真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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さまよふアゲハ 蜜壺トロトロ
さ行
/
2016年10月16日
「
さまよふアゲハ 蜜壺トロトロ
」(2016/制作:ファミリーツリー/提供:オーピー映画/監督:榊英雄/脚本・助監督:三輪江一/撮影:早坂伸/照明:藤田貴路・田島慎/録音・効果・仕上げ:丹雄二/編集:清野英樹/音楽:雷鳥/ヘアメイク:木戸出香/スチール:富山龍太郎・You Ishii/撮影助手:小島悠介・日下部一也/特別協力:小沼秀剛・氏家英樹/企画協力:木原祐輔・楠智晴/仕上げ:東映ラボ・テック/美術協力:ナジャペレーネ株式会社/出演:水城りの・REN・蓮実クレア・加藤絵莉・山本宗介・阿部恍沙穂・齋賀正和・三輪江一・松浦笑美・羽柴裕吾・檜尾健太・榊英雄、他結構多数)。出演者中、榊英雄以降は本篇クレジットのみ。ロケーション協力を主に、一般映画並の情報量に惨敗する。
全裸での古典演劇が好事家か単なる助平客の評判を呼ぶ、劇団「ネイキッドデザイア」第九回公演「ドン・キホーテ」の舞台袖。制作部の上杉京子(松浦)がやきもきするのも余所に、看板女優の虹川希来莉(加藤)と高村康太(山本)は慌しく一発キメると、前貼り担当の張本健作(三輪)にモーターレースのピット感覚で前貼りを施され、高村がドン・キホーテ、希来莉はロシナンテ役で舞台に雪崩れ込む。え、看板女優なのに駄馬?サンチョ役の根岸昭一(齋賀)とロバの西脇里美(阿部)も舞台に現れ、中出しされた精液で糊が溶けたとでもいふロジックなのか、希来莉の前貼りが危ふく剥がれさうになりながらも、公演は賑々しく大団円を迎へる。さういふものといつてしまへばそれまでなのだが、こんなら何かつていふと飲んでばかりの打ち上げの席。高村の友人・加地恭平(羽柴)に連れられ観に来てゐた、花森揚羽(水城)にネイキッドデザイアのイケメン主宰・瀬田翼(REN)は目をつける。こちらも何かと多用される、昨年末終に取り壊された上野オークラ旧館屋上で翼に口説かれた、揚羽はネイキッドデザイアに参加。主宰肝煎の新顔の登場が脊髄反射で面白くない希来莉、そんな希来莉に百合の花香らせる里美。素人の大根に手を焼く高村、俳優部に苛められ気味の鬱屈を募らせる京子、実は自身の劇団の旗揚げを画策する根岸らの思惑がドロドロと交錯し、ネイキッドデザイアはサークルクラッシュしないのが不思議な程度に不穏な空気に包まれる。
配役残り御大将出陣の榊英雄は、揚羽を主役に据ゑた着衣の第十回公演「蝶々夫人」を前に、翼が張本を伴ひ挨拶に訪れる小屋の支配人。そこに闖入する檜尾健太は、張本が潰した劇団「ぽんぽこ商事」との因縁も滲ませる、「水玉スパンコール」主宰・濱口テツ。ネイキッドデザイアは兎も角、小劇団の劇団名がぽんぽこ商事だ水玉スパンコールだと、妙な枝葉で精度の高いセンスを発揮する。そして、「蝶々夫人」が初日の爆死後V字回復を遂げた終盤。フライヤーを手に取る形でスムーズに飛び込んで来る、荒木太郎2011年第三作「
人妻OL セクハラ裏現場
」から五年ぶりピンク電撃復帰のex.安達亜美こと蓮実クレアは、ネイキッドデザイアに興味を持つ遠野青空。狭い世間で濱口とは男女の仲にある形で、濡れ場も一応キチンと披露する。その他大勢はフィルムの中に刻まれた翼元カノや、濱口のファースト・カットで隣にゐる人、頭数のメインは男女潤沢な客席要員。
一般映画やテレビドラマで普通に活躍する、榊英雄の「
オナニーシスター たぎる肉壺
」(主演:三田羽衣・西野翔・柴やすよ)に続くピンク映画第二戦。後篇で大化けする竹洞哲也の「
恋愛図鑑 フつてフラれて、でも濡れて
」と「
恋人百景 フラれてフつて、また濡れて
」(共に2015/四本柱:友田彩也香・樹花凜・加藤ツバキ・横山みれい)同様、昨今オーピーが好んで採用する戦略であるところの、二ヶ月弱後に「裸の劇団 いきり立つ欲望」が控へた前後篇二部作。能動的なサークルクラッシャーといふよりは、揚羽がジュスティーヌ感覚で一人センシティブを気取る翼以外のネイキッドデザイアの面々にヤラれ倒す展開は、そこだけ聞くと如何にも裸映画的とも思へ、相ッ変らず榊英雄の撮り方はお上品かつ不用意に暗い場面も多く、腰から下への訴求力は極めて低い。お前らのキンタマを空つぽにしてやるぜとでもいはんばかりの勢ひで、もう少し客を勃らせることに意欲を燃やすか、少しは試行錯誤の欠片でも見せて欲しい。張本が前貼りのデータを取るとかいふ方便で揚羽を手篭めにしかける、まるで今上御大・小川欽也ばりに底の抜けたシークエンスは、ルーチンの向かう側でコッテコテに撮るくらゐでないと、寧ろ形を成し得ないのではなからうか。甚だ中途半端な今作の有様では、一般とピンクの間でフラフラする、蝙蝠のやうな映画だなあといふ印象が強い。濡れ場はしつかりこなした上で、なほかつ劇映画としても頑丈に仕上げて来る技術は、今でもたとへば城定秀夫の中に生きてゐる。オナシス同様、全員脱ぐ豪気はとりあへず買へる女優部に関しては、後篇でブーストするのか、蓮実クレアは挨拶代りの乳見せに止(とど)まる。水城りのが本職の裸稼業にしては体がシェイプされてをらず、ソリッドな脱ぎつぷりを輝かせる加藤絵莉が、劇中世界とは対照的に主演女優を喰ふ。「いきり立つ欲望」で大逆転する可能性もしくは希望は留保した上で、暫定的に明らかとなるのは、加藤義一の薔薇族「兄貴と俺 ときめきのKiss」(2010/脚本:城定由有子/脚本協力:城定秀夫/主演:津田篤・丸山真幸)は観てゐないが、結局上野オークラ旧館で撮影して白星をあげたのは、ヒロインが軽く立ち寄る程度の「
新人巨乳 はさんで三発!
」(2014/監督:加藤義一/脚本:城定秀夫/主演:めぐり)を除けば、「
囚はれの淫獣
」(2011/主演:柚本紗希・津田篤)に於いて、孤独なキモオタが誰も知らない女優とスクリーンの中で添ひ遂げる壮絶なロマンティックを撃ち抜いた、友松直之ただ一人といふ割と死屍累々な事実。
あ、大事でないことを忘れてた。蝶々夫人が間男を連れ込んでる最中に旦那に帰つて来られた人みたいになつてる、グダグダの極みの着付けはあれはツッコんだら負けの世界なのか?
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