真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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痴漢透明人間 PART3 わいせつ?/DMM戦
さ行
/
2016年06月15日
「
痴漢透明人間 PART3 わいせつ?
」(昭和54/製作・配給:新東宝映画/監督:関孝二/撮影:西川卓磨・塩田敦也/照明:佐々木哲男・宮川照彦/編集:酒井正次/記録:浜茂子/助監督:石山徹・伊藤裕介/録音:東音スタジオ/効果:東芸音響/現像:東映化工/出演:三條まゆみ・浜けい子・長谷圭子・しば早苗・杉佳代子・与那城ライラ・岡崎由美・青野梨麻・吉岡一郎・吉田純・久須美護)。出演者中、三條まゆみ・浜けい子・岡崎由美・青野梨麻が、ポスターには三条まゆみ・浜恵子・岡崎ユミ・青野リマ。何故かクレジットはオミットする脚本も、ポスターによれば関孝二。撮影の西川卓磨は、恐らく
西川卓
の変名か。
後々判明する、ダイナミックな構図で吉田純に手マンされる浜けい子―このカットでは二人とも特定不能―の裸を一拍見せた上で、ビリング順に長谷圭子・しば早苗・杉佳代子・岡崎由美・青野梨麻が浸かる銭湯の女湯に、透明になつた久須美護(弦・猛同様久須美欽一の旧名義)が闖入する画に秒殺のタイトル・イン。クレジット中はそれぞれ二人づつの看護婦(三條まゆみと与那城ライラ)と尼僧(しば早苗と杉佳代子)が咲かせる百合に、矢張り透明の久須りんが狂喜する。監督クレジット時の、久須りんが勝手に悶絶する小ネタの意味が判らない。
クレジット明けは、御馴染東映化工(現:東映ラボ・テック)社屋を病院に見立てた三共病院。退院の決まつた吉岡一郎(a.k.a.吉岡市郎)が、世話になつた整形外科看護婦・アヤコ(与那城)を第一応接室に強引に連れ込み、手篭めスレスレの勢ひで言ひ寄る。応接室前の廊下に現れたこちらは外科から退院する久須りんは、すは色事と色めきたつや、持参する錠剤を飲むと素頓狂なSEと痙攣とともに
透明人間に
。久須りんが吉岡一郎を押し退けアヤコを軽く攻略する一方、自分は何もしてゐないのに喜悦するアヤコの姿に幽霊が出たのかと錯乱した吉岡一郎は、神経科に再入院する羽目になるといふのがここでのオチ。
配役残り三條まゆみは、パンティの中に何かを忍ばせて、土手に手を伸ばす久須りんを撃退する外科看護婦・ハルコ。だから、その“何か”が何なのか明示せずに通り過ぎる一種のストイシズムですらあるのかも知れない頓着のなさは、逆に凄いとでもしか最早いひやうがない。一体仕事は何をしてゐるのかゐないのか、お寺の周りをブラブラしてゐた久須りんは、尼僧・春妙(しば)が熊みたいな労務者(不明)に犯される現場に遭遇。自覚もなくはないのか「野郎俺よか酷え奴」とかいひながら、結局最後まで助けようとはピクリともしない久須りんの方が、劣るとも勝らないやうな気がする。杉佳代子は、嫌よ嫌よも好きの内と、浜野佐知激怒必至の展開で最終的にはヘバッた労務者に無理矢理跨り腰を使ふ春妙を、叱責する高僧・親蓮、春妙共々漢字は推定。とはいへ前述した通りハルコ・アヤコに続き百合を咲かせた親蓮と春妙は、二人して肉欲の誘惑に負け還俗を決意。親蓮と春妙が美容院に入つてゐる間、久須りんはパチンコ屋に。吉田純と長谷圭子は、負けた久須りんの隣で勝つ銭湯「喜久の湯温泉」の宿六亭主・助三と、助三が軽く口説くパチンコ屋の看板娘・ミヨちやん。浜けい子が助三の女房にして喜久の湯女将のお万で、岡崎由美と青野梨麻は女の湯要員。労務者に加へ不明分は全員男衆、整形外科医と外科医に、喜久の湯で番台を通過するだけの客二名。当時67の関孝二が自ら出撃してゐるとしたら、白髪で貫禄のある外科医なのかなあ。それと、喜久の湯は山梨県甲府市に現存。番台を代り買物に出るお万に、助三が甲南劇場で三本立てでも観て来いよと軽口を叩く一幕は、さりげない共闘が微笑ましい。
