真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「妻たちの宴 不倫痴態」(2017/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影監督:清水正二/撮影:海津真也/録音:小林徹哉/編集:山内大輔/音楽:大場一魅/効果・整音:AKASAKA音効/助監督:江尻大/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:宮原かおり/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎・山口雅也・杉本晋一/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/現場応援:松井理子/合コンの参加者:あぶかわかれん・藤岡範子・田沢麻紀・山ノ手ぐり子・宮木宏之・周磨要・中村勝則・太三/出演:成宮いろは・めぐり・佳苗るか・竹本泰志・牧村耕次・細川佳央・橘秀樹・野村貴浩・長野原万丈)。
 朝の中澤家、五日間のシドニー出張から帰国した広告代理店勤務の雄大(竹本)が、妻・夏海(成宮)の味噌汁に舌鼓を打つ。ところに、十七才高二の一人息子・海里(長野原)も食卓に着く。さういふ演技指導である可能性も大いに留保しつつ、越智哲也似の長野原万丈が、所作の全てがクリシェで構成されたある意味清々しい逸材。雄大が提案した、理想の家族を作るため家庭にセックスを持ち込まないとする、“パーフェクト・ファミリー”の理念に触れた上で三人のスナップにタイトル・イン。家でしないとなると、畢竟ヤリたい時は外で済ませて来る寸法に。夏海の最初の不倫相手は、海里が小学校に入り手の離れた十年前、始めたホームヘルパー先で出会つた田中(牧村)、田中が劇中現在存命であるや否かは不明。ここで飛び込んで来る池島ゆたかは、田中に観音様を見せて呉れるやう迫られ逡巡する夏海の背中を押す、十年前の更に三年前、「オメ・・・・コー!」と今際の絶叫を残して急死した夏海父。メチャクチャなことをいふと、池島ゆたかには実際さういふ死に様を見せて欲しい。話を戻して、床に臥せた牧村耕次の顔を、成宮いろはが中腰で跨ぐ画がまづ最初にクッソどエロい。客が見たいシークエンス、ショットを何はともあれ叩き込む、その姿勢はジャスティス。田中がジャブジャブ回春する濡れ場を大完遂、“パーフェクト・ファミリー”の半歩も前に進まない蒸し返しを適宜挿み込みつつ、雄大目下の不倫相手で、名家の玉の輿に乗つた浅田ミキ(佳苗)の絡みを経てめぐりがボイーンと大登場、はせずにおづおづ小登場。めぐりと強迫的な夫・市川(野村)の息詰まる夫婦生活噛ませて、ある日夏海は、実家時代お隣の涼子(めぐり)と再会する。
 配役残り橘秀樹は、涼子の心の拠り処、たるかに見せた不倫相手・岡田。二度目の出番では早川健みたいな箍の外れた扮装で現れるのは、それは私服なのか?何処で売つてゐるんだ。細川佳央は、「ライブ&バー Ruto」(四谷)で開かれた潤沢に頭数も用意しての既婚者合コンで夏海がミーツする、ボルダリングのインストラクター・内村タカシ、下の名前の漢字は判らん。
 限りなくピンクと変らない出来栄えと評判の一般映画第二作が公開されたばかりの、池島ゆたか2017年第二作。子供を扇の要に、作り物じみた家族像を構築・維持するには、家庭にセックスを持ち込まない、何故なら家族はセックスしないからだ。雄大が持ち出した“パーフェクト・ファミリー”なる奇怪な概念が、出発点にして到達点を堂々巡るばかりで終に外堀は微塵も埋められないまゝに、夏海的には派手にブッ壊れる涼子と、内村との修羅場。雄大は雄大で、ミキの多方向なサプライズ。超絶のタイミングで各々不倫が頓挫した中澤夫婦が、海里を授かつて以来の営みを再開するに至るラストは、双方が配偶者以外のセフレ漁りを謳歌する方便としてしか機能しない、“パーフェクト・ファミリー”が全く以て諒解可能な形にまで消化されない以上、大概な力技の筈なのに、案外どころでなくさうも見えない奇跡の大団円。素面といふ意味での裸の劇映画としてはアメリカンも通り越した殆ど水で、裸映画的としてはコッテコテに濃厚。ピンク映画的な是非を問ふならば断ッ然アリな中、プックリ煽情的に膨らんだ主演女優と三番手の乳輪以外に目を引いたのは、一皮剝けた勢ひで色気を迸らせる、細川佳央の目力。次も維持してゐるやうだと、この人完全に化けたかも。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )