映画株式会社/配給:新東宝映画/監督・脚本:瀬々敬久/企画:朝倉大介・森田一人/プロデューサー:衣川仲人・福原彰/音楽:安川午朗/撮影:斉藤幸一/編集:酒井正次/助監督:菅沼隆/監督助手:吉田修/撮影助手:佐藤文男・田宮健彦/応援:坂本礼・堀禎一/録音:福島音響/タイミング:安斎公一/タイトル:道川昭/ポスター写真:佐藤初太郎/現像:東映化学/協力:中尾正人・横井有紀・羽生研司・松岡誠・ブロンコ/出演:佐々木ユメカ・佐野和宏・下元史朗・諏訪太朗・佐藤幹雄・奈賀毬子・飯田孝男・薊千露・沢田夏子・いずみゆきこ・七瀬ミオ・川瀬陽太・浅野忠・日野悦子・早川恭平・末広ゆい・上野俊哉・細谷隆広・梶野考・関根直人・坂本匠吾・港雄一・田中要次・飯島大介)。
葉を落とした枝越しに煤けた空、卒倒するかの如くぐらんぐらん動いた画が佐野和宏に辿り着いて暗転、下の句“見られてイク女”はオミットしてのタイトル・イン。佐野が誰かしらに銃を向けるロング、震へながら、撃鉄を起こす。銃を向けられてゐるのは、薄笑ひの佐藤幹雄。佐野が撃ち佐藤幹雄が崩れると、ブレイクビーツの本格的な起動とともに車載のカメラがドカーンと引き、「ヒーローにはなり損ねた」。重低音と色気がバクチクする佐野の口跡でカッコよく聞かせなくもないものの、少年野球時代の他愛ないエピソードを語つた、別に大した中身もない佐野和宏によるモノローグ。略してサノローグを聞かせつつ、チャリンコを漕ぐコンビニ店員―シレッとミニストップが実店舗登場―のタツトシ(佐野)に新聞拡張員のグミョウジ(下元)、とベスパをブリブリ鳴らす、葬儀屋・ナカザト(諏訪)の不良中年スリーショットが何気に爆裂する。サノローグが一旦終るにつれ、車載は猛スピードで木に逆戻り、激突ぽく暗転して1981。悪い病気でも貰つたか余程の荒淫が祟つたのか、妊孕能を喪つた泡沫俳優部のミズキ(佐々木)は当てらしい当てもなく帰郷。再会した同級生のヨシムラ(後述)と偶さか寝た末、青姦夫婦・福田(飯田)と恵子(薊)の車に残された赤ちやんを攫ふ。こゝでこれからオッ始めようといふ福田夫妻が、山の中で先に停まつてゐたミズキの車のすぐ隣に停めるのは、些か不自然か不用意ではあるまいか。閑話休題、名義二題。この期に気づいたのが、薊千露が改名した恵千比絽から名義を戻してゐる。それとヨシムラ役はユメカと絡む点からそれなりのビリング上位も予想されるゆゑ、浅野忠かなあ?人様の芸名に巨大な世話の難癖をつけるが、検索して捜さうにも浅野忠信の影に埋れるほかない名義はどうにかして欲しい。
一般映画みたいな頭数に頭を抱へた配役残り、ミズキが診察を受けた、画面奥に霞む医師は端から識別不能。川瀬陽太と七瀬ミオはミズキが子供を産めなくなつた恨み節を川瀬陽太に垂れに来た、いはゆるキメセク中のパンクス。1989、ミズキは攫つた男児をヨシキと名づけ、泡姫の女手ひとつで育ててゐた。ヨシキ子役は、消去法で早川恭平と関根直人だと、末広ゆいと並ぶ限界的ビリング推定で早川恭平かなあ??フリーダムなタツトシに手を焼くもう一人若いミニスト店員と、賭け卓球で爆殺されたタツトシが、グミョウジとナカザトの分も払ふ特殊浴場のフロントは判らん。沢田夏子といずみゆきこは、待合室にミズキと一緒に現れる、ソープ嬢のユキとハルカ。沢田夏子と佐々木ユメカにいずみゆきこが三人で出て来るなんて、どんな超ハイエンド最高級店なんだ。タツトシがヨシキの指導を受ける、卓球場に見切れるその他子役部四人は、本クレに載つてはゐなささう。日野悦子は旅行中に倒れて搬送されたタツトシ母、港雄一が父。上野俊哉は、公開題下の句を体現するミズキに乞はれタツトシが致す野外対面立位に、気を取られガン!と道路標識に傾けるほどぶつかる人。