ザックリした物言ひで大変申し訳ないが、死去の報が聞こえて来ぬゆゑ、御存命だとすると何と御年104歳!となる関孝二と初対戦。この人の撮影現場の取材を通して“ピンク映画”なる言葉が生まれたといふだけで、抜き差しならないレジェンド感。明確にナンバリングされた“PART3”といふ次第で、痴漢透明人間の沿革を簡略に掻い摘むと、市村譲が俳優部として出演する無印第一作「痴漢透明人間」が昭和52年、同年四作後に「痴漢透明人間 女・女・女 PART2」。二年空けた今作挿んで、北村淳名義で今度は新田栄が俳優部として出演する最終作「痴漢透明人間 PARTⅣ 奥の奥まで」(昭和56)。残念ながらDMMでは後ろ二作しか見られないが、勿論「奥の奥まで」も次に見る。何はともあれ驚かされたのは、半透明の久須りん―と、久須りんが脱衣所に落として行つたマル秘透明薬(人畜無害)を
勝手に飲んでみた助三
―が裸の女の周りをウロウロする様子の、姿が見えなくなるのと再び見えるやうになる過程まで含め、思ひのほか完璧な光学合成には目を見張つた。折角デジタル時代に突入した訳だし、ここいらで誰か透明人間ピンクを久し振りに撮ればいいのに、出来れば依然昔ながらのローテクでやりかねない
関根和美
以外で。なほ一層度肝を抜かれたのが、アヤコと吉岡一郎が事に及んでゐさうな気配に、その場に通りがかつた―本篇初登場の―久須りんが、やをら錠剤を取り出し透明になる清々しいほどのレス・ザン・イントロダクションぶり。重ねて問題なのが、前述した通り無印第一作には市村譲、PARTⅣには北村淳イコール新田栄、そしてPARTⅡには野上正義が出演してゐるのは―jmdbなりビデオ安売王のVHSジャケを参照して―辿り着けたものの、どうやら久須りんは出てゐさうにない点。一体人間を―着た服ごと―不可視化する何気にでもなく超新薬を開発したのは何者で、久須りんらがそれを自由に使用出来る形で所持するに至つた経緯や如何に。無印「痴漢透明人間」を見るなり観られればその疑問は解消されるのか、それともやゝもすると、最初からスッ飛ばしてのけさうな予感もしないでもない。
ところで物語はといふと、女の裸のあるところに超絶の嗅覚を発揮して出没する久須りんが、その都度マル秘透明薬を服用し鼻の下を伸ばすばかり、要は物語らしい物語は別に存在しない。面白楽しく女の裸を見せた上で、喜久の湯女湯で助三と久須りんの透明効果が時間差で切れそこにお万も帰還、一同上へ下への大騒ぎに。演者がてんやわんや動くのをカメラが全然捉へきれてゐないのは御愛嬌として、追ひ駆けて来るお万から久須りんが逃げる結構遠いロングで、そこそこ上手いこと一篇を締め括る。本格的に手の込んだ特撮に、豪華八人体制の、しかも面子的にも質より量とは決していはせない女優部。明らかに通常よりも潤沢である節が窺へる普請は人気シリーズの所以か、実際そのことも肯けよう賑々しく量産型娯楽映画らしい一作である。
付記< CINEPO.comのサイトでPART2・3・Ⅳの画像―無印は見当たらなんだ―に触れてみたところ、どれにも久須りんの名前がある。ここから先は、とりあへず現物と相対するしかない
再付記< 改めて目を通してみると今作のビデオ安売王VHSジャケがへべれけ、表面では監督が鈴木ハル(a.k.a.鈴木敬晴)になつてゐるし、裏面でも岡孝二に。大体、表と裏とで監督名が違つてゐるのがアメイジング、何処まで間違へれば気が済むのか
付記< 不明分の配役、白髪で貫禄のある外科医が矢張り関孝二
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