真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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(秘)追跡レポート 初夜の性態/ex.DMM戦
や行
/
2020年11月26日
「
《秘》追跡レポート 初夜の性態
」(昭和49/製作:プリマ企画株式会社/監督:代々木忠/脚本:鳴滝三郎/制作:藤村政治/企画:渡辺忠/撮影:久我剛/照明:近藤兼太郎/編集:中島照雄/音楽:多摩住人/助監督:城英夫/効果:秋山サウンド・プロ/制作主任:大西良夫/制作助手:奥野清/監督助手:安部峯昭/小道具:高津映画/衣裳:京都衣裳/現像所:東洋現像所/録音所:大久保スタジオ/協力:南伊豆下田温泉 下田海浜ホテル/出演:堺勝朗・桜マミ・石井梅淋・くるみ夏子・市村譲二・丘マヒロ・野上正義・石橋和子・西山由美江・木村典子・山下りよ・河野亜紀・佐藤弓子・田中明・中野悦)。企画の渡辺忠は、代々木忠の変名。
多分伊豆急下田駅に到着した総勢十数名の新婚旅行客を、大絶賛実名登場「下田海浜ホテル」の番頭(堺)が出迎へる。マイクロバスに一同を乗り込ませるに際し、堺勝朗が尻を女は何気に触り、男には蹴りを入れる小ネタが芳醇。盛況にほくそ笑む番頭が、指を鳴らしてタイトル・イン。観光的なタイトルバックに、選曲は大正義メンデルスゾーンの「結婚行進曲」。クレジットが協力に差しかゝるタイミングで、車がバシッと下田海浜ホテルに到着するロングまであまりにも完璧。最後に文字情報だけテローンと流すよりも、かうして一仕事構築してみせる方が、余程気が利いてゐるやうに思へる。
主にフィーチャーされる新婚さんは三組、何処かしら書店の令嬢である宮沢夏代(桜)と、使用人から婿養子になつた旧姓井上の司郎(石井)妻夫。銀行員の青木功介(市村譲二/a.k.a.市村譲)と見合結婚した美江(くるみ)夫妻に、ともに童貞と処女の、田代正夫(野上)と友子(丘)夫妻。ここで丘マヒロが、代々木忠前作「
セミドキュメント スケバン用心棒
」(脚本:林崎甚/構成:佐々木忠=代々木忠/主演:五十嵐のり子)に於ける、パイ子役の織田政代と同一人物。織田政代で検索してみてもスケバン用心棒しかヒットしない一方、丘マヒロはまひろ名義で他作にも出演してゐる形跡が窺へるゆゑ、織田政代といふのは、恐らく劇中での役名なのではなからうか。特段の意味もなく序盤を駆け抜ける膣痙攣カップルの、女は恐らく確実なビリング推定で石橋和子。その他ハネムーン部以外に海浜ホテル要員も若干名登場するので、クレジット分のみでは頭数は全然足らない。
概ね海浜ホテルに籠城した上で、各々悪戦苦闘する三通りの初夜―といふか初一昼夜―を描く、代々木忠昭和49年第二作。例によつて“追跡レポート”を謳ひながらも、純然たる通常の劇映画である。大体同時進行する、三つの絡みのクロスカッティングが頻繁すぎるのと無造作な繋ぎが甚だ不親切につき、しばしば誰と誰が致してゐるのか一旦釈然としなくなるのは、スケ用にあつても集団が集団的に動き始めるや、途端に何処を如何に撮つたものか判らなくなる、代々忠的にはある意味想定の範囲内。青木の一方的か不遜なサディズムに、不可思議な従順さで美江が籠絡されるのは相当高いミソジニ下駄を履かねば呑み込むに難く、ボロックスでも腫れてゐたのかおたふく風邪を理由に、田代が壮絶に難儀するところのこゝろもピンと来ない。尤も堂々と主演を張る堺勝朗以下、市村譲二と野上正義、鉄壁の男優部三本柱を擁し、特段面白くも全くないにせよ、モキュメンタリーでもない普通の量産型娯楽映画として始終はとりあへず安定する。夏代と司郎の上下関係が、一夜明けると見事に逆転してゐたりする展開は、綺麗に形を成す。帰郷したのち、殊に宮沢家方面から悶着の起こりさうな気配がしなくもないけれど。裸映画的には白粉臭さかバタ臭さが当時的には受けてゐたのか、時代の波を超えるには、桜マミが正直些かキツい。タップタプンのオッパイは猛烈に悩ましい、くるみ夏子のヒロミツ顔に関しては目を瞑れ。問題が、もとい問題ではない。特筆すべきなのが今でいふ両生類系の丘マヒロが、この人こんなに可愛かつたかなと目を疑ふほど、エクストリームに可憐で狂ほしいくらゐ可愛い。細い背中をシャンとして、黙つて座つてゐる佇まひだけでそれなりの画になり、田代と双方初陣同士で、ひたすらにどぎまぎる様には胸がキュッとなる、不整脈か?ただ如何せん相手がズーズーver.のガミさんにつき、力任せのフルスイングで情熱的な締めの濡れ場を除けば、これといつた美しいシークエンスに恵まれないのがアキレス腱。そこいら辺りをもう少し攻め込めてゐたら、記録には残らずとも、記憶に残る一作たり得てゐたのかも知れない。
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