細谷隆広はグミョウジとナカザトを返り討ち調子に乗るタツトシが、対戦を挑む卓球クラスタ、練習相手の髭も判らん。最大の難問が、ヤクをキメたグミョウジに新聞拡張を装ひ犯される、五代尭子似の団地妻役に該当する名前がどうしても見当たらない、一応乳尻を拝ませるにも関らず。実子を失つた福田夫妻は、男の子でなく何故か女の子の養子を迎へてゐた、末広ゆいが施設から引き取られたマリの女児ver.。1999、何時の間にか回転式を手に入れてゐたヨシキ(佐藤)は、マリ(奈賀)が煙草を吸ふジャングルジムに車で乗りつけると、チャカッとチャカを向け狂言誘拐。田中要次と飯島大介が刑事部、福田家にて咥へ煙草で電話を待つ様に、軽く度肝を抜かれる坂本匠吾は逆探知担当。坂本匠吾が、現在は実家の珈琲屋を継いでゐる。見れば判る筈の、梶野考(a.k.a.征木愛造)が何処に出てゐたのか見切れなかつたのが無念。
国映大戦
第三十八戦はこれまでも別にバラ売り素のDMMで見られなくはなかつたが、最近再起動した俺達のインターフィルムさんがex.DMMのサブスクに放り込んで呉れた、瀬々敬久ピンク映画第十八作。外堀的には前々作「
黒い下着の女 雷魚
」(1997/井土紀州との共同脚本/主演:佐倉萌/75分)以降、ゼゼピンクは従来のフォーマットから限りなく外れ、今作の尺は標準的なロマポばりの68分、それでも前二作よりは短い。前作「
汚れた女“マリア”
」(1998/井土紀州との共同脚本/主演:吉野晶)に至つては「雷魚」よりも更に長い、横紙を破るどころか燃やす80分。アワード方面では田尻裕司第二作「
OLの愛汁 ラブジュース
」(脚本:武田浩介/主演:久保田あつみ)に、第十二回ピンク大賞に於けるベストテン一位の座を譲つてゐる。小屋で何度か観てはゐたが案外今回が一番面白かつたので、次作の「トーキョー×エロティカ」(2001)も近々攻めてみるとしよう。
すつかり肥えた薊千露含め実は倍増の女優部が脱ぎこそすれ、一番マシなビリング頭でも濡れ場は何れも散発的か瞬間的に止(とど)まり、棹が勃つ勃たない、ないし勃てる勃てないの類の映画では、初めからないものと看做すなり諦めるのが相当だらう。となると、本来ならば当サイトの嗜好的にはふざけんなゼゼと怒髪冠も衝きかけるところが、さうはならないのが佐野和宏×下元史朗×諏訪太朗、三十を跨いでなほ信頼に足るオッサン三連星が轟音で撃ち抜き倒す、ジェット・ストリーム・アタック連打が兎にも角にも芳醇にして超絶。黙つて三人並んだ画だけで既に最高でしかないのだが、ヤク中のグミョウジとアル中のナカザトに対し、若干―でもないけれど―やさぐれただけのタツトシが寧ろ一番マトモな、遣り取りが全部アドリブに聞こえかねない息の合つたビート感が格別で濡れる、何処が。謎団地妻を犯したのち、商店街で屹立するグミョウジがやがて脱ぎ始めオムツ姿で駆け抜ける、表情は窺へない距離を、佇まひのみで完全に壊れた狂気を滾らせる長回しの途轍もない凄まじさには改めて感嘆した。反面ミズキが展開の動因に過ぎなくなるのは兎も角、佐藤幹雄が佐野と史朗と諏訪について行けてゐないのは流石にある意味仕方なく、ラストの失速は否めなくもない。終に時の輪が接して、時間の流れが1999年で止まるオーラスを如何に理解したものか桃色に煮染まつた脳にはこの期に及んでも矢張り手に余るが、キービジュアルを成す、一本道を割る形で生えた幻想的にフォトジェニックな木は、アバンを今際の夢に繋ぎがてら、衆生の生滅遷流を唯々見守る常世の視点をも感じさせる。
蛇の足< この手の映画にしては珍しくといへるのか、リボルバーの装弾数が仮に五としてもギリ破綻してゐない
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